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2022/08/03

 ぼくらはここで書くこと書くことを通じて考えること思考すること肉に負荷をかけること脳と呼ばれているものをうまい具合に解きほぐすこと分析的な手癖を切断することを一冊のノートをもとにしている。ノートは提出物ではないからあまりにも自由な運動、長距離走者が走る中でただ一人踊っているいやあれは踊っているのではないゲロを吐いているいやゲロによって呪詛している体がひらがなのやわらかさ硬さ伸び縮みの加減光や暗さを求めていて俺はそれも一つの運動体にとどまらないものとして捉え直そうしている。実は世界とは世界ではない言葉とは言葉ではなく文字も紙の上の傷でしかないからお前が発狂して天井の紋様を読み続けていたことはむしろそれこそが読むことの原点であった。そこに意味が付与されるそこに価値が付与されるその前その手前いや遥か遠くで手元に望遠鏡または超高性能の双眼鏡がある横で俺はじっと空を見ている。くう、である。いやあ、気持ちいなあ。サド、吉増剛造吉増剛造ベケットメルロ=ポンティレヴィ=ストロースベケットバフチンサド吉増剛造吉増剛造神田橋條治デレクベイリーファンゴッホパウル=クレーカフカサド吉増剛造吉増剛造本棚の並び並びから複製と解体非常事態としての狂熱自ら非常事態を作り上げることとしての炎上系ユーチューバー的なテロテロリズム時間軸としての器巨大な容器としての小説小説ではないものとしての四千字原稿、どうもありがとうレヴィ=ストロースどうもありがとうサド、これは走ることと歩くことと止まることによる運動の三者の往復、残骸とか非常とか強い言葉要らない必要なのは必要でないものたち間違ったものたちそれを正しいとすることが迫害である事象事物混沌であるものたち辱められたのは壁画に吊るされた女額から喉を通りそう首を通り胸を通過し濁り或いは女の母性に濾過された汗の一滴二滴がvaginaに吸われるのでないのなら(そうその汗はおとこのものであったそのA・Nはもう前しか見ていない女の汗であった)足の爪のその先ではなく足の指の裏の足の裏の足紋を迷路をくぐるようにとおり落ちる地盤に落ちる! 女たちは自らが征服され女たちは辱められおとこたちはそれに対して目を輝かせながら落ちる落ちる突然に雷撃が落ちるああここに落下という命題がある!俺はそれをKに語るためにノート十ページ分のレジュメを作成した。しかしそれは幼年の記憶のように現在に直接生かされるものではない。読むことは書くことではない書くことは読むことかもしれないそしたら読むことは書くことなのか書くことはおれにとって肉体の(肉体という言葉にはもう飽き飽きした!)身体の(何か構築したいのか!)体の(体?)からだの、その息の、小説は物語ではないのだから、デレクベイリーがそう言ってくれたから、おれはあの踊りはまさに自らを抱擁する世界を(そう世界は世界ではない)抱擁するぼくを起点としてわたしの存在の非常な糸口に血を滴らせるその息、その態度、というのは誰に示すものでなく己の地点、嫌な言葉を使ってしまったのなら(お前はインプロヴィゼーションだ)、推敲は現在形を現在形に縛り付けることである、現在形というのは仮のものであるということ、いや他のすべての言葉もそうである、そう信じているどころかそのように生きている生き物としての文字、文字が道具だって? カメラは道具であるか否か、このキーボードはディスプレイはどうだ、道具なんて言っているうちは甘ちゃんだな、これは俺の分裂体である、それもまた、病に寄りかかっている、お前が病院を避け、病から離れようとしてつかんだ空白は手のありかを教えてくれた、しかしそれはぎりぎりの限界であと一ミリで体と意識と脳と呼ばれているものとそれからありとあらゆる僕を起点としたものが拡散してなくなってしまっていただろう、俺は叫んでいた、必死で、その無重力の島から家族などの固有関係を連れ出そうとした、連れ出せた、よかったよかった、という夢を、その場所に接続することができるのならば、一体何が起こるのだろう? 肉体に縛られているのではない、体は空間を巻き込み、文字群を巻き込み、だから俺は直視せずに斜めの屈折率としての視点を対象物に捧げていたのだ。俺はインプロヴィゼーション、逆らうことのできない決定物にあらがい、事物の思想的拠点を砕く。砕くことは噛むことではないが、そう書くことで繋がるのは暴力と言っていいが暴力のないところに個が立ち上がることはない。忘れないために、或いは非常時と同じ状態を作るためにカフカ・セレクションを書き写していたのだと知った、絶縁した人人は本当にそこにいたのか、おれはもうあなたたちのために生きようなんて少しも思っていない。
 誰のためだって?
 ああ、そこでお前たちは立ち上がる。
 俺を殺そうとする俺を殺してみればいい俺はもう殺された一度死んだそれは大袈裟に言っているのではなく体験した死者となることがどのようなことであるかお前にわかるかわかったとしてもそれではもう遅い、わからないというのなら俺の現在地と同じであると言えるかもしれないが違う、そうそこで(どこで?)古川日出男の不完全な物語としての完全な語り、もうそこに加速剤は必要ない、もうそこでお前も俺も常に語りが広がる、時間の中の苦悶もだからどうしたというのだ、俺は首が痛いってそんなことで手を休めるな。もう時間はないんだ、と言う時間は、すでにそこにはないから、俺たちはようやく始めることができたんだ。
 そう、そうしてそうやって9年が経った。
 このディスプレイの中の記憶媒体には2012年からの記録が残されている。もちろんそれは何重にもわたって改ざんされているが。そこにこそ愉悦があると知っていれば、それを読むことはもはや無意味であることにも気づき、非常事態を作り出すことができる。震災や火山の噴火やそれに類する大災厄が私たちの原動力になるのはそれが記憶を生むことであると思っていたがそれは記憶を生むことがない皆忘れるSNSの体のない脳だけの記憶として流れていく。だからこそ俺は物語に対して反感を持っている。kindleで小説を読むことは、完全に物質を舐めている。舐めきっている。ぺろぺろだ。もうじき訪れる大災厄もそうして忘れさられる覚えているのは子供たちだけだ、群衆の中に突き進むことができるのなら群れの中にも突き進むことができるのだと、後付けだが俺の今日の映像は控えめな撮影からでもそう見て取ることができるだろう。じっと手を見ている
 じっと手を見ているそれもまた大事で、大切なことかもしれないが俺はその手を使うことに生涯を注ごう。なあどうして俺はこんなにも作るのか。どうして俺は神を自称し万有に対し万能感を得て、生きているのか。
 なあ、俺はどうしてこうなんだ?

 どのような問いも真を問い真を疑い脇道あるいは杣道に通じるためにあり、本道はガンジーが英国人にされたように下されて通れない。誰も通らない道、それは道ではない、そうこれは吉増剛造の言葉だ、道ではないところを通らなければならない、それが道になる、と安部公房のように言うこともできない、物語は断罪される、物語は人々を陥れる。
 絶望とか言うな。自らの病を固有名によって固着させるな。私の医者は病名を言わなかった。一度も言わなかった。もしかするとそれに名前を与えることの危険を誰よりもわかっていたから、独立したのだろう。
 ありがとう先生。
 批評のためのノートのノート、を見てみな。そこにはこう書かれている。「体に伴わない言葉も文字を書くことでその言葉は導かれる」ああディスプレイでなく紙に体を引きずりながら書く文字が連なって文となり文章となったものはすばらしいな。鳥は飛ぶし鳥は飛ぶし辱められた女たちは今日も耐熱容器の中で物語化する。小川洋子の『ホテル・アイリス』を読もうとした俺を罰してくれ。
 僕はもう図式化する俺の手癖や佐々木敦に対して抱いているもの古谷利裕に対して抱いているものそれを知らなければならない。お前にとって俺は壁であると言っていたが俺は俺のその思考の単純化や安直化や複雑なものを複雑でないものにするときの手を使わない手つきを憎んでいる。
 俺はそうしてカメラを持ち、俺はただでさえ自らの身体を破壊しようとしているのに、空間をまた潰そうとしている。
 電車の中でジャンプしても壁にぶつからないと考えるのは、空間というものの捉え方に起因している。空間はずっと同じなんだ。わかるか。場所は絶えず移動している。地球は動いているからな。でも空間は動かない。それがわかるか。
 その空間を俺は潰そうとしている。
 そのために抱擁し、人を殺し、殺伐とした目で見られることを欲する。
 異常事態が抜け道になるから。非常事態を作り出すんだよ。
 異常も非常も同じなのか。
 違う。異常は個に依拠している。非常は世界に依拠している。
 数字を一から数えるのと、無限から逆に数えるように。
 人々は群れているから。
 自由連想にも二種類かそれ以上あって、それも今言ったことに当てはまる。
 言葉とは事象に当てはめるものであると同時に、言葉が起点となって事象が生まれる。
 それが神田橋條治の『心身養生のコツ』の冒頭の「養生のための物語」に書かれていたことでもある。だがそこで物語だ、俺は物語と聞いて拒否反応が出るのか?
 いや、おれは物語とともにある、とまでは言わないがそれに近いものは感じている。
 減速してきたな。
 吉増剛造の初期の速さは疲れるんだ。
 だから次はゆっくり行こうな。
 佐々木中の「永遠のスローモーション」という言葉が気に入らないとしても。
 今度佐々木中を読もうな。
 いま読んでいる『火ノ刺繍』の中の吉増剛造と佐々木中の対談だけでも十分かもしれないけどな。
 走ったら休もうな。体を横たえて。

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