銀髪にしてみて

銀髪にした。
ヘアカラーの候補はブルーシルバーとメタリックシルバーの2つがあって、比較的前者の方がアッシュっぽい感じで、巷に馴染みやすそうな感じだったけれど、ドン・キホーテで立ち尽くして悩んだ結果、後者をおれは選んだ。
違う、選ばされたのだ。ドンキという空間がメタリックシルバーをおれに強制してきた。なんとなくわかる気もしないか?
1度銀色にしてみたいなと思っていた。
今までもちろん何度か髪を染めたことはある。はじめはブリーチが怖かったけれど、ブリーチ剤を使わずとも結局ヘアカラー剤にその成分がいくらか含まれていると知ってからはあまり躊躇わないようになった。
 でも染めた後はがっかりしたことしかなかった。汚い色だな、おれの顔 の汚さと悪魔的なマリアージュだなとか感じていた。それは誇張だけど、黒染めを使って無理やり染め直したことはある。
 地毛が好きじゃない。日本人の髪は赤みが出やすいとよく言うけれど、おれの髪は特にそうだ。陽に当たるとときたま赤銅色に輝くことすらある。熱血キャラは好きじゃないのに。
 そう、高2病、大2病を終え、2週目の中二病に今おれは罹患しつつある。
 あの頃なれなかったクールキャラになりたい。
 恥じらいに鈍感になったのだ、14から10年経って。
 
 とはいえすぐに染めることにはならなかった。
 諸事情あって、引っ越した家ではガスが止まっており、ガス会社の人に一度来てもらう必要があった。その手続きを放置していた。
 
 2月終わりの、冬の残り物を詰めこんだような厳しい寒さの日。
 髪がどんどん褪せて汚らしい茶になっていくのが我慢の限界を超えて。
 冷水シャワーでの染髪をおれを決意した。
 「筆舌に尽くしがたい」苦痛だったと書いてしまうことは物書きのはしくれとしてあってはならないことだ。描写を試みてみよう。
 まず、おれはビビりであるので、今回ブリーチは一回だけで終わらせようと計画した、通常ハイトーンカラーには2回以上のブリーチが必要とされるが、3週間前にもブリーチをしたため、それで大丈夫だろうと思っていた。
 髪に冷水を何度浴びせなければならないのか。付属のシャンプーやトリートメントの数からその必要数をあらかじめ目算しておくことは出来ただろう。
 しかししなかった。それは英断だったと今になっては思う。多分知ってしまっては震えていた。恐怖に、そして予感できる冷たさに。
 ・・・意外と大丈夫だった。最初の方は特に。どうやら普段から頭をうんうん言わせているから熱を持っていたんじゃないだろうか。最後の方はちょっと、頭痛を覚えて中断したこともあったけど、まあ後日には引きずらなかった。
 
 銀髪で送る生活は楽しい。
 さして都会でもないから、多分この街に銀髪は自分ひとりしかいない。
 多分顔とか覚えられちゃってるだろう。
 影の実力者だったが、とうとうスポットライトに照らされる時期が来たみたいだ・・・

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