Store it deep inside of us (starry matter)







君は凄く透明な少し冷たい眼に、夜に掛かるグレーの薄い雲の様なかすみを掛けてた。

クールな落書きがされた壁の前に、音楽を浸透させたような陰りのある澄んだ身体を曲げて、片足と猫みたいに曲がった背を床と壁につけてた。

君はアフリカンの歌う曲が好きだった。

君は自分の欲することをひとつも他人に押し付けなかった。

君は女の子がバカにされると、その鋭くきれいな眼を細めて、その人に皮肉を言った。

君ほどリベラルな人を視たことがない。

君ほど冷たく澄んだ優しさを隠している人を視たことがない。

君ほど嘘の中に象徴的な真実を隠している人を視たことがない。

君ほど物を持たないで満足している人を、視たことがない。

君は自分の背中に羽のタトゥーを刺れるんだと言った。

私は、そう、と答えた。

君は、それは翡翠みたいに青いんだと夢見るように言った。

向こうでは夜が明け始めていた。

地下室みたいに薄暗いここは、どんなに音楽を大きくかけても絶対に苦情は来ない。

でも隣でセックスする声が聞こえるから、夜にはよく外を歩いた。

星が瞬いていて、透明な深い青の空にそれは小さくはりついていた。

君は上を向いてそれを見て、煙草を吸っていた。絶えずその白く灰掛かった煙は、君の肺の中に送り込まれていた。

君の心の中には小さな女の子が住んでいて、君の静かな胸の中で遊んでいた。

私は時々その子を見つけた。

君はその時小さな男の子で、手折る花をあげてた。

女の子はそれを笑わず受け取り、その花をそっとしまいこみ、睡ってしまう。

私は君とセックスしたけれど、君が自分のものだとは思わなかった。

君は宇宙とつながっていて、君の私にこすりつける額とか、永い手足とかは、君が心を飛ばす激しい音楽や、そういうものが流れるところに、いつか行ってしまうんだと思った。

それでよかったし、太陽のように優しく包んだ、大切な何か、小さな何か、胎児のような何かを、私はどこかへ携えていくんだと思った。

もし君の体を手に入れたら、私は飛ぶ。

それはとても軽く、とても遠いから。

いつか霧の張る夜、君は行く。

その時私は眠っているだろう。あの小さな女の子みたいに。

君はすっと顔を上げ、ああ、やっと行ける、と思う。

そこは柔らかな青い石の様に君を待っている。

そこには何も求めない人たちがいる。

君達は抱き合う。

かたく

君は生まれてはじめて涙を流すかもしれない。

君は今、ベッドで、私の横で睡っている。

君は密やかな寝息を立てている。

私はそっとベッドを抜け、窓辺に立つ。星を見る。

ひんやりとした空気が頬を打つ。

夢をみた。

ふと起きて君は言う。

どんな?

私は言う。

君がいたんだ

すごく震えていて、湖みたいな透明な水に浸かっていた

君は羽根を生やしてて、行かなきゃいけないんだって言う

僕は凄く寒くて、

身体を腕で覆っている

どうせ離れるなら、なぜ僕たちは出会うんだろうって、僕は言った。

君は笑って、言った。

星をつくったよって。

2人から落ちた液が凝固するのを待ってた

それはずっと残るの、そして飛ぶの

君は言って、手のひらの中を見せた。

そして、僕は眼を覚ました。

僕はいつか大切なことを忘れてしまうと思う。

君は言う。

私は君の頭を抱く。

君と私の創った星を見ている。

私たちはそっとそれを抱き、

それが狂って泣いたら、暖めてあげよう。

そして君がいなくなったら、その星を見上げ、

ずっと大切にする。

それはひどく優しく、とても遠いから。







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