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結婚式ゾンビ

僕の名前はチャペル。
海が見える崖の上に建てられた小さな僕の傍には笑顔が溢れていた。新郎と新婦を祝福する拍手の音は今も僕の体に響いている。

でもある日、僕を掃除してくれる支配人の顔から涙がポタポタ落ちていた。初めて人の泣き顔ってやつを見て、僕は可笑しくなってしまった。

今思うと、僕はその日に死んだのだと思う。あれ以来、人は寄り付かなくなり、壁も窓も薄汚れて、燻んだ光しか入らなくなった。

たまに、怖いもの見たさで夜中にカップルが入り込んだりした。せっかくなので喜ばそうと鐘を鳴らしたり、バージンロードに花を咲かせたりしてあげたんだけど、逆効果だったみたい。二度と来なくなった。

でも、転機ってやつはいつも突然だ。
ぐらり、と地面が大きく揺れたかと思うと、僕は真っ逆さまに海に落ちてしまった。
光が乱反射する海面を見上げながら、魚も結婚式ってするのかな、なんて考えていた。

海の底は意外と深いようだ。
僕の体はあれからずっと落ちている。

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