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お遍路紀行(2021.11.)

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四国へ初めて渡りました。
お遍路では、同行二人(いつも弘法大師といっしょにあるという意)といいますが、お袋さんの連れとして車で香川を巡り、岡山・倉敷方面から、瀬戸内海を瀬戸大橋を通って香川県入りです。
お袋さんはそれまでに60箇所以上をひとりで巡っているので、残すところ香川のみとなっている。
僕はそれに付き添い、4泊5日16箇所のお寺を参拝。

端的に言ってしまうと、これは信仰とも結びついているし、強い意志がないと完遂できない代物だと思った。
四国八十八ヶ所巡礼は、修行僧しかり、追善供養しかり、インドのガンジス川へ死にに行くような心持ちで、何かを背負っている者の業というかそんな強い思念を感じる。呼び方は怨念でもいいが。
一方では観光という側面も強く、現世利益を求め、或いは健康、余暇のため、行う者も多い。
こういった寺院は両方の側面を持っていて、納経帳や掛軸や白衣に朱印を貰うっていう行為もスタンプラリーに近くコレクター心をくすぐり、こりゃなんでもありだな、とも。
観光バスで乗り付け、喧騒の中、団体客でそぞろ歩くのも、それもまたひとつの余興だ。
コロナ禍ではあるのでそんな目も反くような輩を目にしなかったが、やはり荘厳さや静寂を求め、何か厳かな知古を得たいと思うのが、お寺巡礼の動機でもあろう。
なにか自分には、そんな生真面目で禁欲的なところもあるらしい。

マゾなのかも知れぬ。

ショーケンはこのお遍路を徒歩で2回も完遂している。
険しい遍路路1400キロ、早くても40日は掛かる行程だ、さっとお寺前まで車で行っちゃうのとは重みが違う。
隣に住む親戚の伯父さんも去年に遣り遂げている。
1日約3〜40キロを歩き、宿ではもう直ぐにひっくり返って寝るだけの繰り返しで、悟りを得るどころか何かを考える余裕もないくらい辛かったそうだ。
しかしそれこそが色即是空・空即是色、まさに般若心経の真髄なのだった。それに気付けばね。
一切の苦役から解放されるために、身体を鞭打ち苦しんで歩くという、空っぽの心を悟る遍路路か。

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この季節にしては気温が高く20度超えの毎日、車で駐車場、お寺で賽銭して般若心経を唱え、納経帳に朱印(300円)貰って退散という行為をしていくうちに、僕はといえば飽き飽きしてしまった。
なんの苦行でもなく、楽にスルーしてしまうこの行為に一体なんの意味があるのだろうか、と訝しるんだ。
いやむしろ失敬だろう、不埒で不純だろう、と。
でも僕は、お袋さんの背後をとぼとぼついていくことが、ひとつの行なのであった。

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お遍路とは関係ないが、お袋さんが金刀比羅宮(通称こんぴらさん)に行きたがるのでその麓に宿をとった。
川に並ぶホテル裏は、ピンク街、ソープランドのネオンがびかびか、この俗さがたまらない。
夕刻、江ノ島のようにお土産屋さんが並ぶ通りを闊歩し、僕はご機嫌だ。
日本酒の試飲で火照った身体で寂れたお寿司やさん、そこで亡くなった親父やら疎遠な家族の話ができて良かった。
そうして宿でひとっ風呂浴びてから、先に寝入るお袋さんを後に、街へと繰り出す。
とはいえ閑散としてる通り、一周してみたが暗くなると観光客も出歩かずホテルに落ち着くようで、ピンク街も活気はなく隣の居酒屋がざわざわしてるくらい、路地裏にある辺鄙な赤ちょうちんで一杯。
店のオヤジは70歳ちかく、土佐っ子らしく仏頂面で頑固そう、なぜか客の僕が気を使い話題を振りまくしかない。
時は参議院選挙前、選挙の話をしたら、強力な自民党支持者でけちょんけちょんに伸された。
そうか、こういった人がいわゆる地盤を固めているのだな、もう思想や政策ではなく、変えられない一途であり一本気であるので、騙されようが裏切られようが頑なに進むしかないのであろう。
頑丈で堅固だ、それは後の選挙結果でも思い知らされたわけであるが。
まぁ日本酒を呷りすぎて悪酔いなのかも知れぬ、いやまさかオヤジのそれが呑ませるテクニックか!?

川にゆらめく、ソープのネオン、少し哀しや、こんぴらさん。

一句詠む。

次の日は雨がしとしと、お袋さんが足が痛むというので参拝は止して(こんぴらさんは石段が多い)愛媛県まで足を伸ばす。
その前、ロープウェイで渡る"第66番・雲辺寺"へ行くが騒がしい行楽客の家族連れが多く辟易し、僕は二日酔いのうえ、参拝あたり、少しうんざりもしていて機嫌が悪かった。
だから少し母を邪険にしてしまったところもあり、なにしろ母は起床4時午前中は調子良く饒舌、就寝8時で沈黙という、僕とは正反対の生活形態なので、うまくカチ合う筈もなひ、それでも最初はお互い気を使うのでなんとかなるが、結局は我が出てしまうことは必至なのであった。
関所寺と呼ばれる邪悪な心の者はそこから先に進めぬという関所寺がココであることを後に知り、このお寺がそうであった。


愛媛県"第58番・仙遊寺"は、母が前回お世話になった宿坊があり、そちらで宿をとる。
山の上にあるお寺は厳か、宿坊に宿泊してるのは僕らだけ、精進料理で有名だったそうだが今は止めてしまい味気ない弁当、選挙結果が気になったがテレビなし(食堂で少し見れた)、ビールは飲める、温泉はとても気持ちよし。
夜19時半にご祈祷してもらう。
ここの御本尊は千手観世音菩薩、誰もいない本堂で手がたくさん生えた仏像を前にご住職を待つ。
祈祷が住み、ご住職の講話、齢はあの赤ちょうちん主人と同じくらいだろうか、学生運動ヒッピー世代、空手の有段者、紆余曲折の後に仏門に入り、母と妻を送ってこのお寺を継ぐ(次男だそうだが)という話は力強かった。
畢竟、信仰は身をもって、頭(観念、知識)でなく心(経験、体験)で掴まないと、生まれないものだと思う。
それに現与党の酷さなどもお話しされ、すごく身近な存在に感じた。
終わり良ければすべて良し。

僕は仏門には入らないと思うが、仏陀や空海やキリストや様々な宗教のお話にはとても興味津々。
語り継がれ、熟されたこれらの物語は、どんな娯楽作品をも凌駕してる。
神仏、それらを模した像は、みうらじゅんが"ウルトラマンの原型は弥勒菩薩"と云ったように、どんなヒーローよりも魅力的でカッチョいい。
そんな観点からも、お遍路さんを支持する。
ご縁とも言いますが、せっかく16もの寺を巡り朱印を頂いたので、ゆくゆくはこの路をまた再見することになるだろふ。
ショーケンばりに徒歩で往くか、自転車という手もあるが、車でちゃっちゃと行くのはお楽しみが減りそうだなとか、いろいろ考えるのです。
おふくろさま、ありがとう。

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追記:四国のうどんはどこへ入ってもすこぶる美味かった。しかも安い!

【archive】2021.11.03.