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仮想オフィスはテレワークの孤独感を解消できるか?

ビジネス環境はここ数年で大きく変化し、業種や業界、企業規模の大小にかかわらず、テレワークを導入する企業が急増しています。その一方で、仕事関係者と直接顔を合わせる機会が減少して人間関係が希薄になってしまったと感じる人や、ずっと家にこもって仕事をすることで閉塞感を覚える人が増加したのも事実です。最近はテレワークによる孤独感の解消などを目的に、インターネット上の仮想空間に仮想オフィス環境を構築する動きがあります。そこで今回は、仮想オフィスサービスとはどのようなサービスなのかを解説します。

仮想オフィスとメタバース

最近注目されている仮想オフィスとは、インターネット上の仮想空間に自社の仮想オフィスを構築するサービスのことです。近年このような仮想空間サービスは「メタバース」と呼ばれています。メタバースの語源は、「超越」を意味する「Meta」と、「世界」あるいは「宇宙」を意味する「Universe」から来ています。

メタバースの概念そのものはそれほど新しいものではありません。オンラインゲームや仮想現実世界といった分野では20年以上前からサービスが提供されています。たとえばLinden Lab社が2003年から提供している「セカンドライフ」は、仮想空間で人が交流することを目的としたメタバースのサービスですが、仮想空間において実際の商品やサービスの売買、仮想空間の土地売買といったことも可能です。

最近ではアパレルショップなどの商品販売店舗や映画館、ライブ会場、さらにはカンファレンスなどのイベントも仮想空間の中で実現できるサービスが提供されるようになっています。仮想空間でのビジネスをプロモーションする企業も登場して、新たなビジネス分野としてエコシステムが形成されつつあります。

仮想オフィスも、このようなメタバースのサービス形態のひとつです。仮想空間にオフィスを構築し、その中で従業員同士がアバターでやり取りします。つまり、仮想空間にある自社のオフィスにアバターで8「出勤」して、仕事ができるということです。

アバターによる交流で孤独感は解消できるのか

仮想空間にあるオフィスに出勤といっても、現実はこれまでのテレワークと同じだろうと思われるかもしれません。しかし、アバターによる交流を実際に体験してみると熱中してしまう人も多いといいます。オンラインゲームなどでアバタープレイを楽しんだことのある人であれば、納得できるのではないでしょうか。

通常のオンライン会議では、カメラの視点でしか相手をとらえません。また、「身支度が面倒」、「部屋を見せたくない」などの理由から、オンライン会議ではカメラをオフしている人もいます。その結果、「目の前の相手に話しかける」という現実のオフィスでは当たり前だったコミュニケーションが、希薄になっていきます。これがテレワークで孤独を感じてしまう理由の一つです。

また、基本的にオンライン会議は開始と終了が明確です。つまり「会議中」と身構えてしまうことから、必然的に雑談や些細なコミュニケーションは控え目になります。仕事中の雑談は無駄だと切り捨ててしまわれがちですが、実はこの雑談には孤独感を解消する効果があるほか、意外なアイデアが創出されるきっかけになることもあります。企業の中には、雑談のためにWeb会議をつなぎっぱなしにする、雑談用にチャットの部屋を用意しているというケースもあるようです。

基本的に仮想オフィスは、出勤から退勤までオンラインでずっとつながっている空間です。誰かに用事があればその相手のアバターに向かって話しかけるので、目の前にいる相手に話しかけるのに近い感覚が得られます。もちろん、気軽に雑談することも可能ですし、会話が盛り上がれば会議スペースにみんなで移動しても良いでしょう。なお、仮想空間とはいえオフィスですので、大半のサービスにはゲストユーザーとして取引先を招待することもできるようになっており、打ち合わせに利用することも可能です。

このように現実のオフィスに近い感覚でコミュニケーションできることが、仮想オフィスのメリットです。

充実した仮想オフィスを気軽に利用可能になる

メタバースの利用には、ある程度以上のスペックを持ったデバイスとネットワークが必要になるため、導入に敷居を感じる企業もあるかもしれません。確かにメタバースサービスが登場したばかりの頃は、デバイスもネットワークも今より性能が低く、利用するためには高額のハイスペックPCやネットワーク回線やネットワーク機器が必要でした。

しかし最近はスマートフォンやタブレットなどの小型デバイスでも、メタバース利用に十分なスペックを持っており、Wi-Fi6や5Gといったネットワーク環境も充実しています。もちろんサービス提供側でもネットワークに負荷をかけない工夫もされているため、今後はますます仮想オフィスサービスを利用するための敷居は低いものになっていくでしょう。

2022年現在では、仮想オフィスサービスの大半は、モニターに映し出された画面上のオフィスです。しかし、今後VR(Virtual Reality:仮想現実)やMR(Mixed Reality:複合現実)などの技術が向上していけば、より仮想空間への没入感が高まり、実際にオフィスで仕事をしているような感覚を得られるようになるかもしれません。

また、現実世界と同じレイアウトのオフィスを仮想世界で実現することもできますが、せっかくの仮想空間なのでたくさんのフロアで構成される「自社ビル」を作ってしまう企業もあるそうです。たくさんの会議室やセミナールーム、さらにイベントスペースまで備えた自社ビルも、仮想空間であれば実現できます。

もちろん既存のビジネスツールとも連携できるサービスは多く、オンライン会議システムやチャットシステムはもちろん、カレンダーアプリやOfficeアプリ、さらには現実のオフィスにある会議室を予約するといったことができるサービスも増加しています。

もしもの時のためのメタバース保険も

oVice株式会社では、システム障害などで普段使用しているツールが利用できない、地震や豪雨など自然災害で従業員が出勤できないなどといった不測の事態に備え、仮想オフィスoViceを利用できる「メタバース保険」を提供しています。

このように、BCP対策の一環として普段メインで利用するわけではないものの、バックアップ用に仮想オフィスを準備するという考え方もあります。もしかすると、バックアップとして一時的に利用するつもりが、そのまま定着することにもなるかもしれません。

従業員同士のコミュニケーションを途切れさせない、テレワークでも孤独にならない、オフィスからも利用できる、取引先との打ち合わせにも利用できるなど仮想オフィスにはさまざまなメリットがあります。基本的に仮想オフィスサービスはSaaSとして提供されていますので、まずは体験してみてはいかがでしょうか。

まとめ

・仮想空間でオフィスを構築する「仮想オフィス」を利用する企業が増加している
・テレワークでの孤独感を解消する効果が期待できる
・自然災害などオフィスに出勤できなくなった時のバックアップにも便利

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