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ますます小型化が進むモバイルバッテリーの最新動向

昨今、スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスは一人一台、人によっては複数台を持ち歩くことが普通になっています。こうしたモバイルデバイスは「常に使える状態」を保つ必要があるため、モバイルバッテリーを常にバッグに入れているという人も多いでしょう。そこで今回は、外出先で「電池の残量が少ない!」と焦らないためのモバイルバッテリーの最新動向を紹介します。

モバイルバッテリーとは

モバイルバッテリーとは、電気機器に充電する機能を持った携帯型のバッテリーです。最近はACのコンセントに直接接続するモバイルバッテリーも多いため、充電器とモバイルバッテリーを混同している方がいるようですが、充電器とモバイルバッテリーの違いは、蓄電する電池の機能を持っているかどうか、という点にあります。

乾電池をセットしてモバイルバッテリーのように利用できる製品もありますが、これは正確には変換アダプターに分類されるべきでしょう。充電対象をモバイルデバイスに限定しているわけではありませんが、モバイルバッテリーという名前の通り携帯型の蓄電池であるため、用途はスマートフォンやタブレット、モバイルWi-Fi、ゲーム機などがほとんどです。なお、現在販売されている製品の大半はリチウムイオン電池を採用しています。

モバイルバッテリーへの充電については、前述したように直接ACにつなげる製品のほか、USBケーブルを使って充電する、あるいは専用の充電器を使って充電する製品があります。USBケーブルを使用して充電する場合にはACとの変換アダプターが必要です。なお、防災意識の高まりから、最近はソーラーパネルからモバイルバッテリーに充電できる製品もあります。

モバイルバッテリーの選び方

モバイルバッテリーを選ぶときに確認しなければならないのは、「容量」「出力」「ポート数」「コネクタ規格」です。大容量で出力が高く、さまざまな規格のコネクタに対応したポート数の多い製品が望ましいですが、当然性能と値段は比例しているため、用途に合った性能の製品かどうかを確認するようにしましょう。

容量
バッテリーの容量は、1分間に給電可能な電気量である「mAh(ミリアンペアアワー)」で表されます。この数値が大きいほど大容量ということになります。2022年8月現在、ハイエンドモデルのスマートフォンのバッテリー容量は、iPhone 13 Pro Maxでおよそ4400 mAh、Experia 1 IVでおよそ5000 mAhです。10000 mAhのモバイルバッテリーであれば、これらの製品を2回フル充電できる計算です。

出力
出力の大きさは、充電速度に影響します。出力は電流の単位「A(アンペア)」と電圧の単位「V(ボルト)」、さらにこれらを掛け合わせた「ワット(W)」で表現されます。基本的にワット数が大きいほうが充電速度は速くなります。

ポート数
出力ポートが多いほど同時に給電できるデバイス数は多くなります。ただし、製品によっては複数ポートがあっても同時給電ができないことがあるため、購入する際にはきちんと確認するようにしましょう。当然ですが、給電するデバイスが増えれば電気の消費量も早くなります。

コネクタ規格
ポートにケーブルを接続するコネクタの規格です。蓄電するための入力ポートは製品によって直接ACに接続できるもの、専用の充電器を利用するもの、USBケーブルを利用するものなどがあります。USBケーブルを接続するポートは、入力・出力共にUSB Type-A、Micro USB、USB Type-C などがあり、対応したコネクタのケーブルを用意します。

USB PDによる急速充電はケーブルも重要

最近は「急速充電」を売り文句にする製品が多くありますが、具体的にどこからが急速充電なのかという明確な基準はありません。前述したように出力が多ければその分高速に充電できますが、どこまで急速なのかは、バッテリーやデバイス、ケーブルの対応状況に依存します。

かつてUSBはあまり大容量の充電を想定していなかったことから、給電の規格として定められた電圧は5Vで、電流は「USB BC 1.2」で最大 5V * 1.5A (=7.5W)、「USB Type-C Current」で5V * 3A (=15W)でした。しかし大きな出力の需要はますます高まっており、「USB PD (Power Delivery)」という規格が登場したことで、最大20V*5A(=100W)となっています。しかも、2021年に発表された最新のUSB PD 3.1では、最大240Wまで引き上げられました。

USB PDにはパワールールという給電ルールがあります。USB Type-Cで接続した場合に限ってデバイス側が給電時の電圧をバッテリーに要求し、バッテリー側が対応していれば5Vだけではなく9V、15V、20Vといった高電圧を利用することができます。なお、既存のUSBとの互換性も保っており、バッテリーやデバイス、ケーブルのいずれかがUSB PDに対応していなければ、従来通り5Vで給電します。

つまり、USB PDによる急速充電を利用するには、バッテリー、デバイス、ケーブルがUSB PDに対応しており、ケーブルの両端のコネクタがUSB Type-C(Apple製品であれば Lightning to USB Type-C)でなければなりません。複数のコネクタに対応したモバイルバッテリーでも、USB PDによる急速充電を利用する際にはUSB Type-Cのポートを利用します。

また、USB PD 3.0 で追加されたオプション機能のPPS (Programmable Power Supply) では、対応したデバイスに 20mV * 50mA 刻みで電圧や電流を変化させて流すことで、それぞれのデバイスに最適な給電を実現します。電力変換効率を向上し、給電中のエネルギーロスによる発熱を抑制できる効果がありますが、利用にあたってはバッテリーとデバイスの双方がPPSに対応し、ケーブルもUSB PD対応である必要があります。

これから購入するなら窒化ガリウム(GaN)の製品がおすすめ

窒化ガリウムとは、ガリウム(Ga)と窒素(N)の1:1化合物で、化学式「GaN」で表される半導体です。シリコンよりもエネルギー効率に優れた次世代のパワー半導体素材として注目されており、GaNを採用したモバイルバッテリー製品も次々と登場しています。

シリコン半導体では給電中の発熱対策のため、なかなか小型化が実現できませんでした。しかし、エネルギー効率の良いGaNであれば、高出力化しても発熱を抑えることが可能であり、安全性を確保しながら製品を小型化できます。

たとえばモバイルバッテリーや充電器のトップメーカーとして知られるAnkerでも、GaNテクノロジーを採用した「GaNPrime」シリーズの製品を次々と発表しています。モバイルバッテリーは大容量でありながら小型で軽量、しかも複数ポートで同時に給電可能な製品です。また、それぞれのポートに接続されたデバイスの必要電力を感知して動的に給電をコントロールできるため、高い給電効率を保っています。

モバイルバッテリーはしばしば発熱が問題となりますが、GaNPrimeシリーズには温度上昇を抑える新しい温度管理システムが導入されているため、国際安全基準規格IEC 62368-1に準拠した安全性の高い製品です。

GaNを採用したモバイルバッテリーの製品はまだまだ少なく、発表してもすぐに売り切れてしまうほどの人気です。おそらく今後さまざまなメーカーから発売されますので、次に購入するモバイルバッテリーを選ぶ際、参考にしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

・モバイルバッテリーは、容量が多く急速充電が可能な製品を選ぼう
・USB PDによる急速充電には対応するUSB Type-Cのケーブルが必須
・今後は大容量でも小型で軽量なGaNを採用した製品の増加が予想される


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