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駒草山如から連想される巫女要素



【まず初めに・注意】・この記事はあくまでも筆者の個人の解釈です。言うなれば強めの幻覚です。見出し画像は私の自作のイラストです。筆者は東方projectの作者ではありませんし、設定についても一字一句余すことなく全て完璧に網羅している訳ではございません。そのため、ここに書かれていることが100パーセント正しい保証はございません。公式に問い合わせるような行為は絶対にしないでください。もしそうされた方がいても一切、私は責任を負いません。真に受けることなく個人の戯言ぐらいの受け取り方で読んで頂ければ幸いです。


初めての方は初めまして、既にご存じの方はお久しぶり。『シュレディンガーのお燐』と申します。この記事は東方ステーションのユーザー企画「東方虹龍洞”考察”コンペティション」用に、ツイッター上で私が挙げた考察にもう少し具体的な説明を加えて細かくしたものとなっております。ここでは主に東方虹龍洞3面ボスである彼女に焦点を当て、この場を借りて考察していきたいと思います。


1 依姫のそっくりさん


虹龍洞体験版が配布されて新キャラの情報が出回った時、こう思った方も少なからずいたのではないでしょうか?「あれ?このキャラ(駒草山如)、依姫に似てるよな?」と。私もその中の一人です。赤基調の服装だけでなく、髪色や髪型、リボンの色や形まで似ているじゃありませんか。


山如1



2 「太夫」から連想される巫女的な要素


山如2


彼女は山の妖怪達からは「駒草太夫」という呼び名で親しまれています。ですがこれはあくまでも通り名のようなものであり、本名は「駒草山如」であることが画像の彼女のセリフやおまけテキストの説明文からもわかります。「太夫」というと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?おそらく遊女を思い浮かべる方も少なくはないでしょう。この太夫という呼称ですが、元々は中国の官位に倣った官位の一種であり、そこから転じて神事を奉る神職や芸能者を指すものであり、そこから時代の変遷につれて遊女の最上位を指すものとなっていったそうです。神事、芸能、遊女、これら全てに関連するものとして私が想起したのが「歩き巫女」です。「歩き巫女」というのは、特定の神社に所属せずに各地を歩きながら神事を行っていたという、かつて存在した巫女の形態の一つです。その中には芸人や遊女を兼任していた者もいるといわれてるのですから驚きです。一方、依姫の方はというと、彼女からも巫女を連想させる要素があります。まず初めに、彼女の元ネタであろう神様の玉依姫についてですが、神霊が依り憑く乙女や神に仕える巫女などの女性の総称としての固有名詞でもあるとされています。彼女の二つ名である「神霊の依り憑く月の姫」もそれを意識していそうですよね。次に、彼女の能力についてですが、彼女の能力は「神霊を呼ぶことができる程度の能力」、あらゆる神様(八百万の神)をその身に降ろす能力なので思い切り巫女をイメージした能力であるともいえます。これらのことからもこの2人に「巫女を暗示させる」共通の要素があると考えられるのではないでしょうか?



3 巫女≒山姥≒山女郎?


彼女の種族は「山女郎」です。この山女郎ですが、かの有名な妖怪である「山姥」の異名であるともいわれています。その山姥についてですが、元々は山の神に仕える巫女であったという説もあります。彼女の種族的な方面からも巫女を連想させる要素があると思います。



4 驚きの発見 博奕打と巫女の繋がり


中世(13世紀~14世紀)に成立し、職人を題材とした歌合に「職人歌合」があります。様々な職人が左方、右方に分かれて和歌を詠むという形の仮託の歌合で、歌や判詞だけでなく絵も描かれています。この職人歌合の内の一つであり、鎌倉時代に成立したとさせる「東北院職人歌合」に関して驚くべきことがありました。なんと、巫女と博打打ちが一緒になっているということです。何故、巫女と博打打ちが一緒にされているのか。その理由について私達には到底理解が及ばない部分もあると思います。これについては市場の本来的な原理や利息と神仏の関係などについて述べられている網野善彦氏が、「職人歌合」を神仏との関係が深いものであるとして非常に興味深い見解を示されていますので引用させていただきます。

興味深いのは「東北院歌合」で巫女と博奕打が番いにされているという点です。そもそも博奕打が職人歌合に登場すること自体、十三世紀以前の社会の特徴が非常に良くあらわれていて、面白い問題がそこにあるのですが、おそらくこれは博奕打も巫女も、一方はさいころで、一方は神がかりによって、神の意志を伝える。そういう職人として番いにされているのではないかと私は思うのです。【出典:網野善彦著「日本の歴史をよみなおす(全)」(ちくま学芸文庫)株式会社筑摩書房出版 2005,7,6  71頁~72頁より一部引用】
平安時代の末、「双六別当」「巫女別当」という役職が加賀国の国衙にあったことがわかっており、京都の官庁にも、双六打、博奕打や巫女を統括する役所があったことは確実です。じっさい、上皇の妃である女院がお産をするとき、祈禱師(験者)のうしろに、悪い「物の気」をつける「物付」になった巫女がいるのですが、そのそばに双六の盤がおいてあるのです。そして巫女は「博を打つ」、多分さいころをふっています。これは民間でも行われており、博奕打と巫女は宮廷でも密接な関係にあったのです。このような意味で博奕打も巫女も職人の一種と考えてよいので、両者が番いにされているのも、こう考えれば当然のことです。【出典:網野善彦著「日本の歴史をよみなおす(全)」株式会社筑摩書房出版 2005,7,6  71頁~72頁より一部引用】

網野善彦氏によれば、職人歌合(東北院職人歌合)では、博奕打ちはさいころで、巫女は神がかり(神懸り)、すなわち神霊が乗り移ることにより、神の意思を伝えるものとして一緒にされているのではないか。またそれは、平安時代に博打打ちや巫女をまとめる役職があったことや、宮廷での関係からも、一緒にされているのは当然であるとされています。神をその身に宿すこともある、シャーマン的な役割も持つ巫女はわかりますが、博打打ちが神の意思を伝えるものであるとされているのは非常に面白い見解ですよね。賭け事には「運」も絡んできますので、それこそ「神頼み」ということなのでしょうか?また、祈禱など、現代でも昔でも重要な場面において、とりわけ神に祈りを捧げるわけですから、神のメッセンジャーとも言える巫女がそのような場面で重要視されるのも納得がいきます。その巫女が傍に双六を置いていて、さいころを振っているような記録があるということですから、今でこそ「博打」と聞くとあまり良いイメージが湧かない方も少なからずいらっしゃると思いますが、昔の日本においては博打打ちも重要な立ち位置にあったとも考えられるのではないでしょうか

博打打ちと巫女が無関係ではないのがわかったところで、もう一度これを見て思い出してみましょう。駒草山如、彼女が主に何をして生活していたのかを。

おまけテキストの設定では、彼女は、天狗や、山童、河童などの山の妖怪相手に賭場を開き、胴元をして生活しています。

どうです?何か繋がりが見えてきませんか?この設定は彼女がれっきとした博奕(博打)打であることを示しています。彼女が博打打ちであること、そして博奕打ちと巫女は無関係ではなくむしろ深い関わりがあったのではないかとする網野善彦氏の見解があること、これらの要素から見ても彼女から巫女を連想することは可能であると思います。なぜ山女郎である彼女が元ネタとおおよそ関係のない博奕をしているのか?どうしたら山女郎から博奕をするというキャラクターが生まれるのか?山姥に似せた山女郎としてキャラクターをつくるのならば、ネムノと似たような格好になってもおかしくないはずです。ですが彼女の容姿は山姥を想起させるようなものでは到底ありません。余談ですが、彼女のテーマ曲には東方ファンならお馴染みの「いつものフレーズ」っぽいリズムが使用されています。このフレーズが使われている曲をテーマに持つキャラには八意永琳や埴谷神袿姫、九十九姉妹など種族や元ネタの存在に「神」が関わるキャラも少なくありません。やはりそこにはZUN氏の隠れた意図があるように思えてならないのです(勿論、何の意図もなくて全く関係のない可能性もあります)。



結論:結局、2人の関係性は?


「2人とも巫女を連想させる要素がある、これが2人の容姿が似ている理由なのではないか?」というのが今現在の私の解釈です。2人から連想される要素として「巫女」を挙げたわけなのですが、結局のところ2人の繋がりが何なのか、それを証明するには現状あまりにも公式からの供給が薄いといえるので、結論付けてしまうのは早急でしょう。「何故2人は似ているのか?」、を探るものであり、あくまで巫女的な要素があったとしてもそれは「巫女を連想できる」「巫女を暗示している」程度のものであり、駒草山如=巫女という訳ではありません。第一に、現在の公式での山如の種族は「山女郎」であり、依姫の種族は「月人」なのです。

彼女の家系が繋がりが云々、というよりもある種のミスリード的な意図で依姫と容姿が似せられているのかも知れません。しかし、そこは東方projectです。何たって今作で「伊弉諾物質」「陰陽玉の後継者」「妖怪の山の内部の空洞」といった爆弾級の設定を一気に出してきたぐらいです。ZUN氏の中に何らかの設定があり、後でそれを(場合によっては修正して)出してくる可能性もあるわけです。私個人としては彼女がいる妖怪の山というのが元々、神代のものである可能性が高いのが(このことについては後々別の記事で言います)ちょっと怪しいなと思っております。4面以降の情報量が余りにも濃いので、あまり触れられてなさそうにも思える彼女ですが、私個人としては彼女も割と重要な立ち位置のキャラなのではないかと予想しております。書籍等での出番が待ち遠しいです。



参考資料

・ 上海アリス幻樂団 「東方虹龍洞 ~ Unconnected Ⅿarketeers.」 2021,5,4

・原作 ZUN 漫画 秋★枝 「東方儚月抄 ~ Silent Sinner in Blue 中巻」   株式会社一迅社 2008,12,9

・監・著:ZUN 「東方人妖名鑑 常世編」 株式会社アスキー・メディアワークス 2020,10,27

・網野善彦著 「日本の歴史をよみなおす(全)」(ちくま学芸文庫)株式会社筑摩書房 2005,7,6

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