今こそデジタルトランスフォーメーションを。産業用小型ドローンの未知なる可能性【ICHIKAWA COMPANY 社会実証実験レポート】
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今こそデジタルトランスフォーメーションを。産業用小型ドローンの未知なる可能性【ICHIKAWA COMPANY 社会実証実験レポート】

こんにちは、ICHIKAWA COMPANYです。
今回のレポートは、「産業用小型ドローンを活用したエレベーター点検の実証実験」についてです。

2月12日から14日までの3日間、東京ビックサイトで行われた「スマート工場EXPO」に出展していた、株式会社Liberawareの代表取締役、閔 弘圭(ミン ホンキュ)さんに、この実証実験が生まれたきっかけ、従来の点検方法との違いなどについて、お話をお伺いしてきたのでお届けします。

産業用小型ドローンの開発に成功

――御社が開発した、産業用小型ドローンについて教えてください。

閔 弘圭さん(以下、閔):従来の産業用ドローンは、約40cmから60cmサイズの機体が多いのですが、弊社のドローン「IBIS(アイビス)」は、大きさが20cm、バッテリーを含めても重さ200g以下の小型ドローンです。これは、産業用では世界最小小型サイズであると自負しています。

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実は、ドローンは、プロペラのサイズで飛行時間が変化するのですが、小さければ小さいほど、飛行時間が短くなってしまいます。しかし我々は、3インチのプロペラを持った小型ドローンを、産業用として改良することに成功しました。

小型サイズのドローンは、近年続々と発売されているものの、そういったドローンの飛行時間は3分程度であるため、業務用としては使うことができません。業務で使用するには、最低でも10分以上の飛行をする必要があります。

しかし、弊社のドローンIBISは、独自設計の3インチのプロペラを使用しているにも関わらず、最長飛行時間が12分間という長時間飛行を実現させました。

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また、配管などに人が入って作業するには、60cm程度の空間が限界ですが、IBISであれば、条件にもよりますが管径サイズ30cmの配管を往復することができます。つまり、人が入れない領域もカバーできてしまうのです。この他、これまで足場やゴンドラ等を設置して点検を行っていた設備についても、そうしたものが不要になり時間や費用の削減につながることから、多くの引き合いをいただいております。

さらに、現場からのフィードバックを、製品に素早く反映させることや、企業のニーズに合わせてカスタマイズすることもできます。

――どのようにして、産業用の小型ドローンを実現可能にしたのでしょうか?

閔:バッテリーを含め、全て自社で部品を作っているということが大きいと思います。

以前は、海外製の市販のモータを使用していたのですが、プラント設備などは粉塵が多いため、それに対処しきれずに落下し、壊れてしまうということがありました。そのため、それから1年かけて、日本電産さんと共同で、防塵に特化したモータを開発したんです。

また、2016年の創業前から、屋内環境における安定飛行について、大学などで幾度となく研究を重ねてきました。そのため、小型ドローンで、こうした屋内作業に特化し、かつ防塵機能の付いている製品は、弊社のドローンのみになります。

また、一般的なドローンは、たとえ小型のものであっても、狭小空間を安定して飛行させることはできません。狭小空間というドローンにとっては特殊な空間に対応するために、ドローンの形状設計技術や制御技術が必要です。「狭い空間だから、小さいドローンであれば飛行できるだろう」と、非業務用の小型ドローンを試用し、失敗してしまった事例を多く耳にしています。

さらに、非業務用のドローンは、バッテリーも違えば、安全性も保証されていません。弊社のIBISは全ての部品を自社で開発しているため、品質を保証できますし、必要であれば成分情報も提供することができます。そこが一番の大きな違いではないかと思います。

人口減少社会における、デジタルトランスフォーメーションの重要性

――ドローンを活用した点検方法と、従来の点検方法との違いを教えてください。

閔:弊社では、ドローンを使用したいと思っている企業に対し、点検用のドローン機材を貸し出しているのですが、事業のメインは、ドローンを貸し出すことではありません。

IBISで撮影したデータは、我々のクラウドスペースにアップロードされるようになっており、我々は、その撮影データを皆さんに提供しています。

これによって、映像の管理が容易になるだけではなく、編集によって、動画から静止画への切り出し、または動画からパノラマ化・3D化させることなども可能です。

従来の人力での点検方法ですと、その作業員の経験に頼ってしまうことになります。すると、点検の方法は、人や企業によって違うため、担当者によっては、確認すべきものを見逃してしまうこともあるわけです。

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ドローンで全てを撮影し、見返しやすいように映像編集しておくことで、いつでも過去の詳しい情報にアクセスすることができるようになります。これにより、経年変化をしっかり辿ることできるようになり、人工知能の技術により未来の予測を正確に行うことができるようになります。このことがアナログからデジタル化することの最大の違いです。

また、特に下水の点検は、臭いの強さは勿論、空気が薄かったり、毒性を持つ物質がある可能性もあったりと、危険が伴う大変過酷な環境です。

現在は過酷な現場に赴くような業務の人材が減ってきています。さらに、近年では少子高齢化が進んでいるため、今後はさらに人手不足になることが考えられます

そういった背景もあり、現在では、効率化を図るためにも、「デジタル化を行い、きちんとデータにして管理しましょう」という流れになってきています。

これまでの設備管理業務では、例えば5年に1回のペースという予め決められた期間毎に設備改修を行い、改修前に老朽化してしまうというケースも見られましたし、またその逆で、高い品質を保っていたのに改修を行うといったケースもあります。しかし、ドローン等の技術を活用しこまめにデジタル化をすれば、ジャストのタイミングで補修することができるため、安全面と効率面の両面を大きく向上させることができます。

――人力ではなく、ドローンで点検を行うメリットを教えてください。

閔:先日、実際にあった事例をご紹介します。現場は道路下にある配管で、大きさが40cm程あるため、それまでは何年かおきに、作業員が前屈して中に入り、撮影をしながら点検をしていました。

ところが先日、劣化していた配管が壊れ、地面が陥没してしまったんです。そこは車が通っている道ということもあり、どうやら重さに耐えきれなかったようです。

当然、至急修理をしたのですが、全部を取り替えたわけではないため、人が入った時にまたいつ道路が陥没し、落ちてくるか分かりません。結局、人力での点検では、恐ろしい事故にもなりかねないということで、ドローンで見ることになりました。

実際にドローンで点検をしたところ、やはり相当損傷しており、つなぎ目がズレたりヒビが入っていました。これではいつまた重さに耐えきれなくなり、壊れてしまうか分かりません。

そして私たちは、あとどのくらい劣化したら、どのくらい危ないのかを把握するために、ドローンで撮影し、データを取りました。撮影した管内映像を3D化することで、複数のご担当者の方が自身のご都合が良いときに細部までチェックすることができるようになりました。今後、定期的にこの管内の撮影を行うことで、どこがどの程度変化したがを確認することができるようになりますので、管内のコンディションの推測がより正確にできるようになると考えています。

こういったデータがあれば、色々なデータと比較もしやすくなります。また、人間が中に入って目視で点検するのに比べ、チェック漏れを防ぐことができますし、後からでも気になった部分を細部まで見ることができます。

長期的なビジネス戦略が今後の企業の価値へとつながる

――ドローンを活用した点検を導入するにあたって、企業の課題は何だと思いますか?

閔:デジタル化を推進しようと動きが見える一方で、実際には、管理も点検もほとんどの企業が未だにアナログです。その理由の一つに、コスト面の負担が大きいことがあると思います。

なぜなら、デジタル化するための工事をするとなると、今のシステムを一旦中断し、システムを入れ替えないといけないため、出費がすごくかかるんです。

固定カメラを置くだけでも効果はあるのですが、そのための工事ですらお金がかかります。そのため、やはり低コストである人件費と比べてしまい、デジタル化を避ける企業も多いわけです。

しかし、私たちは、短期的な視野で見るのではなく長期的な視野で見ることが大切だと考えています。

ドローンであれば、長期的にデータを撮り続けることができますが、人力での点検の場合、同じ人が100年200年と生き続けるわけではありません。となると、人が入れ替わる度に、過去のデータと照合することが難しくなってしまうわけです。

企業戦略を長期ビジョンで考えた場合、目の前のコストを重んじるよりも、今後の価値につながるであろう施策を取り入れることが、より重要ではないかと考えています。

――こうしたドローン技術を利用した点検は、今後さらに普及していくと思いますか?

閔:普及はしやすくなると思いますね。現在では、世間も「デジタル化を推進しよう」という流れになっており、ドローンに関心を抱いている企業も少なくありません。

先ほどの通り、企業が簡単に取り入れられない理由は、コスト面が大きいと思うのですが、市場さえもっと活発になれば、コストは下がっていくと思います。なので、そういった点ではあまり課題は感じていません。

ただ、現在では、産業用と個人用のドローンに対し、法律上で区別がされていないため、その辺りが改善されれば、より普及につながるのではないかと考えています。

というのは、産業用と個人用のドローンに対しての認識がない企業が、個人用のドローンを使用したことにより、新しい施策が失敗してしまい、ネガティブなイメージを持ってしまう可能性があるからです。

実際に、個人用のドローンを使用したことで、発火してしまったり、墜落してしまったりと、そういった事例も耳にします。そうすると、産業用のドローンですら、「大丈夫なの?」と疑われてしまいます。

産業用ドローンを活用した点検は、とても安全で効率的な技術であるため、そういったマイナスイメージだけが先行してしまうのは、非常にもったいないことだと思います。産業用ドローンに対しての正しい認識が、一刻でも早く世間に浸透してくれると良いなと思います。

無限に広がるドローン産業の可能性と未来

――今回、市川市と合同でエレベーター点検の実証実験を行うにあたって、心意気を教えてください。

閔: 今回の実証実験は、エレベーター点検ということで、これは普段、配管などの点検をしている私たちにとっても、新しいチャレンジになります。

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元々エレベーター点検に関しても、ドローンが使えるのではないかという話は出ていたため、今回こうして我々のドローンを使用し、実際に実験ができることを、とても嬉しく感じています。

日本は地震が多い国で、いつまた大きな地震が来るかも分かりません。大きな地震が発生した場合、多くの建物のエレベーターが一斉に停止してしまいますので、再稼働させるための安全確認作業は一時的に膨大になり、復旧にかなりの時間を要すことになります。また、余震の心配が残る中、エレベーターの籠の上にのぼりエレベーターの動く空間をチェックすることは危険極まりない業務です。

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市川市やエレベーター管理の専門企業と連携を図り、狭小空間専用ドローンIBISを活用して安全かつ短時間にエレベーターの点検ができるようになるメソッド開発を進めてまいります。

将来的には、こういった緊急事態の時に、備え付けてあるドローンが自動で点検を行ったり、安全な場所から遠隔でドローンを操作して点検を行うといった製品の開発を行っていきます。

産業用ドローンにはまだまだ色々な可能性があります。この実証実験を通し、実際にドローンの技術でどこまでのことができるのかを、実証したいです。

そして、ドローンの未来に向け、我々も引き続きチャレンジし続けていきたいと思います。

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――ありがとうございました。

――

現在様々な分野で注目されつつあるドローンですが、今回の実証実験を通して、ドローンのあらゆる可能性を新たに感じることができました。

超高齢社会で労働人口が減少しつつある日本において、今後はこうして人の手を借りることなく、最新のテクノロジーを駆使して効率化していくことは、一つの重要課題であると言えます。

地域社会の中で誰もが安心して暮らせるためにも、皆さんにとって安全な環境を構築する上でも、引き続き実証実験を重ね、このような技術を上手に活用し、貢献していきたいと思います。

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