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乳腺炎②

ヒーロー

高熱で身体が痛い、胸が熱くズキズキと痛む中、
旦那さまに電話した。

「どうした?なんかあった?」

仕事中にもかかわらず電話をとってくれた。

「お願い迎えに来て」

旦那さまの声にほっとした私は、泣きながら伝えた。

「わかった!」

と電話をすぐ切った旦那さまは、実家まで迎えに来てくれた。


痛かろう

旦那さまが実家まで迎えに来てくれるまでの間、寒さで震える身体をカロナールでごまかし、持ってきていた荷物をまとめていた。
この時間から病院に行ってまた2時間かけて実家に戻ってこれるわけがない、日付をまたぐ。
今日は家族3人で自宅に泊まろう。

旦那さまが荷物をすべて車に乗せてくれて、病院へ向かった。

病院に着くころ、カロナールで熱は微熱まで下がっていた。
明らかに乳腺炎の症状があったため、夜勤の看護師さんがすぐ診てくれた。

「わ~これは痛かろう、こんなになるまで」

石のように固くなった胸を見た看護師さんが言った。
ひとまず応急処置でマッサージをしてくれ、翌日朝一で母乳マッサージ専門の方にみてもらうこととなった。


外科行き

母乳マッサージ専門の方が診てくれた。
服をめくりあげてひとこと

「ちょっと、師長さん呼ぶね」

ピッチで看護師長さんに連絡し、看護師長さんにまで診てもらうことになったのだが、反応はショックだった。

「いちざきさん、これね、ちょっと我慢しすぎたね、すぐ外科に行こう」

看護師長さんが連絡を取り始めたのは、乳腺外科だった。

「今すぐ行って、診てくれるって、これ病院のパンフレット、車にナビあるね?」


切開

午前診療が終わる間際、乳腺外科に到着した。

病院に入ると
「あ、いちざきさんですか?話は伺ってます」
とすぐ診察室に通してくれた。

院長先生がエコーで診てくれ、すぐ点滴が始まった。

「注射で膿を出すこともあるのだけど、いちざきさんの場合はそれができないほど酷くなっているね。切開をして膿を出しましょう」

「せせせせせせ切開ですか!?」

誰だって焦る、「切開」だ。
つい1ヶ月前に帝王切開をしたばかりなのに。
麻酔が切れてあんなに痛い思いをしたばかりなのに。

あれよあれよと切開の準備が始まる。


痛くないわけがない

もうあんな痛い思いはしたくない、すでに泣きたい。
切開前の麻酔は全然平気だった…帝王切開に比べれば。

そもそも、その基準がおかしくなっていた。
帝王切開の痛みよりは大丈夫、と思うばかりに乳腺炎が酷くなったのだ。

処置の間、他の看護師さんが息子を抱いてあやしてくれ、ひと泣きもせず揺られていた。

「じゃあ始めるね」

全身に力が入った。
痛すぎる、麻酔なんて意味がないじゃないか、涙がぽろぽろとでてくる。

介助についてくれている看護師さんが「痛いね、痛いね」と手を握ってくれた。
その手を力の限り握りしめた。
痛かっただろうな、その看護師さん、ごめんなさい。

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