「君と綴るうたかた」がめちゃくちゃ良かった話

 数多の投稿に溢れているインターネットに、ひとつの感想を放流します......
 ネタバレがありますので、ご注意下さい。

⚪︎未来の約束の残酷さ

 わたしたちは普段、当たり前に「また今度ね」といった未来の約束をする。それは何となく未来が続くものだと思っているから。
 当然なように思えます。ハイデガーだって、ひとは死から目を逸らし続けている、だなんて言っているし。
 多分、わたしたちは知らないふりをしているのでしょう。「明日」を願うひとに「不自由ない明日」が来ないことを。明日が来ないかもなんて思いながら生きるのはつらいだろうから。
 雫もはじめは見ないふり•知らないふりをしていた。夏織は病気なんかじゃないなんて都合よく解釈して。病気のことを知った後も「明日は来る」って見ないふり。
 でもきっと、自分もそう思ってしまうだろうなって感じちゃってちょっと泣いちゃった。これからも変わらず、ふたりでいられるだろうって、そう思っていたかった。つらい現実から目を背けている内は「ふたりの恋人」で居られるから。
 本当に、「また明日ね」って、ずっと言い合えたら、どんなに幸せなんでしょう。
 現実はそうではないのが、残酷です。


⚪︎夏織の優しさ

 夏織の気遣いが、優しくて、大切で、すごく悲しかった。自分のことを省みず、死ぬ間際まで他者のことを想って行動していた彼女。自分の無力さをよく知っているから、今できることを精一杯やっていたのでしょう。その一途さが美しくも、辛かった。
 一番大切にしてほしいのはあなたなのに。


⚪︎「永遠」があったなら?

 「枕草子」で有名な卜部兼好は、人は永遠ではないからこそ美しいと述べた。
 きっとそうなんだろうと思う。
 けれど、考えてしまう。もし、「永遠」があったなら? と。
 いつまでもふたりが一緒に生きている世界。そんな世界があったかもしれない。
 何もせず、ただ一緒にいることも許される。海に行ったら水浴びだってできる。好きなところにいつでも行けるし、いつまでもいても許されるでしょう。
 たまには喧嘩もするかもしれない。お互いに傷つけあうかもしれない。でもきっと未来があるなら、ふたりは絶対一緒に生きるんだろうなという確信がある。
 「永遠」があったなら、幸せだったでしょう。でも、それは現実が不幸せと言うものではない。それは夏織が証明してくれた。


⚪︎夏織が残してくれたもの

 夏織は短くて長いあの夏に沢山の大切なものを残してくれた。一読者であるわたしにすら残るものがあった。
 夏織が残してくれた「親せきのような4人」
 自分を赦すきっかけをくれて、自分を変えてくれたこと。
 ふたりが色々なところへ行った思い出も贈り物でしょう。
 そして、最後の手紙と「ふたりの物語」
 彼女がくれたものはまだまだ数えきれない程あるでしょう。どれも、大切な大切な贈り物。
 あさがお、綺麗に咲いたかな。


⚪︎小さな感想


•花火大会の時の「ごめんね」がほんっっっとうにつらかった。
•「星川雫」名義の小説が『君と綴るうたかた』だけなのが「星川雫」は夏織のためだけの秘密の名前って感じがして本当に良い。
 あの小説はふたりで書いた物語だから「君に」じゃなくて「君と」だし、著者もふたりになっていて、雫が夏織を大切にしているのがわかって最終巻読了時に泣いてしまった(悲しい物語じゃないのに!)
•1巻の水族館デートの時、夏織がしばしばお手洗いに行っていたのは相当の無理をしていたんだなと分かり、でもそれを雫に見せないようにしたのは残酷でもあり、彼女の優しさでもあると思った。
 1巻の引き、上手すぎる。こんなことされたら続き買うしかないです。
•ゆあま先生の絵は「きみつづ」が初見なんですが、綺麗で、繊細で、透明感のある絵で一瞬で「好きな絵柄だ!!!」とビビッときました。
•最後の手紙、「ごめん」が3度も続いた時は、「どうしてあなたが謝るんですか、あなたは何も悪くないのに、悪いのはこの不条理な現実だ」なんて、棘を吐きながら、声を出して泣きました。  
 あの手紙は何度読んでも泣いちゃうだろうな。雫に自分のいない世界でも幸せに生きてほしいっていう願いが伝わってきて。自分が一番一緒にいたいはずなのに、それを隠すように。でも、最後の言葉では取り繕えなかった。生きたい。死にたくない。そんな叫びが聴こえる。ああ、なんて残酷な世界なんでしょう。
•読了後の喪失感はすごくて、しばらくベットの上から動けなかった。でも、前に進むこと、少し自分を赦すこと、過去に縋ることは悪い事じゃないことを教えてくれた「きみつづ」は優しい物語だなって思った。


⚪︎最後に

 色々つらつらと思ったことを並べてきました。感想とか書くの初めてで、でもこの作品の感想は絶対書かなきゃ!って思って稚拙でもいいから書こうと、ここまで来ました。
 読みづらかったりするけれど、結局言いたいことは「『きみつづ』という最高の作品をありがとうございました!『きみつづ』に関わった全ての人にありがとう!」です!
 なにより、ゆあま先生には本当に感謝しかありません!約3年半もの連載、本当にお疲れ様でした!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?