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様々なACIM

いろいろなACIM

今回は、ACIMの様々なバージョンについての話題です。

現在、私たちの多くが手にしているのはおそらく
「奇跡講座」(中央アート出版)
というタイトルのACIMだと思います。

その原書が A Course In Miracles として世に出てから、もう50年以上が経ちました。

この版(バージョン)は、版元の Foundation for Inner Peace (内なる平安のための財団)の頭文字をとって、「FIP版(バージョン)」と呼ばれています。

しかし21世紀に入ってから、このFIP版ではないACIMが続々と登場するようになりました。(これは米国での出来事です。)

こうした状況をどう理解すればよいのか、困惑している方もいらっしゃるかもしれません。
今回の記事で、そうした方々のモヤモヤが少しでもすっきりすればいいなと思います。

ここでの内容は、私が自分で学んできたうえでの個人的な経験に基づいています。

FIP版での「編集」

そもそも「FIP版以外のACIM」とはなんぞや…??って感じですよね。。

上記のFIP版(「奇跡講座」版)以外のものもみなタイトルはA Course In Miraclesであり、”基本的な”内容は同じです。

しかし、ざっくり言うと、FIP版とそれ以外の版には異なる部分があります。それはおもにテキスト編の8章あたりまで。

この違いは、FIP版以外のACIMの編者たちが一様に口を揃えるポイントです。
かつてはこれに関して批判的、攻撃的な意見も見かけましたが、最近では、私自身はそうした論調はあまり目にしていません。
(私がチェックしていないだけかもしれませんが…)

たしかに私たちが手にしているFIP版(「奇跡講座」)は、特に「テキスト」序盤(1~4章)部分において、その後に続々と出版された他バージョンと見比べると「わずか」とはいえないような”編集”がなされているのが認められます。

その事実をどう評価するかでしょう。

私個人の感想としては、やはり、書籍として最初の「つかみ」の部分は重要だと感じます。
この「つかみ」の部分の、テキスト第1章から第4章くらいまでが、正直にいってFIP版はわかりにくい。

この奇妙な違和感を、翻訳のせいだとお考えの方もいるかもしれません。
違います。もとの文章からそうなのです。

この”編集”のおかげで、FIP版は(最初の部分だけではありますが)かえって語り手の意図がストレートに伝わってこない状態になっている。

これは…痛いですね。

ただし、内容が変更されているとは思いません。
内容じたいは変わっていないのですが、なにが言いたいのかがよくわからなくはなっている…。

各バージョンの紹介

ともかく、ACIMが世に登場してしばらくたちました。

こんにちでは、その不可思議な成立方法よりも、内容そのもののほうが理解され、重視されるようになってきていると感じます。

その状況下で、内容面でのさらなる充実を求める需要が生まれるのは当然の流れだろうと思います。
その結果、こうして続々とFIP版以外のバージョンの A Course In Miracles が世に現れているのではないでしょうか

以下、そうしたACIMの「他バージョン」に興味がある方のために、私が目を通した主なものを簡単にご紹介します。(いずれも未邦訳)


「オリジナル版」

もともとはこの版で出版が計画されていたらしく、「オリジナル版」と呼ばれているようです。
私がはじめに通読したのもこれでした。なつかしいなぁ…。

全体に読みやすく、理解しやすいと感じます。
(だからこそ、私に”二度目”があったわけですね…。)

当然ながら、最初の部分はFIP版とはかなり違います。


「決定版/註解付き」


最近日本の学習者のあいだでも、この版の存在が気になる方が増えている気配。
詳細な調査、研究の成果の一冊なのでしょう。出版は比較的に後発(?)の2010年代後半です。

この版の白眉は、編者による注釈の豊富さだと思います。
(正々堂々と「註解付き」と銘打っているとおりです。)

わかりにくい代名詞(it, that, who など)がなにを指しているのかの文法的注釈は、素直にありがたい。
また聖書との関連についても脚注がついています。
内容についての註解も多いですし、巻末にも解説がついています。

Complete edition「完全版」と自分で明言するのは、さすがです。
まあ、日本語でいうところの「決定版」くらいのニュアンスなのかもしれません。
(ということで、見出しは「決定版」にしました。)

編者はこの版にかなりの自信をもっているとみえます。
たしかに非常に高い熱量は感じますし、よくまとめられている一冊だとも思います。

「原典版」

「テキスト」「ワーク」「マニュアル」「用語」「サイコセラピー」「祈りの歌」「The gift of God(未邦訳)」の7つの文書を収録します。

現在入手できるACIMの資料として、これが最も詳しく参照しやすい。個人的にはそう思います。
(本自体も大きく、字も小さいですけど…)

この版にもていねいな注釈がつけられていますが、内容の解釈に関してではなく、聖書との関連やヘレンの筆記に関連する情報についてです。

個人的には、賢明なポリシー(方針)だと感じます。

私自身は、この版をよく活用しています。
勉強会で日本語版を使う際には、邦訳→原書であるFIP版→このバージョン…と三段構えで内容を確認することも多いです。
とくにテキスト前半は、この版を参照する作業が欠かせません。
これを確認して、ようやくその文の意味がわかる…という場合も少なくないのが実情。

「ヘレンのノート」

オンデマンド印刷というやつなのでしょうか、日本のアマゾンさんの印刷。洋書がこんなに簡便に入手できる世の中に感動です。

それはともかく、こちらの内容は、ヘレンが筆記ノートに書きとったままが活字になったもの。テキストの1~8章(FIP版では9章の一部)が収録されています。
章立てやセクションはなく、ただただタイトル通りの「ヘレンのノート」が続きます。

アメリカのアマゾンのレビューを見たところ、「FIP版で理解できなかった部分を補えた」という趣旨の好意的な評価が多いように見受けました。ある程度ACIMを学んでいる学習者なら、この本から得るところは大きいでしょう。

しかし、最初からこのような「なま」のものから入るのはどうかなと…。

ヘレンや周囲の人々の個人的な内容も多く、これはこれで読みにくさが感じられます。(なにせ、公開を前提にしていない段階の文書です)
ACIMに慣れない読者にとっては、FIP版とは違った意味で「え、それ何の話?」あるいは「コースって、こんな話なの??ちょっとがっかり…」といった感想になるかもしれません。

そのような意味で、初心者の方にはお勧めしません。それなりの学習歴があり、従来からFIP版に不可解さを感じてきた方が内容を確認するのに向く一冊と思います。

さいごに

以上、ご参考になれば幸いです。

こうした「他バージョンACIM」に興味があるけれど、自分ひとりでは英語が読み解けるかどうか不安…という方は、遠慮なく連絡ください。

これらの「他バージョンACIM」には、FIP版にはない興味深い記述も数多く含まれます。
(精神分析学の知見をもとにした詳細な説明や、性にまつわる内容など)

それなしでも充分学習は成り立ちますが、そうした記述からACIMの理解が深まる面もあると感じます。

率直に言ってFIP版(「奇跡講座」)には、5章くらいまで、不可解に感じる部分が少なくありません。
しかし他版のACIMを参照すれば、そうした部分の多くは謎が解けるでしょう。

繰り返しになりますが、そうした「謎解き」などなくても、ACIMの学習じたいは充分に成り立ちます。

今回お話ししたような事情もありますし、テキスト編序盤での不可解さについては、あまり深入りしなくていいのではないでしょうか。
この部分の「難解さ」にはあまりとらわれずに学習を進めてよいと、個人的にはそう思います。

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