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voice_watanabe
二次会デミグラスソース
「俺たち、煮込まれてない?」
「煮込まれてるな」
ぐつぐつと煮えたぎる、デミグラスソースの中で、私と同僚は考えた。
どうしてこうなった?
私の送別会の後、私と同僚は、二次会の場所を探して山奥を散策した。すると一軒のレストランを見つけた。
店内に店員の姿はなかった。全裸になれ、全身に胡椒をかけろ、とおかしな注文が書かれた紙がいくつも貼られていた。注文に従って進むと、美味しそうな匂いを漂わせる大きな鍋があった。そして今に至る。
「がんばれよ」
のぼせてきたので鍋の縁に腕をかけていると、後ろから同僚がボソリと言った。俺は振り向くことができなかった。
『がんばれ』
俺が仕事を辞めると決心した後、何度こいつから引き止められ、罵声を浴びてきたのかわからない。そんな俺に向けた、こいつから初めてのエールだった。
ポチャン
涙が溢れた。振り向くと同僚の姿はそこにはなかった。
「がんばれよ」
その最後のエールは頭上から届いた。顔をあげると、オタマの上で同僚は笑っていた。
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