2023年11月18日 [日報] ケンボウの悲劇
🗒️ 叔父について語っております。🗒️
哀れであることが、自分で分からないぐらい、哀れな男。それが、座間市に住むタケウチの叔父、ケンボウです。
ケンボウは、タケウチの父であるイチオと同じ大学を卒業しています。イチオと違い、卒業した学校には勤めず公立の小学校の教諭となります。
彼は、座間市出身の妻との間に娘をひとりもうけました。
呼吸器が弱いタケウチ家ですが、ケンボウの娘も幼い頃、喘息に悩まされました。深夜に大学病院へ担ぎ込まれることも頻繁にあったといいます。
ケンボウの家族は、タケウチの両親に助けを求めることもありました。ところが、特にタケウチの母であるチズルはそれを嫌がります。
イチオがまさに出世街道を突き進んでいた頃です。チズルは自身が “贅沢” することを邪魔されたくなかったのでしょう。
ケンボウが、三十代半ばの頃、彼の一家はとある宗教に入信します。妻の親戚のすすめによるものでした。
昨年の ”事件” の後、タケウチはケンボウ夫婦に助けを求めています。しかしながら、彼らはタケウチを見捨てます。
その際、ケンボウの妻であるタケウチの叔母は、タケウチに悪態をつきました。
その宗教の教えは、“親の罪をその子供が償う”というものなのです。つまり、タケウチの母から、散々、コケにされた叔母はその怒りをタケウチにぶつけた訳です。
また、タケウチの父の故郷ではトライアスロン大会も開催されるようになり、タケウチもそれに出場していました。ケンボウ夫婦がそれを楽しく思うはずがありません。
タケウチの従姉妹であるケンボウの娘は同じ宗教を信仰する男性と結婚しています。
その従姉妹ですが、ケンボウによると、今はその宗教を信仰していないといいます。
従姉妹夫婦は、座間市から遠く離れた台東区に住みます。ダンス甲子園に憧れる中学生の女の子は高校受験を控えているそうです。
タケウチは、ケンボウと話していて気付いたことがありました。
問題や課題をその宗教の教えのみに基づいて解釈することから、まるで解決に繋がらないのです。
それでもなお、叔父のケンボウがその教えを広めることに夢中であることには理由があります。
小学校の校長としてそのキャリアを終えた叔父です。他人から頭を下げて貰える “快感” を忘れられずにいるのです。
タケウチはケンボウの娘であるミキちゃんの結婚について、ケンボウにたずねます。
「ミキちゃんが、同じ宗教の男性と結婚した本当の理由、オッチャンは考えたことあるか?」
ケンボウは、ただ、キョトンとするばかりでした。
タケウチの入居するマンションには、丸田さんという管理人の女性がいます。丸田さんは、高知のご出身です。父が隣の徳島出身であることからはずみ、タケウチは何かと丸田さんと立ち話をしていました。
丸田さんのご実家は、カツオ漁に出る漁船のために包丁をつくっていたそうです。沖でとれたカツオを船上で捌き、腑を海に捨てます。そうやって積荷を減らすわけです。
タケウチの父の実家がある漁村には水産高校があります。その文化祭では、カツオがまるごと一本教室にぶらさげてあると、タケウチは徳島の従姉妹から聞きました。
言ってみれば、他校の女子生徒へのアピールでしょう。
お掃除好きな丸田さんですが、マンションのゴミ集積所でスカスカのゴミ袋を見つけると、プライバシーお構いなしに中身を出してまとめてしまいます。そして余った自治体指定のゴミ袋は丁寧畳んでストックされるわけです。タケウチもしばらくは、丸田さんと世間話したさに "たかって" おりました。*1
しかしながら、独り身の丸田さんが、個人情報云々を理由に仕事を失うことをタケウチも危惧します。やはり同じマンションで高知ご出身の大添さんと一緒に丸田さんを説得してゴミ整理を断念させた次第です。
そんな風に仲良しになった丸田さんに、タケウチは先の叔父の話を打ち明けます。
人生の先輩は「校長なんて、そんなもんよ」の一言で片付けてしまいます。そんな丸田さんに敬服したタケウチは、病気が治り次第、老舗店にお連れすると心に誓います。
綺麗好な丸田さんですが、旦那には悪態ばかりついていたとのちに打ち明けて下さった次第です。
🍛
タケウチの物語では「喘息」もパワーワードです。
*1 生活保護暮らしとなったタケウチが、再度、丸田さんにたかっていることはご内密に願います。
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