地球に危機が迫る時 : 僕はリブートする
誰もがこの困難に対し,「何か」をやりたいのだ.
口を出したい,手を動かしたい...
それは誰しもが抱く,純粋な善意,公共への奉仕心である.
しかし,その想いに,正しい行き場が無い場合,それは専門家や政府への苦言となり,自粛警察の活動となる.
そこに私は与したくはなかった.じゃあ,一体何をすれば良いんだろう...
「君たちの嘆きが聞こえる...」
4月5日,議論をした. covid19によって,社会が変わるか,変わらないか?
私は変わると思った. いや,変わって欲しかったのだ,私は.
だが,この言葉に打ちのめされた.
「ある程度,日常を取り戻し、また皆が集まれるようになって、"大変だったね、じゃあ一杯行こうか。"で、元に戻ってしまうだろう」
頷く他無かった. 人間とは,そういう生き物だ.
「地球に危機が迫る時,」
毎朝,欧州諸国とアジア諸国の折れ線グラフを見ていた. 総死亡者数とアクティブな患者数の. そして,日本のグラフの先と,世間の風潮を予測していた.
マイナスな毎日のニュースに心を揺らされない為,googleカレンダーに予想を書き込んだ.
例えば,5/29「死亡者数報告にほぼ慣れる ここらで600人程度」と有る.
5/21現在,日本の死亡者数は771人だ. この予想に効果は有った.
日々のニュースに文句を付ける「私」は居なくなり,日々のニュースは自分の見立ての甘さを問い詰めるものとなった.
「僕はリブートする.」
テレビでは不安が煽られ,ネットの一部では逆に希望が語られていた.
after/withコロナ,newノーマル,mRNAワクチン...
彼らは,この機に乗じて,未来に日本を連れていきたいのだと思う. それは正しい事だとは認めよう. しかし,その言葉に私の胸は打たれなかった.
幾多流れる言説の中で,この言葉が1番私の胸に響いた.
「終息が何時になるかは解らない。しかし、この騒ぎが終わった時、皆コロっと忘れて元に戻るだろう。若干は変われど、以前に戻るなら、この状況下でも、各自、自分の得意な事に勤しむしかない。」
その通りだ,と思った.
「....!」
しかし,
私に得意な事なんか,無い.
その点について,私は重々承知だ.
私に特異な事が有るとすれば,
日々の仕事で稼いだ金と日常の時間を削って情熱を注いでいる活動だけだ.
日本発のアニメカルチャーで「何か」をやるしか,無い.
「僕が戦う! 君たちは家で家族を守れ!」
コロナウィルスにより,甚大な被害を受けている諸地域は4月11日の時点では,アメリカ,フランス,スペイン,イタリア,イランであった. それらのうち,私が感じる共通項の有る国は,フランス,イタリア,イラン.
「グレンダイザーと円盤獣virvirが戦い,打ち勝つイラストを描いて欲しい」私が信頼するイラストレーターの池田さんに,そう頼んだ.
その3国の共通項とは,そう,40数年前,グレンダイザーが大人気を博していたという事だ.
グレンダイザーとは,永井豪とダイナミックプロが産んだ,マジンガーZ,グレートマジンガーに続くスーパーロボットである.
日本では少し地味だった,この巨兵に勇気づけられた世代は50~60歳くらいだろうか. 今回のウィルスはこの世代以上の重篤化率が高く,まさに今,苦しんでいる人が居るとしたら,彼らの心を救えるかもしれない. だから,今回はグレンダイザーなんだ,と伝えた.
「人類は負けない! 僕たちはウィルスを乗り越える!」
誤算がいつも有る.
仏 伊ではそれ程の反響は得られなかった.彼らの心に入り込めたのか?どうだろう...
フランスとイタリアで当時大人気だったのは事実だ.しかし,それ以降も,きっと両国には色々なエンタメが流れ続けたことだろう.彼らにとっては思い出の中の1ヒーローなのかもしれない.
対し,中東諸国ではグレンダイザーが特別な存在で居た期間が長かったのだろう,赤黒白を中心とした配色は,イラクの国旗の色でも有る. ダブルハーケンも,頭部両側の角も,中東で尊ばれる月と重なるモチーフで有り,王子による祖国防衛というテーマも,当時の中東情勢と似通っている.
グレンダイザーは,彼らにとって,忘れ得ぬヒーローなのだと思う.
「去れ!」
誤算ばかりだ.
ペルシャ語版も作ったが,Facebook広告でイランをターゲットに指定する事は出来なかった.(直接現地の人に届ける方法として,私はFBの地域ターゲット広告を使っている)
間接的に届けと,アフガニスタンの西端のヘラートという街に広告で流してみたが,イランの苦しんだ方々に届いたかどうかは,見当もつかない.
しかし,当たり前の事実にも気付かされた.
被害の程度は抑えられている,他の中東諸国だが,ロックダウンなど,日常生活に制限を受け,消沈しているのは,日本と同じだった.彼らを勇気づけられたとするなら,私の無謀な活動も多少は価値があろう.
「夜が輝く...」
ゲルニカが好きなのだ.
色々なエンタメが有る. 有って良いのだが,
エンタメは,現実に苦しむ我々を慰撫する為だけでは無く,
エンタメは,現実に苦しむ我々を鼓舞する為にも有る.
現在から逃避できる場所を与える事もエンタメの役割かもしれないが,
もっと直接的に,現在の問題と戦い,勇気づけることも,エンタメには可能だ.
私は,そう思う.
Grendizer fan art "fight against saucer beast Virvir"
企画:飛月(岩崎友和)
イラスト:池田和宏(twitter,Instagram)
原作漫画:永井豪とダイナミックプロ
原作アニメ:東映動画
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