チカンで知った現実 その1

私は高校生の頃、二度だけチカンに遭遇した事がある。

当時はコギャル、ミニスカート、ルーズソックスの時代全盛期。にもかかわらず私はそれをしなかった。
理由は簡単で、全く似合わなかったから。
背は低いし身体は太い、おまけにボケた顔では着る勇気もなかった。
だからずっと膝丈スカート、紺の中途半端丈ソックス、斜め掛けバックにマッシュルームカットでお洒落さんを装い、本体のレベルの低さを隠していた。

3年の夏休みにプールの補習で学校に行かねばならなくなったとき、私は夏の力と休みで空いてる電車の力を借りて1日だけ女子高生ルックにした事がある。
驚く事にこの日だけ行きも帰りも痴漢にあった。なんて単純なんだろうか。

これの他にもう一度、今度はノーマルモードの時に遭遇した。最初は嘘でしょ?と思った。駅で止まるごとに手を離す感触があって確信した私は、ターミナル駅手前で触れる手を掴み「何してんですか?」と手の主に説いた。

実は触れられてる間、私の頭には正義のヒーローが描かれていた。
『勇敢な女子高生、痴漢を撃退!』
そして新聞に大きく記事が出る!

…そんなお花畑脳だったので捕まえてみようと思って手を掴んでしまった。

「この人チカンです!!!」そう言った私の手を振り払い逃げようとする男。ターミナル駅で人が降りた事でみんなの前で(ドア横座席前あたり)引っ張り合いが露呈する。

「誰か助けて下さい!!お願いしますチカンなんです!!」
と言う私の方を見るだけの全員の目。忘れないな、多分ずっと。あの冷たい視線。
誰も何もしてくれない。誰一人も動かない。こんな事やらなければよかったとそこで初めて後悔が生まれた。
他人なんてそんなもんなんだって、当時は思いもしなかったから。

「助けて!誰か…」
相手の力が強くてもう電車から逃げられそうになったとき「私が一緒に行ってあげるよ!!」と30代くらい?の小柄な女性が出てきてくれて二人で捕まえてホームに下ろし、ホームに立ってるガタイのいいおじさんの前まで連れていき「駅員読んでくるんで痴漢押さえてて下さい」って捕まえていてもらい、お姉さんが全部手配してくれて無事に駅員に渡す事ができた。
おじさんとお姉さんにお礼を言ってそこで別れ、私は駅員室に呼ばれた。

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