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くるとしゆくとし

※年越しこばなし、旭テレビメン

(おうち忘年会)
「こないだ写真フォルダ整理してて、懐かしいの出てきたんすよ~ほら、去年のイブイブのなっちゃんのうさ耳!」
「何撮っとんねんもおお~!!」
「え、そんな催しやってたんだ?仮装パーティ?」
「いえ、その……いろいろありまして……要は設楽さんの悪ふざけなんですけど」
「あー、なるほどー」
「いやー、こん時はなっちゃん、国江田さんの正体知らなかったんだよな~と思うと感慨深いっすね」
「そっか、三週間ぐらい前だな。国江田さんも感慨深いだろ?」
「深いじゃなくて不快だわ、今年イチのやなこと思い出させんじゃねーよ!」
「あ、す、すいません」
「何でかなっちゃんが謝るよね~」
「つーか何だあのうさぎ、ふざけたもん飛び出させやがって。思い出してムカついてきたわ、きのうのことのように」
「うっ……」
「蒸し返してやるなよ、設楽さんに言われたんじゃ逆らえねーだろ」
「いーや、ノリノリだった」
「誤解ですよ!」
「ほらこうやってキョドるだろ、小動物に寄せてくるだろ、恥ずかしいけどしょうがないんですうーみたいな小芝居であざとくアピールしてくるんだよ、ほらほらうさ耳ですよ似合ってるでしょ?かわいいでしょ?みたいな」
「ご、誤解ですって!」
「そも、何だよ設楽さんのせいで~って。あれか?姉が勝手に履歴書出してましたパターンか?JUNONスーパーボーイコンテストか?百歩譲ってマジ話だとしてもオーディションに出向かなきゃいいだけなのに想定外の需要を演出する茶番エピソードか?むしろ何なら応募してたんだろ?スーパーボーイコンテストもしくは平成ライダー」
「ええ……うちねーちゃんいてませんし……」
「妄想悪口がすげーな」
「でもそーゆーこと熱弁するからには、国江田さんもなっちゃんのことかわいいって思ってんですよね?」
「は?」
「いや分かりますよ、かわいいし」
「頭沸きまくってんな今年中に脳細胞死滅しそうだな」
「頼むしもう何も言わんといて」
「都築さんも思いますよね?」
「ん?んー、別に」
「またまた~まあ国江田さんの手前そう答えざるを得ないですよね、便宜上ね」
「やっぱ今年のうちに殺しとくか、鬼太郎下駄出せ、撲殺する」
「は、履いてないです」
「いや手前とかじゃなくてさ、俺はなっちゃんのことかっこいいと思ってるから」
「えっ……いやそんないやそんなそんないや……」
「だから何で頬染めてんだよ!!」
「うわー!妖怪だー!妖怪ヒトタラシが出たぞー!みんな逃げろー!」
「お前が言うなよ」

「あーびっくりした……あの人危険やな、皆川とはまた別の意味で」
「幻の巨大魚をしれっと『獲ったど~!』してるぐらいだからね。まーそれにしても頬染めすぎだけどね!!」
「え、だって……」
「言っとくけど俺だって都築さんに『かっけーな』って言われたことあるからね?」
「何の対抗意識?」
「とにかく詳しい話はドンキで聞こうか」
「何を買うつもりやねん。……かっこいいとか生まれて初めて言われた気ぃすんもん。自分なんかしょっちゅうやろけど」
「え、俺言ったことなかった?」
「ん~……あったとしても言葉の重みが全然ちゃう感じ」
「あ、そんなこと言っちゃう?じゃあ俺も重みを醸すべくしゃべらないから!」
「えっ」
「…………………むり!しゃべってないと息ができない!!」
「みじか!」

「拗ねんなよ、計」
「別に」
「お前がいちばんかっこいいに決まってるだろ?」
「うっさい」
「かっこE~」
「……何か今の違うだろ」
「国江田さんはEじゃとても足りないな、かっこXぐらい?」
「超絶かっこ悪いじゃねーか!!」

(大晦日)
「お疲れ、まだ仕事してるの?」
「『まだ』の意味が分かんねえよ」
「年の瀬」
「カレンダーの赤い日に逐一休みたいやつはそもそもテレビ局に入らねえだろ」
「まあお前は年中無休すぎるけどね。編集なら家でもできるだろ」
「新しい編集機、空いてる時にひととおり触って把握しときたかったんだよ。さすがにこれ買って家に置くとなるとかさばるしな。で、あんたは何しに来てんだ」
「ひょっとして来たら会えるかな~と思って」
「気持ち悪い以外の感想はねえぞ」
「……ていうのは半分冗談で、泊まり勤務の人手が足りないらしいから、ヘルプに」
「報道で?」
「そう。シフト組んでるデスクが同期で泣きつかれちゃって」
「同期のくせして、あんたに軽々しく借り作ったらどんだけ高くつくか知らねえのか」
「背に腹は代えられなかったみたい。まあどうせ元日なんか暇だし、電話番ぐらいのもんで。というわけであしたの昼過ぎには身体空くから、一緒に出よう」
「何で」
「送ってくよ」
「いやすぐそこだし」
「じゃあドライブでもしようか」
「帰って寝る」
「いいね、つき合うよ」
「俺は帰ったらすぐ寝たいんだよ」
「そりゃあもちろん。ふたとおりぐらい触って把握したらね」
「長いわ」
「そんなことないよ。この一年もあっという間だった。もったいないほどすぐ過ぎていった。栄、来年はもっといい年にしよう」
「いろいろ、飽き足らねえ男だなほんと」
「そう、俺たちふたりとも『足るを知る』を知らないね」
「書き初めのお題にしとけ」
「どんどん寝るの遅くなるけどいい?」
「何でうちでやる前提なんだよ」

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