見出し画像

渡辺一樹選手インタビュー①〜全日本ロードレース選手権について〜

※はじめに:このインタビューの動画をYouTubeにアップしております。ぜひそちらもご覧ください!


渡辺一樹選手Twitter: https://twitter.com/kazuki__26
渡辺一樹選手instagram: https://www.instagram.com/kazuki__26

MFJ全日本ロードレース選手権オフィシャルサイト: https://www.superbike.jp/
MFJ SUPERBIKEチャンネル: https://www.youtube.com/user/MFJSUPERBIKE
BS12: https://www.twellv.co.jp/program/sports/tvmoto_channel/
全日本SUGOラウンド: https://www.sportsland-sugo.co.jp/watch/1303/


こんにちは、Ami.Uです!


この記事は主に日本国内のレースでご活躍されているヨシムラスズキモチュールレーシングの渡辺一樹選手にインタビューさせていただいた内容を文字起こししたものです。
大変お忙しい中、このようなインタビューに快く応じてくださった渡辺一樹選手、マネージャー様、本当にありがとうございました。

このインタビューは

全日本ロードレース選手権について(今回)

鈴鹿8耐について

ヨシムラスズキモチュールレーシングについて

渡辺一樹選手について

の4弾に分けて公開させていただきます。

今回はその第一弾、「全日本ロードレース選手権について」。8月9日に、スポーツランドSUGOで2020年シーズンの開幕戦を迎える全日本ロードレース選手権について、魅力や楽しみ方を教えていただきました。
全日本のレースに行ったことがない方にも、全日本ファンの方にも楽しんでいただける内容だと思います。


1.全日本ロードレース選手権はどのようなレースなのですか?

 日本の最高峰、というところがまず最初に来る言葉にはなるのですが、ロードレース、バイクの、いわゆる舗装路、そして周回を使うレースの中で日本最速を決めるレースですね。歴史としては本当に古くて、全日本ロードレースとしては1962年から開催し続けています。今まで世界チャンピオンを取ったライダーも何人もいますし、レベルとしてすごい高い次元でレースをしている選手権だと思います。



2.全日本ロードレース選手権の魅力を教えてください。

 今年、2020年のレースというのは本当に注目することが多いシーズンになると思います。JSB(注1)、というところがまず最高峰に来るのですが、今年はホンダの高橋巧選手(注2)がSBK(注3)にステップアップしました。なのでヤマハのファクトリーチーム(注4)の二人、中須賀選手と野佐根選手というのがまず一番強いチームになります。それに対して自分も含めて他のメーカー、他のチームがどこまで対抗できるのか、勝てるのか、というのがまず一つのところかな、と思います。

 他のクラスも、ST1000(注5)が今年始まるということでそこはすごい自分としても注目したいなというところですね。マシン差がより拮抗してくるんじゃないかな。まずタイヤがワンメイクになるし、非常に改造範囲が狭いクラスになります。なのでちょっと今までと構図が変わってきてどのライダーが実際強いのかが始まってみないと見えてこないので、そういう意味で楽しみなレースが多いかな、と思います。

注1:国内外の最新リッターバイクで競われるクラス。

注2:2019年シーズンJSBクラスランキング2位のホンダのライダー。

注3:スーパーバイク世界選手権。市販車を使用したロードレースの世界最高峰のレース。

注4:メーカーが直接運営を行うチーム。メーカーによる手厚いサポートを受ける(↔︎プライベートチーム/プライベーター)。

注5:リッタースーパースポーツのバイクによって競われるクラス。JSB1000より改造範囲が狭く、より市販車の状態に近い。



3.全日本のレースは何で、どこで見れるのですか?

 やっぱり現場に来てというか、レースをやっているその場で見てもらうのが一番オススメする方法ではあります。でも全国各地必ずしも交通の便がいいところにサーキットがあるわけではないので、なかなかいけないという方は、オンラインでMFJライブチャンネルhttps://www.youtube.com/user/MFJSUPERBIKE )というのがあって、そのライブ配信でリアルタイムで見ることができます。BS12https://www.twellv.co.jp/program/sports/tvmoto_channel/ )でダイジェストにもなるのでテレビでも見れる形になっています。まあ生で見てもらえるのがおすすめです。

Q.生で見ることと映像で見ることの違いというのは何だと思いますか?

 5感を使って楽しめる、というのはすごく大きな差だと思います。音とかはパッと思いつく違いだと思いますが、匂いとか、空気が振動する、もはや触覚の部分なのですが、本当にそういう違いが現場に来ると感じられると思いますし、本当にそこは来てみないとわからないので、ぜひサーキットに足を運んでみてもらえたらな、と思います。



4.どうやったらレースに出られるのですか?

 どんなレースか、というところによるのですが、出ようと思えばお遊び、楽しむだけのレースはたくさんあるので、非常にハードルは低いです。

 ただ、全日本ロードレースは当然日本の最高峰のレースなので、それに出るためには、まずMFJのライセンスを取る必要があります。今だとまず一番最初に取れるライセンスがジュニアライセンスで、それ自体はそこまでハードルは高くないです。次に国内ライセンス、国際ライセンスと続いて、それぞれレースでの結果などある程度の基準を満たせばライセンスを発行してもらえる形になりますね。そしてこの国際ライセンスがあると、全日本ロードレースに出場することができます。

Q.ライセンス以外の面ではどうなりますか?

 ただ出るだけであれば、ライセンスがあれば大丈夫です。でも当然そこらへんで走っているバイクで出るわけにもいかないですし、バイクをちゃんとレギュレーションに合致した状態にしなければいけないだとか、本当に色々な条件があります。なのでもしそういうレースをしたい、という方がいるのであれば、レースを実際にやっているチーム、それこそ全日本ロードレースのエントリーリストを見てチームの名前を検索してみて、「このお店近所にある」というのがあれば、ぜひそのお店に電話するなり、直接伺うなりして「レースをするためにはどうしたらいいんですか?」と聞いてみるのが最短距離かな、と思います。



5.全日本のレース車両は市販車からどの部分を変えるのですか?

 これはクラスによって色々違います。まずJSB1000クラスは普通に売っている1000ccの、いわゆるスーパースポーツというジャンルに区分けされるバイクがベースなのですが、非常に改造範囲が広いです。タイヤが2つ付いているというのは変わりませんが、本当にそれ以外はほぼ全部変わっていると言っていいくらいです。エンジンの中やフレームなどはノーマルのものを当然使わなければいけませんが、それを補強することができたり、スイングアームと言われるリアタイヤを支えている部分の変更ができたりと、非常にコストのかかったバイクが走っているのがJSBクラスですね。コストのかかりすぎを抑止するために買い取り制度(注1)なんかもあったりしますが、これを見ている皆さんがバイク屋さんに行って「これ買えますか?」と言えるバイクではないのがJSBクラスです。本当に世界的に見ても市販車をベースにするレースの中では最速と言っていいクラスだと思います。

 逆にそのクラスと対照的なのがST1000というクラスですね。STというのはストックの略なのですが、本当にぱっと見バイク屋さんに置いてあるバイクと全く同じです。タイヤに関してはワンメイクレースなのでスリックタイヤを、「このタイヤを使いなさい」というのが決まっているのですが、ブレーキも変えちゃダメだし…。外装は当然ライトやウインカーは外してレース用にカウルはつけるのですが。あとは違いがパッと見でわかるのはマフラーくらいです。もちろん細かい部分で言えば売っているバイクと違う部分はありますが、スーパースポーツのバイクに乗っている人であれば、本当にそのままレースに出ていると言ってもいいくらいのバイクなので、そういう意味で身近に感じられるクラスかなとは思います。ST600も同じような感じですね。

 GP3というクラスに関しては、排気量が250ccと決まっていますが、そこが自由度としては一番広い。国内のレースだと唯一純粋なレーシングマシンが走るクラスなので、改造範囲としてはすごく広いです。ただ、今現状だとほぼみんな同じようなバイクに乗ってレースをしているので、そういう意味では若いライダーとベテランが純粋にぶつかり合うクラスなので、見ていて面白いクラスではあります。

注1:上位6位に入賞した車両の一部部品は、購入希望者(同レース参加者のみ)がいればレース後に販売しなければならない。

Q.JSBクラスのマシンだと大体どのくらいの値段がかかるのでしょうか?

 僕も正直具体的な値段は知りたいような知りたくないような…度々クシャクシャにしているので。金額的にいうと、いわゆるファクトリーバイクみたいなクラスのバイクだとお家が買えちゃうくらい、という話はよく聞きますね。ただ、いわゆるプライベーターチームというのはそこらへんをすごく工夫してやっているので、必ずしもそこまでコストをかけずとも、トップに近いような性能を発揮しているチームもありますね。ファクトリーチームというのはメーカーがほぼダイレクトに運営しているチームなので、個人が数千万するようなバイクをなかなか買うわけにはいきませんが、そうではないことが大半なので。



6.全日本ロードレース選手権の楽しみ方を教えてください。

 楽しみ方という意味では、レースで誰が走っているかわからない状態だと、右から来て左に走り抜けていくだけ、みたいな感じになってしまうので、一番最初のステップとして、「このチーム、このライダーを応援する」みたいなものを決めてもらう、というのがまず一歩目かなと思います。例えば普段スズキのバイクに乗っています、という人であればスズキのバイクを実際に使っているチーム、それこそヨシムラもそうですが、それ以外にもスズキユーザーのチームはたくさんあります。なので「あのチームを今回応援してみよう」というのを決めてサーキットに来てもらう、レースを見てもらうのがいいかなと思います。

 サーキットではレース以外にも各4メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)がブースを出してその時の最新のモデルを展示したり、ライダーのよりパーソナルな部分を知れるようなステージとかもやっていたりします。なので現場にただ来れば楽しめる、とはなかなか現状言えませんが、もし近くにレースを見ている人、観戦をしたことがある人がいればそういう人たちと一緒に「あそこに行くと楽しいよ」だとか教えてもらいながら行くのがいいかな、と思います。



7.メーカーによるマシンの違いはどのような点に現れるのですか?

 改造範囲がとても広いとは言いましたが、それでもベースのバイクの特性というのは簡単に変わるものではないので、売っているバイクの性能はとても大事です。ごく一般的に言われていることだとスズキのバイクは丸い、ヤマハはコーナリングマシン、ホンダは直線が速い、などいろいろありますが、サーキットでコーナー1つ見ていてその差を見分けるのは、本当にベテランになってこないとなかなか難しいと思います。ただ、音が違うとか、難しいですが走っている場所が違うとか、いろいろな差があります。乗っている側からすると本当に同じ乗り物なのか、というくらい差がある部分ではあります。

Q.同じライダーでもマシンが変わると乗り方も変わるのでしょうか?

 そうですね、僕自身が本当にそうでした。某緑色のメーカーから今赤色になっていますが、ライダーは感覚を大事にしているので、乗っているものが変わるとそういうものが少しずつずれていきます。完全に外れるわけではないですが、ずれているのを少しずつ修正していくと、気がつくと乗り方が変わっているみたいな感じです。

Q.最初は同じように乗ろうとして、「ちょっと違うな」とだんだん変えていくような感じでしょうか?

 僕は最初から「同じように乗れないな」と思いながら走り始めました。良くも悪くも「なんだこりゃ」って感じでした。本当にメーカーによって非常に違いますね。もしかするとレースバイクはなおさらなのかもしれません。売っているバイクはいろいろな人が乗ることを想定して売り出されているバイクです。しかし、レースになると、バイクのモデルが変わらない限りは、あるチームのあるライダーが走って今まで作ってきたバイクに自分が移籍してきて、ベースとしてはそこからスタートするというパターンが多いです。その人が一生懸命研いでいった尖った部分に突然形と向きを変えて合わせなければいけないので、簡単ではないです。でも、逆にやりがいがある部分でもあります。

Q.適応するのに時間はかかりますか?

 ライダーによると思います。ライダーとメーカーとのいわゆる相性のような部分ですね。MotoGPでも時折そんな話があります。やはりそれぞれが持っているライディングスタイルというのがあるので、それと180度反対側の特性を持ったバイクというと難しく感じてなかなかアジャストできない、ということもあると思います。

Q.ではライダーによってもメーカーが違うと適応するまでの時間が異なることもあるのですか?

 ありますね、度々そういう話は聞きます。バイク自体もそうですし、それこそタイヤメーカーとかも、唯一地面と接地している部分でもあるので、そういうところも、ライダーとマシンのマッチングに関わってくる部分でもあります。



8.全日本が開催されるサーキットの面白い観戦スポットを教えてください。

 レースを見慣れている方であれば各コーナーに行くことがあると思うのですが、初めての人は多分どこに行っていいのかわからないと思います。そういった人はまずグランドスタンドと呼ばれる一番情報が集約されているとも言える場所、目の前にモニターがあったり、場内のアナウンスが聞きやすかったりと環境として非常に整った場所で見てもらうのが一番だと思います。

 各サーキットでいうとそれぞれあって一つ一つ挙げていくととても時間がかかってしまうので、次戦のSUGOでいうと、山の中なので見れる場所が限られていますが、自分なら1コーナーで見ますね。ホームストレートを登ってきた1コーナー。みんなだと見る場所的にはグランドスタンドになるのでしょうか。

 あと3コーナーの外側に少し高台になっていて見やすい場所があります。2コーナーを抜けたあたりからその次の4コーナーを過ぎて登ってハイポイントと呼ばれるコーナーまで、そこだと割と長い時間様子が見れます。関係者も見にくる場所なので、そこにいると、レース中、予選中、練習走行中は有名なライダーに会えるかもしれない、という場所ですね。気がつくと横に伊藤真一(注1)さんがいるとか、中須賀さんがいるとか。割とありますね。僕自身もよく他のクラスを見に行くのですが、結果世間話しているという状況になることが多々あるので。他のライダーとかチームの関係者に会えるという意味でも、3コーナーも一つありかなと思います。

注1:WGP(MotoGP)へのフル参戦、鈴鹿8耐の優勝、全日本JSB1000チャンピオン獲得などの経験を持つベテランライダー。今季は監督として全日本に参戦。



9.レースで日本の各地に行く時、レース以外に楽しみにしていることはありますか?

 レースウィークになると本当にレースのことしか考えていないので、それ以外の行動が必要最低限になってしまうことが多いのですが、逆にテストとかテストの搬入日は比較的時間に余裕があることが多いので、その日の晩御飯何食べようとか。色々な場所に行くのでその土地の何が美味しいだろう、というのを、さすがに生ものなどを走る直前に食べるのはハードルが高いのですが、それ以外、制限に合致しないところであれば食べたいものを食べるのが楽しみかな、というのはあります。所属しているチームで行きつけのお店が決まっていたりもします。そういう意味ではチームを移籍すると「あ、こんなところにこんなお店あったんだ」みたいなこともたまにあります。僕は元いたチームが九州、オートポリスでメインとして走り込んでいるチームだったのですが、オートポリスの周りに温泉があるんですよ。僕はそういうのには詳しいわけではないですが、感動する温泉があったりして…。まあ、どこ、と教えるとそこで会いそうなのであまり言いませんが、そういう面白さもあったりします。見るお客さんにとっては、サーキット以外の楽しさというところの割合も当然増えると思うので、ぜひそういうのも行く前に探して、できればレース以外にも時間の余裕を持って遊びにいってもらえるのがいいかな、と思います。



10.サーキットで見かけたら声をかけてもいいのでしょうか?

 僕は全然気にしないです。あと10分でコースイン、というタイミングで声かけられると「どうしよう」となってしまう時はありますが、基本僕が外でぷらぷらしているときは時間を持て余しているときなので、声をかけていただいて全然平気だと思います。大体何かしたいことがあるとか、どこかに向かっている時は小走りになっているので、「急いでそうだな」と思ったらそっとスルーしていただければいいかなと。でもそれ以外、あっち向いたりこっち向いたりしているときはだいたい暇なので声をかけてもらえば、対応できると思います。

Q.それではタイミングと様子を見はからえば大丈夫でしょうか?

 タイムスケジュールを見ながら、ではないですが…。どのサーキットでも、そのライダーのファンから「どのタイミングで行けば会えるんですか?」という話がされることがあって。タイスケを見ながら、もし自分がライダーだったらどのタイミングで何をする、というのをシミュレーションしてもらうと、また違った楽しみ方ができるかな、と思います。



11.全日本ロードレース選手権が今抱えている課題はありますか?

 僕個人的にはより多くの人に知ってもらいたいという目線があるので、そういう意味で、現場でもオンライン配信でもよりわかりやすく、初めて、パッと見ても楽しんでもらえるような環境づくり、というのはこれからもう少し力を入れてやるべきなのかな、と思います。自分一人がそれをやってどうにかなるものではないので、いろいろな人に声をかけながら協力をしてやらないといけないとは思います。でも僕らはレースをする側なので、観客側の目線を持っている方がそんなに多くないと思います。そういった意味では見てもらっているファンの方からも「ここをもっとこうしてほしい」みたいな要望を出してもらうというのも、僕としてはぜひやってほしいかな、といいうところではあります。不満に思ったことでいいので。例えばトイレが近くにないとかそういう小さなことの積み重ねなので、そこで不満に思ったことを、「ここにこれがあったらな」みたいな声を上げてもらえると嬉しいかな、と思います。

Q.その声はどこに届ければ良いのでしょうか?

 MFJオンラインマガジンの方には問い合わせ窓口があります。MFJのファンサイトからリンクが飛んでいます。( https://www.superbike.jp/ )MFJオンラインマガジンに「問い合わせ」という項目がページの一番下にあるので、僕が全く関係なく丸投げしている感が若干出ますが、そういうところから声を上げてもらうというのも。あとはSNSでもそういう声をあげるとかでもいいと思います。全日本は今だと一番多いハッシュタグが#JRRだと思います。このハッシュタグをつけて「ここをこうしたらどうだろうか」など意見があればあげてもらえれば、色々な人の目につくと思うので、そうしてもらえたらなと思います。










よろしければサポートをよろしくお願い致します。いただいたサポートはよりよい記事を書くために使わせていただきます!