ショパンソナタ2番、一楽章と四楽章(2022 ロン=ティボー国際コンクール亀井聖矢さん演奏の感想) そのあとの三楽章も(2022/11/21筆)

なんだか変だ。弾く前から気魄が怖いくらい伝わってくる。この曲の一番最初のところでそんなに気合いが入っていていいものか?
呼吸音とともに、ものすごい熱量で弾かれる、不穏なメロディ。ジリジリジリジリと、何かが近寄ってくる。
波の音が聞こえてきた。穏やかな水辺...鮮やかな対比..?いや違う、不自然なほど穏やかなのは、さきほどの不穏な気持ちをひそやかにずっと引きずっているから。

急激に膨らむ熱量で焼ける。太陽?ありえないほどの光量と熱で焼いてくる。そのまま捻れて、波と不穏が混じり合う。そしてさらに膨れ上がる。なんだこの熱量は。眩しい。おそろしい。美しい!おそろしい!

さらに美しい水辺の波が聞こえてくるけど、もう騙されないぞ、という気分で聴いていると。ほらやっぱり、また熱で端っこからチリチリ焦げて捻れ膨らみ燃え上がりはじめた。最後、唐突に美しく終わっても、なんだか不穏な気持ちが消えない。

そのあとの第四楽章、さきほどの不穏な気持ちそのままに、紅い砂塵が舞う。何も生き残れない世界で、風と砂だけが舞っている。最後、遠くで誰かが呼んでるような声が聞こえた、と思ったら唐突にビシャンとシャッターが閉められてしまった。なぜだろう、聞いちゃいけない声だからだろうか。

次のショパンコンクールで三楽章を聴くのが楽しみで怖い...

(っていう感想を書いたあとで、油断してたら、日本に帰ってきてすぐにYouTubeライブで三楽章と四楽章続けて弾いてくれてしまった..あああ本当に不意打ちだった)

なんて大きな豪華な行列だろう。
そう、これは行進曲であった、といまさらながら納得する。
暗闇の中でランプを持った人たちがゆっくりゆっくりとやってきては過ぎ去ってゆく。
行列の前を見ても後ろを見ても、はじまりも終わりも見えない。顔も見えない。下を向いている。一歩一歩、足元だけを見ている。
不意に鐘が大きい音で鳴らされる。近くで唐突に鳴り響いてフェードアウトしていく。
たくさんの人たち。男も女も子供も老人も。途切れなく続く行列。
ボーイソプラノで歌われる讃美歌が聞こえてくる。柩はどこにあるだろう。讃美歌の美しさでよく見えない。実は柩はないのかもしれない。ただただ死んでいった人たちを....弔っている人々ばかりの行列なのかもしれない。またはこの行列に加わってる人たちが死者なのか..?自分で自分達を弔っている?死者の行列に迷い込んでしまったんだろうか。
結局、行列は途切れることなく続いたまま終わる。

そして四楽章、今回はパイプオルガンの音に聞こえる。とてもとても大きなパイプオルガン。実際は普通の大きさの部屋にある普通サイズのピアノのはずなのに...?
同じ奏者で、そんなに間も開けないで同じ曲を聴いているのに....演奏毎に、違うように聴こえてくるのは普通なんだろうか。私の聴き方が偏ってんだろうか?自分の中の想像に引き摺られすぎてるのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?