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さくらが散った秋

2020年5月23日、我が家にメスのフクロモモンガがやってきました。隣町のブリーダーさんから譲っていただきました。
寿命は5年から10年と聞いていました。コロナ禍でみんなと桜が見れなかった年に来たので、10年後、こんな年もあったなぁと思い出せるように、名前はさくらちゃんにしました。
その時僕は30歳、自分が40歳になってもさくらちゃんと一緒にいられるよう、お互いに健康には気を使おうと心に決めました。
ご飯は栄養のバランスが取れたモモンガフードとふりかけのサプリ、おやつはミルワームをあげて、加糖の食べ物は避けました。
先住のハリネズミの真夜中(まよちゃん)と合わせて、1人と2匹、ワンルームでの暮らしが始まりました。
夜になると2匹とも活発になるので、騒がしい日が続き、僕は寝れない日もありました。
これでは動物たちが寿命を迎える前に僕が倒れてしまう、と感じ居間と寝室が別れた部屋に引っ越しました。
フクロモモンガは毎日遊ばせる必要がある動物なので、毎日ケージから出して触れ合っていました。
部屋を散歩させたり滑空させたりしました。僕の服の中で寝てしまうこともありました。
仕事で時間が取れない日も、手渡しでおやつのミルワームをあげたり、なるべく毎日触れ合いました。
ケージの扉を開けると、僕に飛びついてくれるようにもなりました。さくらちゃんを肩に乗せたまま、ハリネズミのまよちゃんにご飯をあげたりしました。
こういう日がずっと続くものだと思いました。

2021年9月1日、夜、いつもどおりさくらちゃんをケージから出してミルワームをあげました。いつもどおり嬉しそうに食べていました。
ただ、呼吸の様子が変でした。昨日とは明らかに違う呼吸で、少し苦しそうでした。こころなしか活動量も減っていました。
症状がわからないので、インターネットで調べましたが、似たような症例が出てきませんでした。
不安な気持ちのまま、さくらちゃんをケージに戻し、僕は寝ることにしました。

2021年9月2日、外は雨でした。
朝起きて確認すると、さくらちゃんはまだ起きていました。呼吸は相変わらず苦しそうでした。
ブリーダーさんなら何かわかるかもしれないと思い、動画を送りました。
早朝にも関わらず、すぐに返事をいただきました。 
あまり良い状態ではないので、すぐに病院に連れて行くように言われました。フクロモモンガを見てくれる病院も紹介してもらえました。
市外の病院しかなかったので、レンタカーを借りに行きました。さくらちゃんを外出用のケージに入れて、車を走らせました。
病院について暫く待ったあと、獣医さんに見てもらい、レントゲンも撮りました。
レントゲンを見ると、肺の位置がわからないくらい白くなっていました。
小動物のレントゲンは精度が悪いけど、恐らく肺炎になっているだろうとのことでした。
原因は環境のせいか、誤嚥をしてしまったのか、もともと身体の弱い個体だったのかはわからないとのことでした。
薬を貰って帰りました。昼過ぎていました。さくらちゃんをケージに戻すと流石に眠そうにしていました。薬を飲まそうとしましたが、眠ってしまったのであげられませんでした。
心配でしたが、獣医さんもあまり刺激しないようにと言っていたので、そのまま出勤しました。
その日、夕方に新型コロナワクチン接種の予約が入っていました。外は土砂降りでしたが、さくらちゃんを病院に連れて行くために借りたレンタカーがあったので無事に接種を終えて家に帰りました。
さくらちゃんは僕が帰ると必ず1回起きてこちらを見つめてくるので、その時に薬を飲ませました。
暫く静かにしようと思い、その日僕は寝室で過ごしました。たまにさくらちゃんを見に行くと、相変わらず苦しそうではあるものの、ケージの中でいつもどおり跳ねていて、昨日よりも元気に見えました。
薬が効いたのかなと思い、少し安心しました。ケージの中から遊んでほしそうにしてきましたが、獣医さんに言われたとおり刺激しないように、ミルワームをあげるだけにしました。モモンガフードも少し食べた跡がありましたので、それを確認して僕は眠りました。

2021年9月3日、相変わらず外は雨でした。
朝起きて、ワクチン接種1回目なのに副反応のせいか、身体がだるく頭痛がしました。
途中まで出勤する準備をしていましたが、8時頃、やっぱりしんど
くなって職場に休む連絡をしました。
さくらちゃんはまだ起きていて、少し元気がなさそうでした。
ミルワームをあげると、いつもどおり食べてくれました。
8時半頃、珍しくケージの床で寝てしまっていたので、上に吊るした寝床まで上がるのがしんどいのかと思い、床付近に吊るしました。
僕が見ているとまた目を覚まして休めないだろうなと思い、僕は寝室に移動して横になりました。
9時頃、それでもさくらちゃんが気になって、ケージを確認しました。ケージに吊るした木の上でじっとしているのを確認しました。
9時半頃、ケージを見ると床で横たわっているさくらちゃんがいました。もう息を引き取っていました。体温はまだありました。
目は半分開いたままでした、苦しそうでした。
僕は至って冷静そうに、さくらちゃんを入れる丁度いい箱を押入れの奥から見つけて、床材を敷いてさくらちゃんを移動させました。
暫くさくらちゃんを撫でているうちに、さくらちゃんが死んでしまったことを実感しはじめて泣いてしまいました。
今日死んじゃうなら、昨日ケージから出して遊んであげればよかったな、栄養バランスとか考えずにもっと美味しいものばっかあげればよかったな、もっと早く病気に気付いてあげられれば助かったのかな、僕が40歳になるまで一緒にいるはずだったのにな、色んなことを考えました。
ピンク色の鼻先が紫色に変わっていくところを見て、このまま腐らせるわけには行かないと思い、バスに乗って市営のペット火葬まで行きました。
受付を終えて、さくらちゃんが入った箱を預け帰りました。土砂降りでした。帰りの記憶はあまりありませんが、バスに乗った覚えがないので歩いて帰ったんだと思います。うちからは6キロぐらい離れています。
家に帰って、副反応で身体が辛かったことを思い出しました。そのまま少し眠りましたが、また起きて泣いていました。
テレビでは菅首相が総裁選に出馬しないことが報道されていました。

9月3日、さくらちゃんの命日となりました。
さくらちゃんが体調を崩さなければ、雨の日にワクチン接種に行くことが出来ませんでした。副反応が出なければ出勤していたので、さくらちゃんが暖かいうちに死に気づくことはできませんでした。
9月4日は僕の誕生日です。
こんな僕にとって都合の良い日にさくらちゃんは死んでしまいました。
そんな気は使って欲しくなかったです。ずっと一緒にいるものだと思っていました。まだケージを見ると、さくらちゃんがこっちを向いてくれるんじゃないかと思って片付けられていません。

夜が随分静かになりました。ハリネズミのまよちゃんが床をほっている音だけが聞こえます。夜のエアコンって結構うるさかったんだなと気づきました。

ペットは家に迎え入れた瞬間に、飼い主が先に死なない限り、必ずお別れが来ます。そんな事はわかっていました。わかった上で、それもペットを飼育する事なんだと理解していたつもりでした。
でもこんなに早くお別れが来るとは思っていませんでした。特にさくらちゃんの体調の異変に気づいてからはあっという間でした。
僕の中で整理するのにはもう少し時間がかかりそうです。ケージももう少し出したままにしておこうと思います。
僕の記憶が残っているうちに記録を残しておきたくて書きました。


さくらちゃん、ごめんね、うちに来てくれてありがとう。

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