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みんなで動かない

「こんなに動かないことある?」
 アプローチを続けてる彼女に見合う男になるため減量を続けてきた。しかし体重計の針は動かず、三段腹は散々なままだった。
 原因はこの前地球に落ちた隕石のせいだ。偉い人曰く、地球の物理現象が破壊され、エネルギー保存則が成り立たなくなったそうだ。どれだけ運動してもカロリーが殆ど消費されず、食べた分必ず太る世界になってしまったのだ。1000km走っても、消費カロリー計の表示がお茶碗半分になってることには絶望した。
 項垂れて彼女が働く中華屋に行くと、カウンターには僕同様、彼女を狙う男たちが鬱々とした表情で集まっていた。
「気にしないで。私は頑張ってくれてることが嬉しい」
 彼女の労いの言葉に僕らは救われた。すると、彼女は僕らの前にラーメンを置いた。チャーシューマシマシだった。
「ほら食べて」
「え?」
「私、食べる姿が好きなの。太った人もちょっとね」
 僕らはラーメンがのびるまで動くことができなかった。

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