ミラクルギフトパレード論

サンリオガチ勢

私はサンリオが大好きである。こんなにハマるとは思っていなかったが、ピューロランドに行ってから、ハマった。まだ2年も経っていないと思う。
すべてが素晴らしいのだけれど、一番素晴らしいのはミラクルギフトパレードだと思った。残念ながら、今はコロナのために、停止しているようであるが、これは是非早く復活してもらいたい。しかし、このパレードは、ピューロの25周年を記念して作られたものなので、もうすぐ30周年を迎えるピューロでは、辞めてしまわないか、結構心配している。
このパレードは、人類の至宝であるために、是非、保存していただきたいと強く願っている。

観客と一緒につくるパレード

ミラクルギフトパレード、見たことがない人がいたら、YouTubeで検索して欲しい。いっぱい誰かが上げた動画があるし、ピューロ公式の上げた動画もある。公式が上げた動画は、緊急事態宣言発令中の、世の中がコロナでてんやわんやのときに投下されたもので、ずいぶんと多くの人が感動した一方、観客のいないパレードに寂しい思いを新たにした。観客が一体となって作り上げているパレードであることが、それで如実にわかったものである。

「かわいい」けど、それだけではない

サンリオは「かわいい」を前面に出している。パレードの中でも「Kawaii Festival」がある。なんとも人を食ったふざけた名前だ。しかし、ただかわいいだけではないというのは、話全体をよく味わうとわかってくる。非常に深い意味が込められている。むしろ「かわいい」というのは、世の中への「真実」の表れ方の一形態にすぎないことがわかってくる。
このパレードに込められている、「真実」を少し説明しておきたい。

普遍的な価値としてのスリーハーツ

まず、大きなテーマとして「3つのハート」が強調されている。
「かわいい、思いやり、仲良く」これがスリーハーツだ。
これだけでは。最初何を言っているのか、わからなかった。公式ページを見たところ、こう説明されている:「かわいくみんなに愛される心」、「おもいやりの心」、「なかよくする心」である。
この3つのハートが並列なのか悩んでいたが、あたしは次のように解釈した。思いやりと仲良くの心が表に出れば、かわいいが実現される。「おもいやりの心」、「なかよくする心」が内側にあるハートで、それが外に見えるものとして「かわいくみんなに愛される心」があるのではないか、と。
その根拠としては、闇の女王にみんなで届けるのが思いやりと仲良くの2つだからである。キティさんは「みんなの思いやりと仲良くの心を、闇の女王に届けましょう」と言う場面がある。
「思いやり」「仲良く」これこそ、伝統的な宗教の説く価値観でもあり、普遍的な道徳でもあり、現代的な価値もある普遍的なものである。

女王の改心:信じるものが現れる

そして、それが闇の女王に届くと、闇の女王はどうなるか。闇ではなくなり、改心してしまう。
これが、もう一つ、世の中の真実の姿を現していると、あたしは思った。
つまり、他人の悪を悪として見ない。良い心を見ると、それが現れてくるという現象。教育に携わっている人の間ではわりと常識で、生徒の悪いところをガンガン注意すると、良くなる方向にはなかなか行かない。良いところを認め、褒めることで、良い方向に伸びていく。それと一緒で、良い心を信じることで、それが現れてくるという、かなり大切な真実が、闇の女王の改心という話で端的に表されていると言える。

誰でもがもっている3つのハート

もう一つ大事なことは、3つのハートを「誰でもが持っている」と喝破しているところである。キティさんやサンリオの仲間たちは、そりゃ良い者だから持っているのはわかる。しかし、悪役として現れてきた闇の女王にもまた、それがあることを明言しているのは、本当にすごいことだと思った。
闇の女王が知恵の木の光を消してしまったことに怒ったダニエルが「闇の女王を倒すんだ!」と、皆に呼びかける。それに対して「倒すなんて止めて!」とキティさんが制止する場面がある。ここで、闇の女王にも3つのハートがあることを前提に行動をとれる、キティさんは只者ではないと思う。
自分の持っているものは、他人も持っているという考え方は、実はとても伝統的な東洋的なもので、全てのものが悟りを得る可能性を持っているとして「山川草木悉有仏性」とも言われてきた。まして人間同士、持っている心は共通していると、見なされてきた。西田幾多郎は「自他非分離」と言っている。現在対立している関係でも、分かり合えると信じることで、その可能性が開けてくるという、東洋的世界観に基づく平和思想をここに見ることができる。西洋では、敵味方に必ず分かれていて、敵はやっつける存在なのが一般的だと思う。敵対していた者を、やっつけずに仲間にしてしまえることこそ、非常に価値のあることである。同様な場面は、かわいい歌舞伎において、一時敵対していた鬼五郎を仲間にするというシーンとしても存在する。サンリオの思想的根幹として、あるのだろう。

サンリオの思想

サンリオの思想は実は深い。それは、いちごの王様(辻信太郎会長)の、戦争体験に由来している。いちごの王様はことあるごとにそれを述べているので、少し検索でもしてみてほしい。空襲で命からがら生き延びたいちごの王様が、人と人が憎しみ合わずに仲良くするために立ち上げたビジネスがサンリオである。だから、ピューロランドにはその思想が展開されている。
戦前を考えると、敵を倒して東亜の平和を実現するという思想で突き進んだ結果、敗戦の結末を迎えた。一方、勝った側のアメリカは、やっぱり力で敵を圧倒するという考えからは抜け出せていない。敵が敵でなくなるサンリオの考え方を、世界の人はもっと学べば良いと、わりとガチで思っている。
ここのところ、キティさんがSDGsといって、国際社会で活躍してもいるので、そういう方向に進むのかもしれない。
サンリオは、伝統的な価値観を踏襲しつつ、戦後日本の理想を追求し体現してきた、ある種の社会運動ではないかと考えている。日本の宝であり、世界の宝である。対立が絶えず生じている世界が調和し、平和な世の中になるために、必ず貢献できる社会運動だろうと思う。ミラクルギフトパレードは、その中でも至宝であると信じている。関係者には、良き形で残していただくことを願ってやまない。

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