見っけ
※イエスノー重版御礼こばなし。潮と計
休みの日は会社で新聞が読めないので、土日の朝は一般紙及びスポーツ紙をごそっと買い求めてくるのが、潮のルーティンになっている。
だから、土曜の朝八時ごろにいつものコンビニに行くと朝刊の一紙だけが売り切れで、新聞を差すラックがそこだけぽこっと空いていた。よその店をいくつか回っても同様で、何でだろ、と訝しみつつ、ここなら確実だろと販売店を訪ねてみた。ひと仕事終えた風情のおっちゃんから無事に朝刊一部をお買い上げし、出て行こうとすると小学校低学年と思しき女の子が駆け込んでくる。
「あの、きょうの新聞をひとつください」
「ごめんね、ちょうど今なくなっちゃったんだよ」
え、そんなことある? 潮は自分の手の中にある朝刊を見つめた。五や十じゃきかない数で予備があるはずだろう。ちいさな肩を落とす女の子のようすを見るに、お使いじゃなく自分が欲しくて買いにきたようだ。なあ、と潮はかがみ込んで尋ねた。
「何でこれが欲しいんだ?」
すると彼女ははにかみながら「漫画の絵が載ってるから」と答えた。
「全面広告が出てるんだよ。それで朝から若い子がひっきりなしに買いにきて」
販売店のおっちゃんが補足してくれる。なるほど、そういうわけか。納得がいったので、朝刊を女の子に差し出す。
「あげるよ」
「えっ」
「いいから、持って帰りな」
「お金……」
「いいよ」
携帯にLINEの着信があり、計が「腹減ったんだけど」と送ってきていた。いつもより遅いから、ご機嫌斜めらしい。まだ戸惑っている女の子に「ほら」と朝刊を受け取らせて急いで家に帰った。
※この続きは「OFF AIR3」に収録されております。
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