BPLS3にみた「もやもや」と「その先へ」
レギュラーステージ2nd
今回も第5、第6試合ともに見どころ満載で凄かったですねぇ。
ただ、その中でも今回は第5試合
「SILK HAT vs ROUND1」の一戦、U*TAKA選手にフォーカスしたいのです。
【BPL S3 IIDX】レギュラーステージ2nd 第5試合 SILK HAT vs ROUND1 / 第6試合 APINA VRAMeS vs SUPERNOVA Tohoku - YouTube
私にとってこの日、この時間、
「少しのもやもや」と「大いなる可能性」を感じる試合となりました。
始めに、私の「実況」とはアナウンサー実況の中でも型を逸した、状況説明だけでなく「薪をくべる劇場型」と言える特殊なものです。
少しオーバー目に聞こえることもあるかと思いますが、若いコンテンツを担当する場合、より発展していくことが狙いでそういった言葉選びをしています。
しかし、この第5試合。
特に先鋒戦のKIDO.vsU*TAKA
未だ負け無し連戦連勝中、
前節では個人賞3冠、
ⅡDXのキングと言っても過言ではない、
ROUND1所属「U*TAKA(ゆーたか)」選手。
一方、
1stステージから4戦目、
全てドローという戦績、
シルクハット所属「KIDO.(キド)」選手。
忖度なしに言うとU*TAKA選手はKIDO.選手にとってかなりの強敵。
倒せば「ジャイアントキリング」と言える大一番。
そのKIDO.選手を筐体へ送り出すシルクハット
チームの仲の良さがにじみ出る、和気あいあいとした光景。
対するU*TAKA選手は、
チームを1位通過させるための大事な先鋒戦に並々ならぬ思いを抱いていたのでしょう。
何度か眉間にシワを寄せ、誰も寄せ付けないほどの張りつめた空気をまとっていました。
「なんか…違う」
少しのもやもやでした。
私がきちんと彼と会ったのは、
2017年「The 6th KAC」SINOBUZの決勝ラウンドだったか…
S3で参戦、現シルクハット所属「LICHT(リヒト)」選手との一戦でした。
…そうそう、現・解説のフルコンボマスターEXITと、
大阪のダイナマイト男 現・シルクハット「VELVET」選手、
茨城の星 宇宙最速弐テラ 現・ゲームパニック「MIKAMO」選手も出場している面白い大会でしたよ。
その時、U*TAKA選手は準優勝という結果でしたが、
なによりも「この子のなんと礼儀正しいことか…」という印象が
数年経った今でも変わりません。
会う人会う人に優しく微笑みかけ、相手の腰に届くんじゃないだろうか…と、その大きな身体をクの字に折り曲げて挨拶。
挨拶だけじゃない、BPLでは呼び出しコールを受けての登場シーンから、
筐体と対戦相手へのリスペクト、カメラが回ってない時もすべて完璧、
プロとしての意識の高さは、群を抜いているのです。
プロプレーヤーとして「彼はパーフェクト」だと思っています。
いや、
そう思っていたのです…
第5試合
この日のこの試合までは。
結果は両選手が自薦曲を勝ち取りドロー。
チームとしては、中堅戦へとうまく繋いだ良き戦いでした。
ただ、言いたいのは結果じゃない。
その過程でした。
お互いが死力を尽くして臨むBPLでのバトルは
「一曲」「一曲」に並々ならぬ想いを抱えています。
本番の緊張感の中、
持てる100%の力を余すことなく出し切るプロもいれば、
大きく120%と超えてくるものもいます。
いわゆる「本番の魔物」に喰われさえしなければ、
プロはソレさえも味方にすることができるのです。
U*TAKA選手の冒頭の眉間の皺は、
まさに、「ソレ」と闘っていたのだと
後で知ることになるのですが…
プロの中でも彼の「完璧」と言える点は、常に100%、
満点の実力を「平均的に本番で発揮する」ことができる所
だと思っています。
これははっきり言って、とんでもなく凄いこと。
相手がほんのちょっとでも崩せば、勝ち切る実力があるということです。
この日の1曲目はKIDO.選手が自己ベストでU*TAKA選手より1点勝る
「Crank It」を投げ、見事、本番でも1点差で競り勝つという
激熱の展開だったのですが…
その直後、
私が見たU*TAKA選手の表情は「曇る」でも「嘆く」でもありませんでした。
励ますチームメイトの方を向いてはいるが
「何か別の次元のソレに向けて喋っている」ように見えたのです。
あれは「魔物との会話」
(あくまでも私の勝手な想像ですが…)
血の滲む努力を重ねて培った「完璧」という「プロたる意識」は
彼を強く逞しくしたのですが、本番では相手が超えてくることもあります。
本番だからこそ、「ソレ」を味方にし、
120%の力を発揮するものが出てくるからです。
今回のKIDO.選手は、自己ベストで上回っていた点もあって、
これに当てはまらない、まさに実力で勝ったわけですが。
これまでU*TAKA選手は、常に100%、魔物の力を借りず、
実力で戦い、結果を残してきました。
だからこそ、あのシーンは、ギリギリの精神状態のなか、
魔物を拒絶していたのでは?と私は思ったのです。
「俺は俺を信じる」
そんなことを言ったかどうかは定かではありませんが
二曲目の自薦曲では、調子を崩すことなく取り切ったのです。
私の中では映画の1シーンのようでした。
試合が終わってしばらくして、U*TAKA選手と会ったときに
「どうだった?」と。
軽く聞いたつもりだったのですが、彼から返ってきた言葉は…
「あの時はすみませんでした!少し動揺してしまって…」と。
「え??」
深々と、いつも通り、身体をクの字に曲げて挨拶する彼に
「なんで??」と。
「大会に水を差すような表現だったなと反省しておりまして」って。
いい!いい!ちょっと待って!!
あのね、君があの時、差してくれたのは「ちから水」だよ。
真剣にあの場に立って、
まぐれに期待せず、
真摯に向き合う姿が
どれだけの人にパワーを与えてくれたか。
仲間が勝って涙し、
全ての勝負に手を抜かず、
汗する姿こそ
パーフェクトと私が錯覚する要因で…
それもこれも、
私の妄想なのですが、
その妄想を「夢」と言い換えれば、
あなたは私に「夢」を見せてくれる稀な選手なのです。
大いなる可能性です。
これからも期待せずにはいられません。
私の仕事はほんの少しの薪をくべること。
火を燃え上がらせて悔いなく祭りを盛り上げるのは
みんなの仕事。
さて、そして今回U*TAKA選手と戦ったKIDO.選手含め、
そんな選手がゴロゴロいるBPL、どうか最後まで応援よろしくお願いします!
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