MZ世代が仕掛けるビジネス戦略 韓国イタリアンの魅力とは
20年ほど前の韓国。その頃、パスタやピザなど洋食系は、お世辞にも美味しいとは言えず、韓国で仲良くなった日本人の友人と「洋食はイマイチだよね」という話をよくしていた。韓国人の好みに合わせた味付けであるため、日本人である私たちの口に合わないだけなのかとも思っていたが、そうじゃなかったんだと思わせる理由。それは、ここ3、4年の間、メニューも味も質も変わってきているのだ。各段に「美味し!」くなってきている。
そんな変化に寄与していることのひとつに、韓国のMZ世代の経済的台頭があるようだ。MZ世代とは?
1980年代前半~2010年頃までに生まれた世代を指すのだが、現在韓国で、MZ世代というと、常にSNSで新しいトレンドを追求する20代30代というイメージが強い。彼らが社会人として消費やサービス提供の中心となりつつある今、彼らのSNSを利用したビジネス戦略が面白い。
今回は、そんなMZ世代が営むイタリアンレストランをご紹介したいと思う。
商売は場所で決まる?
日本でも言われていることだろうか?ここ韓国では、「商売の勝敗は場所で決まる」が、テナント商売の定説であった。「食べに行こうか」となると、人通りの多い通り、繁華街やビジネス街にて待ち合わせ、そこでお店を選んで入る。
これが韓国人の行動パターンであったため、「成功したいなら、とにかく人が集まる場所を選べ」だったのだ。しかし、超資本主義な韓国。そういうところのテナント料は、バカ高い。テナント商売をしたいのに、なかなか一歩踏み出せない。今も、その傾向に変わりはないが、実は最近「例外」成功談があとを絶たない。
うら寂れた感じのする、都市の中心部からかなりはずれた住宅街。過疎化、都市集中化の止まらない韓国にて、あるあるな風景である。しかし、視線を120度ほど旋回させると、
そこには、中古住宅をリフォームした、こ洒落たイタリアンレストランが。
この地域は、若い人たちが集う、海が前方に望める景観良しなホットスポットである。それでは、あの大きな窓から観える景色をご覧いただきたい。
???何よ?海なんか全く見えないじゃない!!とお怒りをいただきそうだが、、
このお店が位置するところは、海を目前にしている通りでもなく、小高い丘でもない。そう、残念なことに景観イマイチな場所である。それにもかかわらず、客足が伸びている。
その理由とは?
ここで、このお店の近くにある景色良しインテリア良しのカフェに行ってみるとする。
先ほどのイタリアンレストランから、5分ほど行った小高い丘の上にあるカフェ。全ガラス張りの、開放感あふれる人気スポットだ。ここからは、漁村の雰囲気漂う湾の素朴な景観を楽しむことができる。
夕映えの美しい景色が期待できるこの界隈に、カフェができはじめたのは1年ほど前。
カフェは、韓国人の日常になくてはならないものだ。仲間で集まり「ワイワイ」を楽しむ国民性。街のど真ん中に、郊外の景観良好なところに、どこそこに素敵なカフェができた。
郊外の海沿いにあるカフェなどは、ガラス張りの窓から一面に見える景観とコーヒーがともに楽しめるんだよ的な「映え」写真がSNSにて拡散されやすい。
そのため、人が集うようになったカフェ界隈には、そこにビジネスチャンスを見た、いろんなお店ができ始める。代表的なものは「食」のお店。カフェで簡単にブランチもできるが、価格に比べて満足できるものではないし、しっかり「食する」ことを大事にする国民性ならではだろう。
要するに、景観はカフェにて楽しんでもらえば良いので、近隣の、立地のイマイチな割安住宅を見栄え良くリフォームし、映えするような「食」を提供すれば勝算が高くなるというわけだ。
このようなスタイルで仕掛けるのは、先に述べたMZ世代に多い。ターゲットも同じ世代になるため、自分が良いと感じるセンスをそのまま具現すればいい。
韓国人好みなイタリアン
MZ世代にウケの良い「映え」るレストランの代表格といえば、やはりイタリアンだろう。
今回は、MZ世代好みなイタリアンがどんな感じなのかを紹介する。韓国人にうける「映え」ポイントのひとつに「高見え」「高級感」がある。特に、ちょっと敷居が高そう。。。的な雰囲気は、特別感を演出したいデートによく選ばれたりする。このことは、日本でもあてまはまるかも知れない。
センス良しなインテリアも「映え」に必須であるが、以前に比べると「シンプル」な感じになってきている。MZ世代に好まれるようであるが、これは、ひょっとして日本文化に影響を受けて育った世代だからといえるかもしれない。
韓国イタリアンで「お通し」として99%の確率で提供される、(日本もそうでしょうか?)パンにオリーブオイル+バルサミコ酢をつけて頂くもの。ここで出されるパンが美味しければ、料理もだいたい美味しい。
飲み物も「映え」するような、キレイ色したフルーツエイドがイタリアンの定番メニュー。コーラやサイダーを頼んでも、ちょっと小粋なグラスや色付きのストローでいただける。料理の背景としても、遜色ないようにするところがミソだ。
カルボナーラである。。が!?上に乗っかっているのは、ステーキ感覚の厚めベーコンである。韓国イタリアン「あるある」パスタだ。肉食民族であるのは間違いないと思える瞬間。私だったら、ボリュームが凄すぎて遠慮したくなるが。クリームパスタとお肉の組み合わせ。ビジュアル的に見ても、インパクト大である。
そして、もう一つ。韓国イタリアンあるあるパスタなのが、「ロゼパスタ」と呼ばれる辛クリームソースのパスタだ。「辛」を愛する韓国人に人気のメニューであるが、そこまで「辛っ!!」ではないので、辛いのが苦手な私でも美味しくいただける。
やはり、韓国イタリアンにて外せないのは、theステーキ!!だ。このお店が「売り」としているメニューである。
韓国人は、基本「肉通」である。そのため、お客にまた来てもらうためには、「お肉」を美味しくすることが第一の戦略。200gで26000ウォン。(2400円ほど)上質のお肉を仕入れ、上手く焼き上げ、ソースにもこだわる。(ここでは24時間煮込んだソースを使用)
いただいてみると、やっぱり美味しい!!ステーキ専門店でもないのに、美味しい!!じゃないと、韓国人から「あそこの店はおいしい」という評は、もらえない。
私が思うに、肉通である韓国人は、お肉の扱い方を常識のように心得ている。ここの若いシェフもイタリアン専門ではあるのだろうが、ステーキもおまかせ!!なんだろう。
ちなみに私は、韓国でいただくお肉は、全て「美味し」く感じるが、韓国人は、日本にないような味に関する語彙を総動員し、「この肉は〇〇だ。△△だ。□□だ。」などと評している。私には、何のこっちゃ理解不能な、お肉の世界が、ここには存在している。
最近インフレ激しき韓国において、このクオリティでこの値段は、お安いほうだと思う。先にも述べた通り、ここは都市の一等地ではない。誰も見向きもしない住宅地の一画である。だからこそ、可能な価格設定だ。
見栄もお腹も満たされたSNS世代たちが、インスタなどで広めることで、更なるブームを起こす。この流れが、今ソウルを中心として拡散されつつあるという。今の韓国ビジネスにおいての「決め手」は、もう場所ではなくなってきている。
韓国人のビジネス感覚
大方の韓国人は、そういった流行の空気をいち早く読むのが得意だ。お店を眺めるとき、「ここは、こうだから上手くいくだろう」「あそこは、こうだから上手くいかないよ」など、分析力も半端ない。そんな会話が、日常の会話のひとつになっている。
多才な経歴を持つ(様々なビジネスをされた)夫を持つ、韓国人の友人が私に話したことが忘れられない。
世間を眺めているとね、お金がふわふわっと浮いているのが見えるの。それをつかめばいいだけ!ビジネスなんて、そんなもんよ。
その当時「はぁ~??」と理解不能だった私。今も、そんな感覚持ち合わせていないが、、何となく分かってきたような気がする、今日この頃である。