友人にねずみ講に誘われたときの話

今から何年も前の話。

唐突に、友人が

「あなたにぜひ紹介したいお仕事があるんだけど…どうかな〜?副業で大丈夫だよ!」

と連絡をよこしてきた。

すぐに「え!!!やるやる!!」とはならなかった。まずなんの仕事なのか?なんで先にそれを言わないのか…まぁ誘導なんだろうけども。

「興味はあるけど、なんのお仕事なの?」

聞いてみた。相手のお望みどおりの質問だと思う。罠にかかってあげたぞ。

「んーと、、説明が難しいんだよね。私が説明して間違いや勘違いがあったら大変だから、きちんと説明してくれる人のとこに行って話しして聞いてみない?」

ふーーーん????

この時、まだ私はなにも気づいていなかった。なんだか怪しい?変だな?とは思っていたけども。なんだよ説明できない仕事って。守秘義務でもあるのかな。にしてもなーーーんも教えてくれない。その副業とやらでどのくらいの収入を得ているのかも聞いてみたけど、それすら濁された。えぇ…。

しかし、その友人自体はすごく信頼できる友人だ。付き合いも長いし、私を騙そうとしてるとも思えない…ので、その説明会?とやらに連れてってもらうことにした!話だけは聞いてみよう。嫌なら断ればいい話だし。日時をセッティングしてもらって、その日に備える。


違う友人M氏に、この事を話してみた。

「…でこの素晴らしい壺がなんと30万円!!とか言われるんじゃないの…気をつけなよ!笑」

と笑われた。M氏の助言どおり、壺は買わないぞという強い意思をもって説明会にいどむ。ここからは説明会当日の話。


友人にどこだかわからないとこに連れて行かれ、謎の小屋??の前に降ろされる。なにかの離れのような場所だった。窓もないところを見るとコンテナかなにか??「なんかやべーとこ来ちゃったのかな」と警戒していると、中から出てきたのは40代〜40代後半くらいの感じのいい女性だった。うちのお母ちゃんと同じくらい…。聞くと、私と同い年の娘がいるらしい。そしてその娘は今回紹介してくれた友人と友人らしい。ようは友達のお母さんって感じか。私の警戒心が少しやわらいだ。

コンテナ的な場所に入ると、逃げられないぞ感があって身構える。多分この時手汗がやばかったと思う。軽く挨拶をして、仕事の説明に入る。すごく簡単に言うと、

「この素晴らしい商品を皆で世の中に広めよう!」

ということらしい。ふーーん??

活動内容は、商品を持って駅前やら人が集まるところで配布?したり、商品紹介会?みたいなのがあってそこで発表したり、皆で遠征?旅行?交流会?みたいのに参加したり…(これが一番意味がわからない)

なんかそんな感じだった。この時点で疑問に思うことが。「なんでそんな回りくどい方法で商品を広めようとするのか??」

商品を見せてもらったが、確かにすごい。画期的ではあった。見たこともなかった。素直にすごいものだと思った。実際にこれを使っている企業もあるらしい。

なのに!!!!なぜ、町中で配るのか??CMでも打てばいいのでは?企業に営業して売り込みに行けばいいのでは?変なの〜と、思った。この疑問は、すぐに解決することになる。というのも、この活動?仕事?をするにあたっていくつかポイントがある。

・初期投資?のようなものが必要で、6万or13万のどちらか選べる。

・初期投資のほかに、毎月会費を払う。これも4000円or1万(詳しい金額は失念しました…)で選べる。

・初期投資と会費は、高い金額払うとその後の還元率?報酬?が良くなる。

・このお仕事を誰かに紹介すると、紹介料が貰える。紹介した人が稼いだ金額の数%が紹介者に入る。そのまた紹介者が紹介して……と紹介料や報酬がねずみ算式に増えていく。ここで貰える紹介料や報酬も、先の会費を多く払っている人のほうがたくさんもらえる。



え………これって……………wwwwwwwwwwwwwwwwww

とこの時点で笑いをこらえつつ、さっきの疑問が解消した。この会社は商品を世の中に広めることが目的じゃない。ねずみ講で儲けることが目的なんだ、と…。心の中でM氏に叫んだ。

「壺じゃなくてねずみ講だったよーーーー!!!!」と。

そして、この紹介してくれて友人も騙されているのでは?ねずみ講だと分かってやっているなら別だけども。ただ、彼女らは「ねずみ講」とは決して言わない。「ネットワークビジネス」と言う。実際にねずみ講とネットワークビジネスは違いがあるらしいのだが、どちらもなんだかうさんくさい。

ちなみに、「これってねずみ講とは違うんですか?」と言う、相手からしたら定番中のド定番の質問をストレートにしてみた。結論から言うと、全然違うんだって。待ってましたとばかりに答えてくれたけども、なんて答えるかな、という好奇心だけで質問したのであまり覚えてない。ここで、ねずみ講とネットワークビジネスの違いを説明されたけど、覚えてない。ここまででもう2時間くらい説明を受けていた。複雑(に見える)なシステムといい、判断力を奪おうとしているのか?これは携帯ショップでよく起こる現象だ。時間がかかりすぎて、疲れて、最終的に「あーーーもうなんでもいいですーー」ってなるやつか??


説明をしてくれているこの女性は、「なんとかかんとかアドバイザー」みたいな(ねずみ講の)会社が決めた資格?役職?を持っている人らしい。この「なんとかアドバイザー」という資格がないとこのネットワークビジネスの説明を人にしてはいけないらしい。だから今日連れてこられたんですね。このなんとかアドバイザーの人は、きっと「この質問がきたらこう!!」ってのをめちゃめちゃ叩き込まれてるんだと思う。マニュアルかなんかあって、それ以外のことは言わないんだと思う。ちなみになんとかアドバイザーの資格を取ると一般ネズミよりワンランク上のネズミになれるらしい。


長い説明が終わり、やっと開放された〜〜と思いきやなんと、なんとかアドバイザーの女性は旦那さんと居酒屋を経営しているらしく、その居酒屋でこれから貸し切りでネットワークビジネスの交流会?飲み会?みたいのが開かれるのでぜひ参加してほしい!とのこと。地獄か???「お金あまり持ってきてないので…」と断ると、お金なんかいらない、好きに飲み食いしてってくれ!と。友人は参加する模様。友人の車に乗っけてもらってここまできたので、帰るすべもなく地獄の交流会に参加することに…。


まず、みんなすごいテンションが高い。多分20人くらいいたかな?大体が20代の人だったように感じる。怖い。コミュ症なので早く帰りたい…。

まだやると決めたわけでもないのに、「新人のやまぐちさんでーーーす!!!」なんて紹介されたり、「彼氏いるのー?」「歳いくつー??」というテンプレ会話をしつつ、めちゃめちゃ歓迎されたが、早く帰りてぇ〜なんて思っていた。とにかくみんなテンションが高い。交流会が始まった瞬間からテンションが高い。なんで???そんなにこの日を心待ちにしていた???ものすごいアウェイ感でめちゃくちゃ居辛い。

そのうち会場のあちこちで始まる、仕事(ねずみ講)のはなし。聞くと、「この前の交流会で交流した〇〇県のグループが意識が高くて〜」とか「もっともっと上を目指してがんばるぞー!!おーー!!」とか、「皆で一丸となってがんばろー!」とか、、すごいテンション高く言ってんの。めちゃめちゃ情熱的なの。この仕事をしていることに誇りを持っている感じ?会社に忠誠を誓ってる感じ?というか。

なんか…合わない。怖いと思ってしまった。私はそんなに仕事に情熱を向けたことがないのでわからないだけかもしれない。なんか変なヤクやってんの???と思ってしまった。何人か仕込みまざってるでしょこんなん。集団なんとかみたいな…雰囲気に洗脳?されてるでしょ??


なんとかアドバイザーの女性の娘さんが来た。なんでも明日なんとかアドバイザーの試験を受けるらしい。この日のために沢山沢山勉強しました!!みなさん応援お願いします!!みたいなこと言ってる。周りのみんなも、素晴らしい!!感動した!!絶対受かるよ!みんなで応援しよう!!みたいなノリ。もうお腹いっぱいです…。



交流会も終わり、私の気持ちも「なんて素晴らしい人たちなんだろう。この人達となら頑張れる!私もグループの一員として、頑張っていこう!みんなでもっともっと成長していこう!!」

とはならず、相変わらず やべーとこ来ちまったな、という気持ちから変化はなかった。友人には、今日の機会を作ってくれた感謝と、仕事のことはちょっと保留させてほしいと伝えてさいならした。さいごに、「初期投資と会費っていくら払ってる?」と聞いたが、教えてもらえなかった。


家に帰って、忘れないうちにネットワークビジネスのこと、紹介してもらった会社のことを少し調べてみた。すると、出るわ出るわ…。会社名でググっただけなのに、詐欺で2回訴えられてるとか、何回も会社名を変えてるとか、社長がにせものだとか…いい事はなにも出てこなかった。まぁ、調べなくともこの仕事をやる気にはなれなかったが、ダメ押しに一応…。紹介してくれた友人のことも少し心配だった。


後日、(あんなに歓迎してもらったのに)やっぱりそのお仕事は受けられない、会社名で調べたらこれこれこんなことが出てきたからもしかしたら気をつけたほうがいいかも…とやんわり伝えた。友人は、怒ることもなく、「そっか〜残念!」くらいの軽い感じだった。友情が壊れなくてよかった。

しばらく月日がたち、その友人とまた会う機会があったので訪ねてみた。「あれからネットワークビジネスのほうはどう?毎月いくら位儲かってるの?」と。

「〜♪」みたいなかんじではぐらかされて答えてもらえなかった。


おわり。


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