虚構の愛国心

日本人の大多数は心の底では日本や日本人であることを誇りに思っている。日本は素晴らしい国であり、日本人は礼儀正しく親切な国民であるという、頭の悪い右翼がよく主張するそれと同じ与太話を信じている。

これらの自国を無条件に支持する傾向はどこの国にもある、誰しも自分たちの国は特別であり、自分の民族は外国人より優れているのだという感覚に浸るのは心地よいものではある。私もかつては日本に誇りを持っていたし、日本人は優れた国民なのだと思っていた。実際にアジアでも真っ先に近代化し、敗戦した後にすぐに復興して経済大国になったのだから、全く根拠がないわけでもなかった。

ただここで事実として受け入れねばならないことは、私自身はそれらの日本の功績とは何の関係もないということである。ただ日本に生まれたというだけだ。他人の功績を自分の評価に結びつけるのは、虎の威を借る狐と同じではないのか?そう思うようになった。これは世界中にいる大多数の「愛国者」も同じである、そしてこれらの保守的で民族主義的な人々に共通しているのは、その多くが社会の下層階級であるという点だ。

アメリカにも同様に自国がナンバーワンであるという自惚れた考えに溺れている人間が大勢いる。そしてその傾向が強ければ強いほど、彼らの実際の生活は悲惨である。仕事がなく、収入も不安定でトレーラーハウスに住んでいたり、社会保障に頼り切っている人などが圧倒的に多い。彼らの多くは自国のブランドイメージ以外に誇るものが何もない。精神的な支えとなるものが自分の中にないのであれば、愛国心に縋るしかないというわけである。

こう見ると、彼ら愛国者の多くは純粋に国を愛しているわけではない。ただ自身の惨めな現実から目を背けるためにそうしているに過ぎない。それはただの自己欺瞞なのだ。本当に自分の国を思うのであれば、隣国を口汚く罵ったり、人種差別的な言動を繰り返したりして自国の評価を下げたり、実際には売国奴でしかない偽物の右翼政治家を支持したりしないだろう。

自国の問題を棚上げし、問題を全て外国人や社会的弱者のせいにして、そのような虚構の世界に浸り続ける行為は断じて国を大事に思う人間のすることではない。しかしもし国の欠点を直視するなら、そのブランドイメージは崩れ去ることになる。それに精神的に依存している弱い人間にはそのようなことができるはずがないのだ。

日本の自民党、アメリカの共和党、イギリスの保守党などの右派や保守とされる政治勢力はそういった大衆の心理を理解している。そして資本家と手を組み、それらの下層階級を生み出し、搾取しているのも彼らである。

裏でいくら売国行為を繰り返し、国民を貧困に追いやる政策ばかり実行しても、表で愛国的なポーズさえ維持しておけばバカな愚民など簡単に騙せることを知っているのだ。自身を奴隷の地位に貶めている正にその当事者を支持するというのは信じ難い話だが、昔からある古典的な奴隷の性質はこのようなものである。

自民党があれほど売国行為を繰り返し、数えきれないほど国民を裏切ってきたにも関わらず、未だに自民党を支持する間抜けな層が大勢いるのはこのような理由からである。彼らは自分自身にさえ騙され続けているのだ。


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