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一生のうちに街中で再会したい人がいる話

私は2人目の「自分から好きになった人」を忘れることができない。
今は恋人がいるし、彼に対しての恋愛感情も今はもう残っていない。
ただ、「じゃあ、またね」が最後であったせいで物語が終わらなかったのだ。

そうなることを望んだのは他ならない私自身だった。
彼のことを一生愛し続けるだろうと思ったら、失恋だけはしたくなかった。
ちゃんと彼が住む東京で仕事に就けたら歯車を回そうと思っていた。
「他に彼女ができた」といつか言われるかもしれない恐怖心で就活が難航してきた頃から彼に連絡する頻度が減っていき、「会いませんか」のお誘いもできなくなった。

そうして東京で就職することができず、彼よりも現実を選んで地元に就職した。
その頃から彼が度々夢に出てくるようになった。
「会いたくて彼が何度も夢に出てきたけれど今度こそ本当に会えた」という夢だ。

もう何年目かも何度目かも分からないその夢を見た夏の朝、震える手で「ご無沙汰しています。歓咲です。今は○○市に勤めています。よかったらまた会ってください」と入力し、SMSを送信した。
しかし返事が来ることはなかった。
当時と同じように携帯メールで送るべきだったのだろうか。それとも、もう彼に恋人がいるのだろうか。
いずれにしても、それ以来彼の夢を見ることはなくなった。

あの頃と今は何も変わらないように思えたが、あの頃にはLINEは無かったしコーヒーが飲めなかった。
世界も私も、戻ることができないぐらい変わり果てた。

LINEの電話帳同期をしても友達追加されない設定をしているようだった。共通の知り合いもいなかった。
あとはもう、私が東京に行ったときに街中でばったりと再会するような奇跡を願うしかない。

「じゃあ、またね」の次に繋げるつもりだった、空白の数年間を互いに語り合って終わりにしたい。
失恋が厭で終わらせなかった物語を今なら終わらせられるのに。

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