健康習慣の改善が資産の形成に。100年時代を生き抜く術とは【ICHIKAWA COMPANY 社会実証実験レポート】
こんにちは、ICHIKAWA COMPANYです。
今回のレポートは、「ヘルスケアファイナンシャルアプリ活用による健康習慣変容の実証実験」についてです。本実験は、アプリを通じて、毎日の健康状態の確認や医療費・セルフメディケーション費の記録、ヘルスケアファイナンシャルプランニングを提供することで、健康習慣改善の必要性について、健康面だけではなく資産面からもアプローチし、市民の意識向上と行動変容を促すことを目的としています。
今回は、株式会社ヘルスケア・ウェルスの代表取締役、赤木禎文さんに、健康寿命と資産寿命を延ばすことの重要性、現在の日本における健康習慣の課題などについて、お話をお伺いしてきたのでお届けします。
「健康×資産」の現在と未来を見える化
――本実証実験は「アプリを活用した健康習慣変容の効果測定」とのことですが、具体的な実験内容を教えてください。
赤木 禎文さん(以下、赤木):弊社は、「健康寿命と資産寿命の延伸が幸せにつながる」「健康習慣の改善こそが資産形成の第一歩」というヘルスケアファイナンシャルプランニングの理念・行動様式を、社会に浸透させることを目標に掲げています。
本実証実験に使用しているアプリは、去年の秋頃から弊社の事業として行なっている施策の一つです。フェーズとしてはフェーズ1からフェーズ3まであり、現在はフェーズ1の段階になります。
弊社の理念にも掲げている「ヘルスケアファイナンシャルプランニング」ですが、これは弊社で作った言葉で、商標登録もしています。
例えば医療費を抑えることで、資産が貯まるため、健康を意識することは、将来の金融資産にもつながります。そういった「健康」と「資産」の密接な関係を伝えるべく、アプリだけではなく、セミナーとセットで広めています。
セミナーに関しては、市川市に協力をしていただき、既に12月と2月の2回、実施させていただいたところです。
この実証実験を通じて、少しでも多くの方に健康や資産に関して関心を持っていただき、意識を高めるきっかけとなればと思います。
――アプリの特徴や、従来の健康系アプリと異なる点を教えてください。
赤木:本アプリは「健康」と「資産」の現在と未来を見える化するためのアプリです。
従来の健康系アプリとは、まずコンセプトが異なります。従来の健康系アプリは、データを収集し、グラフを表示するだけのものが多いです。また、アドバイスなども表示されません。
しかし、弊社のアプリは、医療やヘルスケアに対し、金融面でもアプローチをしていることが特徴です。
アプリには、身体データ・生活習慣チェックで、リアルエイジや医療費トレンドを算出してくれる機能や、検診結果をスマホで管理し、次回の検診に向けて、生活習慣を改善できるよう、アドバイスしてくれる機能などが搭載されています。
また、アプリ上でレシートを撮影して送信することで、エクセルやCSVなどのデータに落とし込むことができる機能も搭載されているため、医療控除制度での申請補助資料としても活用することが可能です。
さらに、普段持ち歩かないような、人間ドッグの検診データなどもアプリに取り込めるため、いつでもどこでも気軽に見ることができます。こうして生活習慣の可視化を行い、アプリ内で気軽にデータを持ち運ぶことができることから、健康意識の向上にも期待できます。
「健康寿命」「資産寿命」延伸の重要性
――「健康」や「資産」に着目されたきっかけを教えてください。
赤木:私自身、以前は国内総合証券や、米系外資系証券において、法人・個人サービスに携わっていました。その後、イオングループのドラッグストアで、専務として従事し、ヘルスケアの領域に参入することになりました。
その後、インターネット系の会社で新規事業を行うことになったのですが、当時東日本大震災が起きたばかりだったこともあり、「人の命への価値観を変えたい」と考え、たどり着いたのが健康系のプラットフォームだったんです。
そして、その後もいくつかの会社でICT事業に携わったのですが、いつしか「自分でやりたい」という思いが芽生え、独立を考えるようになり、起業しました。
これまで自分が携わってきたインターネットという領域で、健康系のサービスを展開しようと思ったのですが、高齢者に比べ、若い方には「健康」という言葉がなかなか刺さりません。
そこで「若い方にもリーチできる領域」で考えた時に思いついたのが、自身も長年携わっていた領域でもある「健康×資産」というアプローチでした。
また、近年では人生100年時代や年金2,000万円問題といった課題が注目を浴びているため、「健康寿命」「資産寿命」の延伸の重要性を、社会に浸透させる必要があると考えています。
――セミナーではどのような反応がありましたか?
赤木:第1回目のセミナーでは、「年金を除いた老後資金は2,000万円必要」という話が去年話題に上がっていたこともあり、「健康寿命だけではなく資産寿命を伸ばそう」という話、また、ヘルスケア・ファイナンシャルプランニングについての話や、生涯医療費についての話などをしました。
例えば、「糖尿病になるとこれだけお金がかかりますが、病気をしないとこれだけお金が貯まるんです」といった話など、法律を交えながら分かりやすく説明し、興味を持っていただけるように努めています。
第2回目のセミナーでは、主に資産形成の話をしたのですが、年齢層は40台の方が多く、若い方だと20代後半の方まで来てくださいました。
これからは、政府の力に頼るのではなく、自分自身で見極め、動き方を決めることが大切な時代になっていきます。
貯蓄をする、積立金を増やす、支出を減らすなど、様々な選択肢がある中で、資産形成を行うには、自分の将来に関心を持ち、目標を持つ必要があります。
また、お金を積み立てるには、とにかく長く働くこと、そして「健康寿命の延伸」の意識を高める必要があります。
そんな話をしていく中で、皆さん大変興味を持ってくださり、非常に多くの質問をいただくことができました。
日本の健康習慣においての課題
――現在の日本の健康習慣について、どのような課題があると思いますか?
赤木:今は情報社会で便利な反面、様々な情報に振り回されてしまい、動き方が分からなくなっている方もいます。
また、そういった情報が伝わりにくいお年寄りの方にとっては、まだ薬が家に余っていることに気づかずに、言われるがままに薬を処方されて、結果お金を多く払いすぎてしまっているケースも多いです。
そういった背景もあり、こうしたアプリを活用し、いかに気軽にデータ管理することかが非常に重要になってきます。
しかし、健康系アプリ全般に言えるのですが、「データ入力が面倒臭くなった」などの理由から、途中で挫折してしまう方が多いです。
そこで、フェーズ2では、自動で計測できるウェアラブルなどの機器と連携し、AIによるアドバイス機能、ファイナンシャル機能などを充実させ、金融サービス、商品連携、データ入力の負担軽減などに取り組もうと考えています。
例えば、歩数と心拍、脈拍、睡眠などのデータを元に、ウェアラブルでストレス状態を測定し、それを可視化するサービスなどを考えています。
それらをデータ化し、検証することによって、職場でのストレスや様々な人間関係のストレスなどのソリューションにもつながるかもしれません。
また、ストレスチェックやマインドフルネスなどの機能も考えています。アプリのリリースに向け、開発を進めているところです。
――本実証実験を進めるにあたって、力を入れている点は何ですか?
赤木:これまでも様々な会社で健康系アプリをリリースしてきたのですが、その中で一番大変なのは、ユーザーに継続的に利用してもらうことです。
健康系アプリは、真面目で意識の高い人たちだけが突き詰めて使用する傾向があって、日が経つにつれて、継続的なユーザーは減少していきます。
ゲームと同じで、イベントやキャンペーンなどを行って、サービスに引きつける努力をしない限り、ユーザーはすぐに飽きて離脱してしまうんです。
そのため、アプリでは、人間ドックの結果を入力した方には、翌年の人間ドックの前に、「あなたは◯◯の検査結果が良くなかったので、こういう運動や生活習慣をしましょう」というメッセージや、体重が気になる方には、定期的に「食生活に気をつけましょう」といったお知らせを送るようにしています。
離脱を止めることは至難の技ではありますが、一般の方でも使用してもらえるようなアプリ、途中で離脱したとしても、また戻って来てもらえるようなアプリにしたいです。
――このアプリの普及によって、家庭や地域社会にどのような効果をもたらすと思いますか?
赤木:まず、健康意識を高めることによって、医療機関を受診する率が低くなり、医療費が減ります。すると、当然ながら、その分貯蓄をすることが可能です。
また、アプリには人間ドックのデータを管理できるようになっているため、ユーザーが人間ドックを受診し、一度そのデータをアプリに入れることによって、受診率アップにも貢献することができます。
さらに、市町村側が皆さんの受診率を調べるにあたって、従来のリサーチよりも容易になるでしょう。
こういった利点や可能性を踏まえ、ヘルスファイナンシャルプランニングという考え方を皆さんの生活の中に落とし込めるよう、引き続き努めていきたいと思います。
また、将来的にはヘルスケアファイナンシャルプランナーを配置して、アプリの会員に対してセミナーを行うなど、全国的に広めていきたいです。
――ありがとうございました。
――
人生100年時代という言葉が浸透している昨今、60歳の定年時に退職をするよりも、継続雇用を希望する方たちが増えています。また、年金を除外した老後の必要資金は、2,000万円にものぼると言われています。
いつか必ず来るであろう老後を暮らしやすく生きるためにも、「資産」だけではなく「健康」に対しても、今からきちんと取り組んでおく必要があるでしょう。
市川市としても、皆さんが安心して暮らせる社会を作り、皆さんが健やかで豊かな老後を過ごしていただくためにも、今後ともこのような取組を通して、引き続き発信していきたいと思います。