見出し画像

ゲームマーケット出店に向けたボードゲーム制作の初心者ガイド

 こんにちは。カナリアゲームスと申します。
 先日のゲムマ2023春で、通算3回目の参加をしてきました。
 現時点で、2つのボードゲームとその拡張版を1つリリース・販売に至っています。この経験を元に「面白いボードゲーム」を作るにはどうしたらよいのか?について、お話しさせていただきます。
 また、過去にゲムマに出店はしてみたけど「イマイチ手ごたえがない」といった方や、まったくの初心者で「何から始めたらよいのか?」という方の参考になれば幸いです。

1)売れるゲームと面白いゲームは違う

 残念なことに、面白いゲームが売れるとは限りません。ゲムマの会場で見た目に惹かれて買ったゲームが、後日遊んでみたらイマイチだったという経験は少なからずあると思います。製作したゲームを「どのような販売戦略で売っていくか」は、前回の記事「ゲームマーケット出店に向けたボードゲーム販売戦略」を参考にしていただければ幸いです。https://note.com/i_watou/n/nfde6a98d2e5f
今回の記事では「面白いゲームはどうやって作ったら良いのか?」「そもそもゲームってどうやって作ったら良いのか?」という事に焦点を当てて書いていこうと思います。

初作「パストール」

2)まず何から始めたら良いか?

まず初めに、ゲーム作りの方針は大きく分けて下記のパターンがあります。
・ゲームのテーマ(世界観)から作る
・ゲームのシステム(ルール)から作る
・ゲームのゴール(目的・体験)から作る
時々「降りてくる」という天才的なパターンがありますが、基本的には理論的に作っていくほうが完成度の高いゲームになりやすいです。

「神のゲームをさずけよう。フォッフォッフォ。」

 さて、それぞれの方針についてご説明します。上記の中でも「世界観から作る」が一番やりやすいです。なぜなら、テーマが決まれば、あとはシステムを組み込むだけだからです。また、ボードゲームのシステム自体には著作権はありません。世界観やテーマを新しくて、面白いゲームのシステムを模倣することができるのです。
 あなたがもし、オリジナルのテーマに「革新的なシステムを組み込みたい」と考えているとしたら、ハードルが上がります。なぜなら、新しいシステムを考えるには、過去のシステムを知らないといけないからです。残酷なことに、あなたがもし「オリジナルのシステムを考えた」と思っていたとしても、既に世の中には同じような…しかも…更に面白いシステムがあるかもしれないのです。

「よーし、このゲームシステムを全部把握してやるぞ!」

 この時に注意するのは、ゲームの「最終的な完成を焦らない」ことです。期限を決めて何かを作ることは大切ですが、完成度の高いゲームを目指すのであれば半年前から準備をしても時間が足りないくらいです。

3)トライアンドエラー

良いゲームを作るためにはテストプレイは必要不可欠です。
そこで、初作「パストール」の完成の経緯をご紹介します。
 時は、2019年。ラグビーのワールドカップを友人と観戦していた時です。最高の試合でボルテージがMAXの時、友人がボソッと言ったのです。
「これボードゲームだったら面白いな」

トライ!!アンドエラー!!

 早速、コマの代わりに小銭を取り出して、紙に線を引いて、とりあえずやってみようと遊び始めました。
 最初のルールは、9×9くらいの盤面で、7個のコマ(小銭)
1)ボールを持ったコマが対面に行けば勝ち
2)駒は、縦・横・斜めに1歩ずつ動ける
3)ボールを持ってない側はボールを奪える
くらいを何となく決めて、テストプレイ1回目です。
 何回かやって、すぐに色々な問題点に気が付きました。
1)1歩ずつしか動けないからゲーム展開が遅い
2)取っても奪い返せるからループしやすい
今度はコマを5個にしてみました。
 これはすぐにダメだとわかりました。
コマが減った分、ゲーム展開は早くなりましたが、盤面が広いため、守る側が防ぎきれずに簡単に抜けてしまいます。また、依然としてループが発生しやすい欠点がありました。
 そこで、盤面を狭くして、思い切ってボール側を2歩受けるようにしてみました。これが大成功でした!急にゲーム展開がダイナミックになりました。そして、ループを防ぐために「奪い返しの禁止」が決まり、いよいよルールの軸が定まったのです。このルールが固まるまで、実に1年を要しました。しかし、焦らないことです。

ダイソーの小物シリーズはテストプレイに最適です。

4)カードゲームは作りやすい&埋もれやすい

 私たちは、たまたまコマとボードを使ったゲームからテストを始めました。これは結果的に幸運でした。ゲムマ会場に行くと、8割以上のゲームがカードゲームであるように見えてしまいます。これはカードゲームは作るのが手軽であることが理由です。しかし、ゲムマ会場でカードゲームを販売する場合、ハードルはやや高めです。いかにゲーム性が素晴らしく、イラストが凝っていても、すべて同じに見えてしまうのです。できればカード以外のコンポーネントを混ぜて他とは違う見た目のゲームを目指したいところです。とはいえ、あなたがゲームを作るにあたって一番大きな原動力となるのは「作りたいゲームを作る」ことです。

第二作「鳳凰のタマゴ」

5)コンポーネントはどこまでこだわるべきか

 さて、ゲームのルールが決まったら、どのようなコンポーネントにするか検討します。私が最初に作ったパストールはボールを運ぶゲームです。まずはチェスのようなコマとビー玉を使おうと考えました。コマにはボールを上に置くため、半円球の溝があると良いと考えました。

初期のイメージ

 最初は木製バージョンも考えましたが、木工の知識がないため、1から手作りをするか、既製品で代用できないか検討することになりました。
 そこで、UVレジンを使って、作ってみることにしました。まず、アクリルの空洞パイプを買ってきて、短く切り、そこに着色したレジンを流し込んで成形をします。そこで完成した試作品が下記です。

パストールの試作1

 試作品にしてはまずまずの見た目になりました。しばらくはこれで遊び、テストプレイを続けていました。しかし、試作品ではやはり「安っぽさ」があることが否めません。何がその原因なのか、友人にこのゲームの見た目について感想を聞いて回りました。そこで得た結論は「ボードが安っぽい」ということです。印刷した紙をラミネートしただけなので、当然といえば当然なのですが、クリア素材に紙は合わないのです。そこでボードも透明にできないか、模索することになりました。ついにパストールのコンポーネントの完成です。ここまで2年がかかってしまいました。

パステル調のカラーと透明素材がキレイです

6)パッケージの作成

 コンポーネントが完成したらいよいよパッケージです。いわゆるゲームの顔となります。もし、イラストが描ける方はご自身でデザインされるのが良いと思います。私はデザインの知識もなく、しかしプロに依頼するのもハードルが高い思ってしまい、なんと「パワーポイント」で自作をしました。厚紙に印刷してラミネート加工を行い、切り抜いて接着して箱にしたのです。

初期のパッケージ

 それっぽい見た目にはなりましたが、少し安っぽさがあります。コストを徹底的に抑えるのであれば箱も自作する選択肢はあります。しかし、できれば絵が描ける人に依頼をして、印刷工場で印刷してもらうのが見た目は抜群によくなります。

7)説明書はわかりやすく

 さて、ルール・コンポーネント・パッケージが完成したらあと少しです。実際に買っていただいた人に、楽しくゲームを遊んでもらうためには「わかりやすい説明書」が不可欠です。ボドゲカフェで遊ぶ場合には店員さんがインストしてくれるため、この部分は実感が沸かないこともあります。しかし、ゲームの完成度を高めるためには重要なパートです。
 作成した説明書は、ゲームを知らない友人で読んでもらい、ルールを理解できるか見てもらいます。特に普段ボードゲームを遊ばない友人に読んでもらうことで、より分かりやすい説明書の参考になります。誤字脱字のチェックのためにも複数の人に読んでもらうほうが良いでしょう。

かわさきみなさんが作成

 初作パストールの説明書は手作りでしたが、2作目の鳳凰のタマゴからは、イラストを担当いただいた「かわさきみなさん」にデザインを依頼しました。やはりレイアウトやデザインはプロにしか出せない見やすさです。補足として、動画などのリンクを書いて、動画でルール解説をするのはとても有効です。やはり、紙だけでは伝わらない良さがあります。

 できれば、ゲームのプレイ動画などもあると良いでしょう。動画自体が宣伝にもなりますし、面白いポイントを伝えやすくなります。文章と動画が双方あることで、より分かりやすい説明になるでしょう。

6)ゲームのタイトルの決め方
 ここまでゲームタイトルには触れてこなかったですが、ここはアイディア勝負の部分となり、1つの正解を提示することは難しいでしょう。しかし、私の作ったゲームは「分かりやすさ」「読みやすさ」を大事にしました。実は初作「パストール」の原案タイトルは「スクランブル」でした。「奪い合う」という意味の英単語です。タイトルに意味を持たせることを重要視しましたが、スクランブル交差点スクランブルエッグという単語に馴染みのある日本では合わない言葉だと思いました。
 色々考えた結果、「パスして取る」という意味と「Path(道)を通る」というダブル・ミーニングでパストールというタイトルに決めました。自分の好きなタイトルも大事ですが、分かりやすさが大事かなと私は考えています。

終わりに

 色々書いてきましたが、素晴らしいゲームになるかどうかはテストプレイが非常に重要です。リリースの前に、なるべく多くの人に遊んでもらいましょう。細かいルールによって、ゲーム感や整合性は大きく変わってきます。アブストラクト系のゲームを作ろうとしている人は、非常に重要です。
 研究を重ねて作ったゲームをリリースできた時は、素晴らしい達成感があります。
皆様のゲムマ出店を心より応援しております。

カナリアゲームス代表 Koudai.

最後までお読みいただきありがとうございました!
記事に出てきたカナリアゲームスのオリジナルゲームは下記から購入することができます。
遊んでみたい!と思った方や、応援したいな!と思った方は、チェックいただければ幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?