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授業で君たちはどう生きるか(原作)を扱ってみた。

最近、アカデミー賞を取ったジブリ作品「君たちはどう生きるか」ですが。2学期のユニット(学習単元)で扱いました。対象年齢は15-17歳の生徒です。約300ページもある長編ですから、どう授業展開をしていくか、悩みましたが、やはり読んで理解しないことには始まらないということで、毎授業で約10ページずつ音読をし読破させました。

その過程で課題を与え、分析させたり、言葉の意味を調べさせたり、時には劇をさせたり、小説嫌いにならないようにうまく散らしながらやりくりしました。きっと本が好きな子なら、本を渡して「読んでおいて」で成り立つのですが、多くの中高生はそうではありません。特に今の時代の子は、SNSという集中力を散漫にさせるものに取り憑かれているので、パラパラ、適当に読んだと言われて授業に臨まれます。これではせっかくの文学の授業が成り立ちません。文学の授業において、本のストーリーを理解している、これが基礎だと思います。この基礎が疎かの状態で授業をすれば、作者にも大変失礼ですし、授業が薄っぺらいものになります。

「君たちはどう生きるか」が素晴らしい作品であり、コペル君という主人公の成長の軌跡が、今の中高生にも絶対に響くことは確信しておりました。だからこそ、内容をしっかり理解させ、コペル君の心情を読み取り、自分と重ね合わせる。これが出来さえすればこの学習単元の目標は達成すると思っていました。”新鮮な野菜はそのまま食べた方が良い”この作品を授業で扱うのであれば、下手に四方八方に展開せずに作品の軸に常に寄り添っていた方が良いのです。

とはいうのもの、IB(バカロレア)の授業な訳ですか、しっかりと評価基準に沿って授業を組まなければなりません。私の教科は「JapaneseA:言語と文学」です。A 分析 B 創造性 C構成力 D言語力 この4観点を評価していかなければなりません。なので、ただ読ませて読解をやっているようではD 言語力の評価しかできません。読解はあくまでも理解力を図る手段です。理解力が図れたら、分析的、創作的な課題も出さなければなりません。分析的な課題は例えば、

作中P〇〇からP〇〇において葛藤はどのように表れていて、作品理解を深めるためにどのような効果を成していますか。 

作中P〇〇からP〇〇において、作者はどのようなことを工夫して、読者にメッセージを届けていますか。 

それぞれ1500字程度のエッセイを書きなさい。

など。

創作的な課題は例えば、

あなたがおじさんに成り切って、コペル君に手紙を書きなさい。その際、おじさんの言語的特徴を真似すること。

1000字以上

エンディングを創作しなさい。グループで約5分間の寸劇をしなさい。

など。

こういった課題を音読と並行しながらやっていくことで、IBとしての授業が成立していきます。 

ただ最も重要なことは次です。これは私の教科に限らず、いや、IBに関わらず、全ての教育者が指導前に念頭に置いておかなければいけないことです。 

それはゴール(出口)を明確にしておくことです。
ゴール,つまりSummative taskです。
この学習単元において最終的に生徒をどこに導くのか。 

日本の教育を否定するわけではありませんが、教科書という素晴らしいシステム教育の下、各教員はゴールを自分で考える必要ありません。なぜなら教科書がその道順を明確に示し、教科書に沿って教えれば、自然とゴールまで導いてくれます。つまり各教員は与えられた材料で決められた料理を正確に作れば良いのです。もちろんどう授業するかは、各教師の匙加減ではありますが、ゴールを自分で設定するか、しないかは大きな違いです。

少し話が脱線してしまいましたが、この単元でのゴールは、作者がタイトルに込めた想いを組んで、

自分はどう生きたいのか、を少しでも見つけ、他の生徒はどのように考えているのかを知り、自分との違いを理解した中で、自分の道に気づく、こういった感じでした。 

この作品に出会う前までは、誰かに与えられた道を進んで歩んでいた生徒たちですが、この作品を読み終えた後は、与えられた道を進みつつも自分の道は何で、何が大切なのか、を深く考えることができると思います。

私は映画も見ましたが、映画と小説の唯一の共通点はメッセージだと理解しました。ストーリー自体には共通点はありませんでしたが、両作品が伝えたいメッセージは「誰かの役に立ち、仲間、友達、家族を大切にしてほしい」ということだと思いました。 

まぁそんな学習単元でした。  
コメントあればお願いします。
IB教師10年戦士が考えた内容です。






   

 







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