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#4 誰かのためにつくるごはん

高校卒業後、大学に通うためひとり暮らしをはじめた。
生まれてはじめてのひとり暮らしは慣れないことだらけで、
しょっちゅう母親に電話していた。
家事もお手伝い程度しかやったことがなかったため、
慣れるまでそれなりの時間を要した。

掃除も洗濯もそんなに好きにはなれなかったけれど、
自炊だけは少しだけ楽しくできていた。
自分の食べたいものを食べたいだけ食べられる、
少しだけ大人になった気分になれた。

でも楽しかったのも束の間、やっぱり面倒くさい。
とりわけ食べたいものが浮かばない日は
何もやる気が起こらなくて、お菓子をつまんだり
コンビニでテキトーなものを買って済ませたりしていた。
ごはんを作ること事態は嫌いじゃないはずなのに、
それが自分自身のためだけだと思うと
信じられないくらい腰が重くなってしまう。
もしかしてそんなに自炊好きじゃなかったのか?
ひとり暮らしに浮かれてそんな気がしていた
だけだったのか?と考えたりもした。

でもやっぱりごはんを作ることは好きなようだ。
たまに友だちや彼氏が遊びに来たとき、
自分でも驚くくらい張り切っている私がいた。
何を作ろうかな、メインがこれなら副菜はこんな感じ?
見た目が地味にならないようにサラダも添えよう。
頭の中で作戦会議をしながら買い物メモを
作る時間が至福のときだった。
そして、遊びに来てくれた人たちが
「美味しい!」、「なんの調味料使ってるの?」
と言ってくれるだけでとても満たされた気持ちになれる。
昔から人を喜ばせることが好きなタイプの人間だと思っていたが、
手料理を振る舞うことは手っ取り早く
それを叶えられる方法のひとつだったようだ。

社会人になり、彼氏と半同棲状態になった。
毎日ふたり分の夜ご飯、日によってはお弁当も
用意するようになり、
私の頭の中は常にごはんのことでいっぱいになった。
買い出しは週に1回と決めていたため、
冷蔵庫の中身と来週食べたいもの、
スーパーの特売をチラシアプリで吟味しながら
買い物メモを作成。
野菜は近所の商店街の八百屋に通っていた。
夜ご飯を食べながら次の日のメニューを考えたり、
なるべく旬の食材を使おう、2週間に1回くらいは
お魚メインの日も作ろう、
なんて主婦さながらの思考を持ち始めていた。

友だちを招いてパーティーみたいなことも何度かした。
食費は友だち含めて割り勘だったため、
普段使わないちょっとリッチな食材を買ったり、
品数もたくさん用意したり、
狭いキッチンで様々な料理を並行しながら
忙しなく動いてる時間はとても楽しかった。
つくづく自分は人に喜んでもらうことが好きで、
誰かのために作るごはんが好きなんだなぁと思った。

そんな私も先日入籍し、秋には新しい土地での
新生活を控えている。
大好きな商店街に通えなくなってしまうのは
とてもさみしいが、
なんと新居の近くにも商店街があることが発覚。
きっと新しい場所に移ってもこれまで同様
冷蔵庫の中身と来週食べたいものを考えながら
買い物メモを作成し、
チラシアプリと八百屋を駆使していることだろう。
毎日夫のためにごはんを作るのも、
その先に家族が増えて喜ばせたい人が増えることも、
とても楽しみだ。

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