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12月27日[日報] 三軒の居留守 〈3シリーズ〉(実話)

あの母が、夜毎、楽しげに讃美歌を口ずさむ様子は以前にもお伝えしたとおりです(「インポスターの啓示」)。タケウチの父である、彼女の旦那への仕打ちを正当化するものでした。

(いずれ、現在、父の眠る墓についても私は語るべきでしょう。)

私は、母による、そういった言動を “事件” 後も確認しています。

昨年、実家を離れたのちに、初めてご近所へご挨拶した際のことです。創業九十年の 中野屋 のお菓子をたずさえてうかがいました。なにしろ、私を幼い頃よりご存知の方も多くいらっしゃる場所です。

「夕日ヶ丘」の名前のとおり、丘の西側の斜面に位置する地域です。夕暮れ時に、見知らぬ方が三脚に乗った立派なカメラで撮影なさる姿をよく見かけました。

久方ぶりに、私の顔をご覧になり、喜んでくださる方がほとんどでした。

その一方で、気になったのは、母の転居先を私に訊ねる方の多くいらした事です。長きに渡り、私たち家族と懇意であったにも関わらず、母は、彼女の引越し先であるサービス付き高齢者住宅の住所を伝えていないのです。

また、明らかに居留守と思われるお宅が、三軒ありました。

私はこれらのお宅が居留守であった理由を、あの母によるものだと、すぐに気付きます。次の理由によるものに相違ありません。

お隣のKさんご夫婦ですが、二人のお子さんがいらっしゃいます。下のお嬢様は、姉の一つ年下です。小学校まで、姉と同じ地元のクラシックバレー教習に通っていらっしゃいます。

私は、昨年、母に指摘しておりました。Kさんの奥様が、我が家に差し入れを下さるタイミングのことです。

決まって、母が家族の誰かに怒声をあげたその直後か、翌日なのです。

恒例行事となっていたことから、私も気付かずにおりました。私たち姉弟が幼い頃からであったに違いありません。

大声で罵倒される対象は、彼女の夫である私の父のこともあれば、娘である姉や、息子である私の場合もありました。とにかく、不都合があると身内の誰かしらのせいにするのが、あの母です。

それでいて、世間体を取り繕うのです。なかなか他人には分からないものでした。

これは祖父譲りでしょう。幼稚園の経営者として強引なふるまいが見られた様子がうかがえました。父からもいくつかのエピソードを聞いています。

昨年まで、私は、言われたものです。

「頭のいいお父様と、品のいいお母様の息子さん」と。

恐らく、母は、先手を打ったに違いありません。

次は、私たちの両親とほぼ同じ時期に夕日ヶ丘へいらしたご夫妻です。

かつては、ご主人のご両親がお隣に住んでいらしゃいました。ご主人は、お二人の息子さんたちと今でも仲良くなさっております。彼らと野球の試合に出場なさります。しかも同じチームで。

なんでも、お隣のご両親のお宅からは、富士山が見えるそうです。今は亡きご両親が、富士山を拝んでいらした様子を聞かせて下さりました。

町田市内でも、山の谷間から富士山の見える場所があります。薬師池公園より少し北でタケウチも見たことがございます。近くのアパート名に”富士見”と付いていた記憶があります。

この家の奥さまは、昨年、実家の庭を見にいらっしゃいました。母に招かれて。

この庭は、玄関の裏に位置します。撮影用のドローンを格納していたと思われる倉庫もこの庭にありました。来訪者の目に付かないことからも、好都合だったに違いありません。振り返ると、Uber Eats による宅配をあの母が嫌がった理由も撮影機器の存在によるものでしょう。

それまで、我が家の庭をご覧になることのなかった奥さまは、非常に喜ばれた様子でした。母が自慢する花もご覧下さいます。

ところが、その奥さまの去った直後、母が言うのです。息子の私に向かって。

「以前、建ぺい率の事でケチを付けられたから、見せつけてやった。」と。

それも、恐ろしい形相で。

夕日ヶ丘が西側の斜面であることは、先にも記した通りです。建物が斜面にあることから、実家の玄関は道路より階段を上がったところにあります。時代や地域によって、こういった建物は、建蔽率に制限がある模様です。

(この建物は、町高生の渡辺くんや、浅井くん、最近では粕谷くんご夫妻もご覧になっています。)

そういったことから、実家の建物も誰かしらにその建ぺい率を疑問視された可能性もございます。しかしながら、この奥様も旦那様も、更に今は亡きご両親も、私たち家族には親しく接して下さっています。

相手が誰であろうと、悪意を持った視線で見てしまうのが、あの母でした。

お気付きのとおり、これも、タケウチが、精神的障害を彼女に疑った理由の一つです。父も彼女を精神科医にかからせようとしています。

三つ目は、私の実家から丘の峰にある道路へ向かう途中のかなり古いお宅です。お年を召した姉妹がお二人で暮らしていらっしゃいます。

このお婆さんたちは、本当に優しい方々でした。タケウチも近所に住む外国人に「Super kind ◯◯ san」と説明したくらいです。

お向かいの犬は、けたたましく吠えることで、あの界隈ではちょっとした有名“犬”でした。ところが、このお婆さま、私に吠える犬のことを、こう仰るのです。

「あら〜、あの子、あなたが来て喜んでるのよ〜!」と。

“やさしい”ことでは、誰にも負けないはずのタケウチもこれには絶句いたします。

また、お婆さんは、病気の息子を抱える母のためにおかずを差し入れしてくださったこともございました。

話しによると、お父様は大手損害保険会社の役員でいらしたそうです。選挙活動の手伝いもなさったことがある、とお聞きして、市議選を控えた地元の大学の後輩にもこの話をするか迷ったタケウチでした。

これらの逸話は、勿論、あの母にも伝えております。となると、このお婆さま姉妹を味方につけることは、母にしてみれば、“必須” でしょう。

この三軒の方々だけに語ったに違いありません。

「息子は盗みを働いていたんです!」

もちろん、撮影機器や借用書の件を隠したまま。

※あの母にまつわる恐ろしいエピソードは、数限りなくございます。今後、定休日以外にもお付き合い頂く可能性もありますが、ご容赦ください。もっとも、この日報読みたさに、アサノでのアルバイトを希望なさる方が続出しているという噂もうかがっています。

私が Super kind ◯◯ san の話をして差し上げた実家近所のスペイン人 A さんより。

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事件の背景や、地元町田市の話題。まだ【役割】を分かっていなかった頃の私でしたが、中野屋や薬師池が登場する、なかなかの作品に違いありません。※もちろん、実話です。


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