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一度きりの人生、抗ってこう!

 東京から約2時間、“海と山とアートのまち”北茨城市磯原地域に位置する、 “グランピングビレッジIBARAKI”。

 このエリアにある磯原海岸は観光客に「東日本で最もきれいな海」とも呼ばれ、約1.5km続く美しい砂浜があります。海に浮かぶ二ツ島はシンボル的な存在で、目の前にあるこちらのグランピング施設から、太平洋の水平線を望むことができます。他にも海を眺めながらバレルサウナで“ととのう”体験や、茨城エリアのハイクオリティな食材を使用したグランピングBBQなど、最高の非日常×癒し体験を過ごせます。

 今回の取材では、グランピング施設を含む複合施設を経営されている、株式会社メイズムランドの盧 源柱さんにお話を伺いました。

VOL1 「まんじゅう&熱い熱意」と「チーズケーキ&強い思い」

― 初めに、こちらのグランピング施設を始めた経緯などについて教えてください!

 リサイクル業を営んでいる祖父の時代から、ここ、北茨城市に移り住んでいます。学生時代は水戸の学校に通う、サッカーに熱中する高校生でした。ポジションはフォワード。先日も都内までサッカーの国際親善試合を見に行くほど今でもサッカーが好きです。

 小さい頃から運動が好きで、体育教師として学校に勤務していたこともあります。部活動顧問として空手を教えていた経験もあり、実は黒帯も持っているんです。

 その後、私がこの磯原海岸にグランピング施設を作ることになったきっかけですが、美しい海岸線があるこの場所で事業をやってみたい!と思っていたところ、売りに出ていたこちらの土地を見つけました。
                                                                         当時、私には開業するための資金が無かったのですが、「この磯原の地で事業をやってみたいんです!!ぜひ土地を貸してください!」と、手土産に磯原まんじゅうと熱意(笑) を持って、オーナーさんに直談判をしました。すると、「あなたのような若い人が事業をやるなら、わかりました。応援しましょう!」と言ってくださり、そのおかげもあってグランピング施設を建設することができました。

 今では、県内だけでなく、遠方からも多くのお客様にお越しいただいています。宿泊客の口コミが集客の大きな要素となっていると思いますが、こちらのグランピング施設を利用してくださった方からは、ロケーション、料理、おもてなしにおいて、多くの方に高評価を頂くことができています!丁寧な心に残る接客を心掛けているからでしょうか。スタッフみんなのおもてなしにより、お客様に満足していただけることが本当にうれしいです!

先日、都内の学生さんのカップルが宿泊してくれた際に、「ここは最高です!ここでしか味わえないグランピングの魅力をもっとみんなに知ってほしい!!!」とお褒めの言葉を頂きました。このような都会に住む若い方と、思い出になるコンテンツ作りを一緒にやってみたらおもしろい企画ができそうだなと思いました。

―  こちらのグランピング施設は、都会の若い方にも高い評価をいただいているんですね! グランピング施設のほかにも、チーズケーキ専門店を経営なさっていると聞きました。 

 そうなんです。「かんらくヤ」という店名で、こちらの敷地内でチーズ
ケーキの販売も行っています。一番人気は、ベイクドチーズケーキです。チーズソムリエが厳選する力強い味わいにほのかな酸味と塩味のあるフランス産クリームチーズを2種類使用し、濃厚ながらあっさりした風味を堪能できます。

 召し上がった方みなさん笑顔になり、おいしい!!と言ってくれます。
レアチーズ、ワインの好きの方にはゴルゴンゾーラチーズケーキが特にオススメです!

 地元事業者の焙煎したコーヒー豆、鹿行地区のメロン、奥久慈大子のリンゴなど、
旬の食材や地場産品を使用した10種類程度のケーキを販売。

             
 かんらくヤの店名は、チーズの和名“乾酪”(かんらく)からとったものなんですよ。

 今って、おいしいものは世界に溢れているじゃないですか。その中で注目してもらえるように、海外で行われた、世界のお菓子品評会に行ってチーズケーキを出品したこともあります。優勝を狙って出場したのですが、その時は努力賞を頂きました。
他にも、食に精通する一流シェフやトップバイヤーによる品評会「料理王国100選」に2年連続で選出されたこともあるんですよ!

お客様にダッチオーブンでチーズケーキを焼いてもらうのが好評だという。

- チーズケーキの販売を始めたのは、なにかきっかけがあったのですか?

 チーズケーキを販売し始めた理由は二つあります。

 一つ目は、東日本大震災で福島県の原発事故の際、酪農者の方が風評被害により牛乳が売れなくなりとても苦しい思いをされたと聞きました。ただおいしい牛乳を届けたいだけなのに、自分の自助努力を超えた範疇の出来事で大きな損害や被害を受けられたと聞き、深く考えさせられました。 

そこで、自分がおいしいチーズケーキを作って、世間で「バズる」ことができ、その牛乳を全量買えるくらいの力がついたら、酪農業のみなさんの生活を助けられる、本気でそう思ったんです。もちろん全量は難しいですが、私が立ち上がることによって、悲しい出来事がなくなれば、そう思いました。

 二つ目は・・・、チーズケーキ作ったらモテそうでしょ!?(笑)そうはなってないけど!
かんらくヤのホームページに掲載されている写真、かっこいい写真が撮りたくてニューヨークまで撮影行ったんです!

― チーズケーキにまつわる、そのようなエピソードがあったんですね。
行動力もあり、見た目からもエネルギッシュで活動的な盧さん。原動力となっているものはなんですか?

 自分の中でモットーがあって、「永遠のやんちゃ少年」でいよう!と思っています。とりあえず行動しよう!と思うんです。

 実は、今まで運転中に事故に巻き込まれたことなど、命に係わるような大きな出来事が二度ほどありました。その為、死を覚悟する経験が今までなかったという方々に向けて言いたいことがあるんです。

 それは、“ 死に様は、生き様 ” だということです。かっこよく死ぬにはかっこよく生いきなければいけない。無駄な人生を過ごしてはいけないと思うんです。人生に抗っていかないといけない。

現在の自分の能力が、“これ”しかないから逆算して、 “これ” にチャレンジするのでなく、できる結果はどんなことでもいい。まずは、何事にもチャレンジして、人生に「抗えっ!」って言いたいんです。

私には娘が四人いるのですが、彼女たちもきっと私の背中をみてこの生き方を学んでくれていると思います。

VOL2 「日本+竹+物語」のブランディング計画。世界中に発信したい!


―  今までの様々な経験によってのみなさんに伝えたい言葉が、「人生に抗え!」なんですね。盧さんのこれから先の目標を教えてください。

 北茨城市も含めて、県北地域がどんどん盛り上がってくれることを願っています。簡単な話、遊園地など娯楽施設を作ったら若者などにはすぐに「バズる」と思いますが、そんな話ではないですよね。

  大分県にある別府市が、観光以外でも世界で有名になっているんですが、その理由はわかりますか?
別府市の大学には国際関係学部のキャンパスがあるんです。そこに世界中から学生が集まってきているそうです。すると関係人口も増え、経済的にも潤っていく。若い学生がいることで街が活気に溢れ、ますます地域が元気になってくる。

 県北地域にも学校ができたら、間違いなく街が活性化するはずなんです。いつか教育機関の施設が誘致できれば、と本気で思っています。

 もちろん、これが実現すれば一番いいのですが、今すぐに、とはならないのが現状です。実は、その他にも考えていることがあって。

現在、日本では放置竹害(※)の問題があるのをご存じですか?(※放置竹害・・もともとはたけのこ栽培のためなどに植えられた竹林が管理されなくなり放置されて広がっている)これをどうにかしたいと考え、竹を建築資材に利用できないか?と考えたんです。
 
 私はグランピング施設を経営している、「その環境問題の解決のため、竹でグランピング施設を作ってみればいいんじゃないか?!」、そう思いついたんです!!良い考えでしょう?

竹の建築の世界を学ぶため、すぐにインドネシアに渡ったという盧さん

 まず、竹を使った建築があるのかを調べたところ、インドネシアにあるバリ島に多くあることがわかりました。それで早速、現地に渡りました。
行ってみると、竹の建築方法について学べるアカデミーがあることを知りました。「これはアカデミーで学ぶしかないでしょ!」と、すぐにそのカリキュラムを受講することに決めました。現地にわたって実物を見てみると、竹の施設はおしゃれでとてもスタイリッシュ。衝撃でした!
 
 そのアカデミーには、世界各地から竹の建築に興味がある人達が集まってくるんです。受講内容は、一か月間竹の伐採の仕方や、竹が腐らないように加工する方法など、現地でしか学べない生きた知識を得ることができました。その中には、実際に建物を作る研修プログラムもありました。興味深いでしょう?
 
無事、その講座を受講し修了し帰国。竹建築に関する資格を取得することができました。英語を話すことができる娘と一緒に行っていたので、いろいろと学ぶことができました。
 
 最初にお話しした学校の誘致については、まだまだ先になりそうですが、この竹を使った環境問題の解決の話についてはすぐに実現したい、受講を終えるとその思いは一層強くなりました。
 
 研修を受けた中で、おもしろい話があるんです。研修プログラムに入った際、冒頭のあいさつがあったのですが、
“竹”と言ったら、「日本の竹取物語」が有名です、との発言があったんです!ここで日本、さらに竹取物語の話が出てくるなんて!と、とても驚きました。
 
 海外ではバンブーと呼ばれる竹。この竹と「竹取物語」とを絡めたブランディングして、北茨城市から世界へ発信すればいいんじゃない?との発想がその時、ぱっと脳裏に浮かんできたんです!

 事実として、インドネシアの海は美しいとみなさん知っていますよね。そこが旅行に行く目的となりえます。世界有数の観光地と、肩を並べ、数ある観光地の中から日本、さらに北茨城市を選んでもらうためには、プラスして何かの魅力が必要だと考えています。
 
 これらの点を踏まえ、考えたことがあります。この地で竹建築の知識を宿泊しながら学んでもらい、資格取得まで可能なプランを作りたい。今後このプログラム作りにチャレンジしていきたいとおもいます。

 いろんな物事も同じですが、うまくいくかわからないけど、やってみるしかないと思っています。そこに放置されている竹がたくさんあるから!!!
 
― すぐに海外のアカデミーに学びに行く、行動力がすごいですね!それに、バリで日本の竹取物語の話を聞けるなんて!日本にも竹を使用した建築物はあるのでしょうか。

 そうなんです。それで日本では竹を使った建物が建てられているのだろうかと探してみたところ、見つけたんです!

 東日本大震災で津波の被害にあってしまった宮城県気仙沼市の会所を、竹で建てようという取り組みが実際にありまして、そのプロジェクトに関わっている、近畿地方にある大学で竹の研究をしているという教授に会いに行きました。有難いことにその大学とタイアップすることができることになり、現在、高萩市の高戸小浜海岸に合同で竹をコンセプトにしたグランピング施設の建築を進めているところです。

 ここから200m先の北茨城市の海岸も同じく竹の施設を作っていますが、高戸小浜海岸ではすでに工事が始まっています。合わせて2棟分です。地権者の方に建築に対する熱い思い伝えたところ土地を貸してもらえることになり、竹をコンセプトにしたグランピング施設を建てられることになりました。今年7月に建つ予定です。そのために最近は打合せを重ねています。

グランピング施設の少し先竹のグランピング施設を建設予定。

 この辺の海岸は何キロも防風林なんですが、もしかしたらずっと向こうまで砂浜にしたら、みんな来てくれるようになるかもしれない、なんて考えたりします。国内にはたくさん人気の海沿いにある観光地がありますが、茨城の海の魅力は他と比べても遜色は無いと思っています。

 高戸小浜海岸に最近行った際、外国人のモデルの方が撮影していて、スタッフもみんなフランス人。本人だけでなく海外の方にも絶景と感じてもらえる場所だと改めて感じました。グランピング施設を作ったりするのは一つの手段ですが、なんとか、高戸小浜海岸を「バズらせたい」んです!

VOL3 「人生に抗っていけ!」これからの盧さんの夢とは?

長年経営に携わってきて最近思うことがあります。

若い時は、“志と熱意”だけでついてきてくれる人がいて、ここまでくることができましたが、これからは経営者として様々な課題を乗り越えていくために、”学びの必要性”を強く感じています。私には現在約80名の多くのスタッフが働いてくれていることへの、経営者としての責任があります。

 実は、韓国で13年前から、老人ホームデイサービス施設を経営しています。韓国語で「ウリハンケ」、日本語に直訳すると「一緒に」という意味の施設です。きっかけは、祖国である韓国の介護についての様々な問題を知ったこと。今まで韓国を支えてきてくれた方々だからこそ、大事にしなくてはいけないと思い、介護のシステムを変えたいと思いました。私は全く介護の経験がなかったので、まず日本のフランチャイズで働き、介護を学びました。 

 施設では、健康寿命を増やすために、運動プログラムを作って運動をサポートしています。私は元体育の教師なので、健康であるために運動の大切さは知っています。このプログラムを実行したら歩けなかった人が元気になっていき、さらに歩けるようになったんです!!これは本当に驚きでした!「健康プログラムとおもてなしの心」が施設の特徴です。

今までやったことがない経験、新たな学びにチャレンジしたことで、韓国での介護事業を始めることができました。

- 新たに学び知識を得たことで、韓国で介護施設を始められたとは驚きました。国内外で経営者として活躍される盧さんの今後の「思い」について教えてください。

 大前提として、「家族に恥じることのない生き方をしたい」と考えています。働いてくれるスタッフや、周りのみんなが幸せになることを常に大事にしていて、それによりさらに地域貢献に繋がればいいと思っています。官民が協力して県北地域を盛り上げていけること、強く思っています。

 さらに私の祖国、韓国と日本の架け橋になりたいとも思っています。今たくさんの人が韓国から茨城に来ています。私の好きな茨城をたくさんの韓国の方に見てもらいたいし、また私の好きな韓国を日本に紹介したいと考えています。

 大事にしている言葉、「抗え」って言葉だけでは十分に伝わらない。
なにか目標を決め、恐れることなくチャレンジしていく、成果を残すためには、一つ一つ実績を積み上げて、周りの信頼を得ていくことでしかないと思っています。


子供たちに常に挑戦し続ける父親の姿を見せていきたいという盧さん。

 これからも民間でできることをやっていきたいです。県北地域の人たち、みんなで一丸となってこの地域を盛り上げていきたいと本気で思っています!  

「人生に抗ってこう!!」盧さんの熱い思いを込めた挑戦はこれからも続きます!