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「君子の交わりは淡きこと水の如し」第311回例会 2020/11/24

先月の第311回例会(11/24)は、水戸市泉町の歴史的建造物「泉町会館」をリノベーションしたレストランで開催されました。

この泉町会館は、1955年(昭和30年)の建築で、正面側のコーナー部にアールをとった珍しいデザインの建物です。

戦時中に水戸の大空襲で焼失した水戸市警防分団詰所の面影を残す戦前のモダニズム建築の雰囲気を漂わせ、黒タイルの上に遺る金色の会館の文字も素敵です。

お店は、ワインとシーズナル薬膳をコンセプトにしたレストラン「WINE O’CLOCK」というネーミング。自然のエネルギーをたっぷり含んだワインは、私たちの食生活を豊かにしてくれる存在です。

シーズナル薬膳を謳ったお料理は、見た目は地味で少量ながらも美味。オーナーのセンスの細やかさを感じさせました。テーブルにセッティングされた数々のワイングラスの美しさは、そのモダニズム建築と対比されて、注がれるドリンク毎に、静かに様々な音色を奏でるようでもありました。

それ故、私は、そんな繊細なグラスを扱うパントリー業務の大変さと、ブリケージ(破損)率へ、元ホテルマンとしての思考が向いてしまうのを、なかなか止められないでいました。

ここを二年前に開業したのは、女性起業家のソムリエール。私が永くお世話になったホテルに一時期在籍したこともあるひとです。

彼女の先進的なチャレンジは、築65年を経た建造物に、タブレット型のPOSレジを導入し、近未来感たっぷりに今回の幹事役の私に“お会計”をさせることで、見事にそのパフォーマンスを完結させてくれました。

ところで、荘子の「山木篇」に『君子の交わりは淡きこと水の如し、小人の交わりは甘きこと醴の如し』とあります。

物事をよくわきまえた人の交際は水のようで、つまらぬ小人の交際は、まるで甘酒のように甘くベタベタして、一時的には濃密のように見えても、長続きせず、破綻を招きやすいという意味です。

これは、26年間という長期間、交流会の主宰者である私の座右とする“運営の心得”です。

この「ほどよい距離間」をつかむのに、当初、私はとても苦労しました。いま、私は「水」ですから、一気に熱く沸騰もすれば、見る人から見れば、氷のように冷たく映ることもあるでしょう。

このあり様は、26年間という運営が培ったものであり、私の一種の処世です。それを、認め支持してくださった、多くの参加者がいて、この交流会の「継続」がはじめて可能となりました。

私はあの夜、コロナ避けのマスク越しに、あの綺麗に磨かれたグラスで、もう一口、美味しいお水を飲んでくれば良かったと、小さな後悔を残しながら、それでも満たされた気分で、ひとり家路につきました。


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