キタラ 2023/2/22


コンサートに向けて、私が自分自身を盛り上げるためだけに考えてたようなことを、勢いで写真に撮って旧Twitterにアップするような事をしてしまったのですが....少し恥ずかしかったので、その後の感想は発表してませんでした。

一年後の今日(2024/2/22)、ようやく、コンサートを聴いた感想を、すみノートに書いたものから整理していきます。

バッハ インベンション1番
私が弾ける曲が、かてぃんさんも弾いている!ってだけでテンションあがる。やっぱりトリルは上の音からなんだ、雅な響きだなあ、とか思ってたけど...しかし、その後のアレンジが驚愕で...
アップライトピアノで弾かれる、甘やかで柔らかで美しい..バッハだけどショパンの様な...たくさん水分を含んだような曲....
子供の頃に、こんなふうにピアノを弾きたい、と願っていた夢が、そのまま曲になった気がして、もう一曲目から泣きそうになってた。

ラモー めんどりと未開人
ちょっと寂しさを含んだような鳴き声とか、持ち上げた時の少し持ち重りのする体、羽の中のぬくみ、くちばしや爪の鋭さ、までがいっぺんに思い起こされてきた。そしてそのめんどりを抱っこしている少女が、
次の「未開人」で踊り始める。地に足がついた踊り。裸足で踊られるのがふさわしいような、何かに捧げる踊り。

グルダ プレリュードとフーガ
ラモーの後に弾かれたので、グルダの曲の中のバッハ成分が、後を引いている。ひとつづきの時代のように聴こえました。プレリュード、最後の音の迫力にびっくりする。そこからの素早い指パッチンからのフーガ、難しい曲の構成の、詳細な事はわっかんないけど、とにかくバッハの方のフーガもズレて二重のように重なって思い起こされる。面白いし、2曲ともすごい迫力で怖いくらい。短い曲なのに、満足度が凄い。
この曲で踊りたいなああ。

追憶
ショパンを千回、万回も弾いてきた記録のような。内部奏法する前に、出てきた音、キュー?ヒュー?って音、風の音のような。どうやって出したんだろう?真っ暗でわからない。

主よ、人の望みの喜びよ
後ろのパイプオルガンに照明があたっている。アップライトピアノで弾いているのに、鳴ってないパイプオルガンの音が勝手に足されて聴こえてくる気がする。そして人の歌声も勝手に脳内で足されてくる。
アップライトの音をマイクで増幅してる。前に国際フォーラムのコンサートでもやってたけど、これは、クラシックコンサートに於いては、ほんの少しの工夫ではなく、かなり大きい変化じゃないだろうか?いきなりだと変わった事をやってる、と思われそうな事を、とても自然に、当たり前のように、ここまでの流れでなんの抵抗もなくクラシカルに聴かせるのが凄い。

バッハ パルティータ第2番
最初のシンフォニア、「マジェスティック」って言ってた通りの音がした。教会で聴くのがふさわしい音。
この曲のなかで、アップライトで弾くなら多分サラバンドかな?と予想してたけど、予想は裏切られて、クーラントからアップライトだった。なぜか遠くで弾いてるような音がする。距離だけじゃなくて、時空も。
そしてサラバンドの時は、さらに違う音に変えた。中に手を入れて、何かした。さらにさらにぼんやりと落ちていく音。古びた、ほどけて落ちていくような感覚の音。
ロンドーとカプリッチョは、続けて弾いたけど、ロンドーが小波でカプリッチョが大波。モチーフの波。ポリフォニーの波。存分に波に溺れる。
このパルティータ、曲の特徴を出して、全部を違ったふうに弾くのは難しそうなのに、工夫に工夫を凝らして飽きさせなかった。面白かった。もう一回聞きたい。

胎動
「幹をつないでいくような」と自曲を解説していたので、天井まで大木が育っていくのを見た(気がする)。
そしてその大木に登った(気がする)。
途中ちょっと危うかった気もする。いつもかるがると弾かれているから、考えもしなかったけど、この曲やっぱり大変なんだろうな。

ヒューマンユニバース
お前ホンマにファンか?と言われてしまいそうだけど、直前かてぃんラボで弾いてくれてたのに、すっかり曲名忘れてて、でもメロディは覚えてて、
「最近弾いてくれてた..バロック期の音楽....?なんだっけこれ...?」って思いながら聴いてて..何もない所にポツン、ポツンと何かがある様な...雪の平原に裸木が立っていたり、宇宙空間に星があったり。
MCで宇宙の話はしていたから(次の曲名は言わなかったと思う)ロケットに乗って、遠くの星を見ている光景は思い浮かんでた。でも途中から急に乗組員の人間ドラマの話になった。えっなんで?って思いはじめたら、別に笑うような曲調じゃないのにニヤニヤ笑いが止まらなくなった。
演奏後に、貰ったプログラムを読んで、ちゃんと「人間の複雑な感情」を受け取れていたのに感動した。さすがピアノが第一言語の方。
そしてこれは、曲名だけのプログラムを見ていただけでは分からなかったけど、この曲もバッハやカプースチンのように、大黒柱や梁に匹敵するような、とても重要な曲に思えた。バロック期の音楽のモチーフだけ借りて、過去と現在を行き来した、というふうに受け止めていたけど、
オリジナル曲だったんだからその感想は間違ってたんだけど、けど、でもやっぱりあってる...?

カプースチン 8つの演奏会用エチュード
あれ?私、カプースチンが弾くカプースチン、何回も聴いたよね?かなり聴き込んでたはずなのに、なんで「プレリュード」も「夢」もこんなになじみのない曲に聴こえるんだろう。そして「トッカティーナ」、前に岡山で聴いた時は、「ピアノごと舞台を走り出してもおかしくない」みたいな事を書いたけど、今回は、ステージの床が広く大きく鳴っているのを感じた。ウワアアアン!爆音。舞台が全部楽器だ。

バッハ インベンション13番
アレンジの方を聴くと、最初のバッハの風味を探して聴くようになってくる。耳がそういうふうに育ってきたのが面白い。

カプースチン「思い出」と「冗談」
これもあれ??本当にこの曲カプースチン?!?どこかで裏拍と表拍がわからなくなるように弾いた??
この辺りで私の記憶容量が足りなくなりました。最後に向けての盛り上がりに置いていかれないように、曲を追いかけるのに必死で、覚えていられない。

バッハ インベンション4番
「レミファソラシ ドシラソファミ」が縦横無尽に鳴っていたような。そのまま続けてカプースチン「パストラール」になだれ込んだ?

インベンション14番は、アレンジなかった?でも、最初から私の弾く14番とは違った。全然違った。フワッフワだった。鶴の舞いのよう。
そしてカプースチン最後の7番8番は、もうすごすぎて聴くだけしか出来なくて、なにも記憶できませんでした....。

アンコール、華麗なる大円舞曲を聴いた時、少しだけわかった謎もある。ショパンの曲の中に、確実にバロックの要素もあるし、その先の時代のジャズの萌芽も聴こえる。わざとそう弾いたのかもしれないけど。
上から下に降りてくるところとかのリズムは、今日弾いてくれた色々な曲のグルーブ感そのままだった。全部シームレスに繋がっているんだ、歴史そのものなんだ、と納得しました。

その後、クールダウンしてアリア。アップライトで弾いたはず。最後、拍手したいけど、曲に気持ちが引きずられて、拍手するのももったいない感じ。でも、小さく、たえまなく、拍手してみる。

そして大猫、これは2月22日だったから、弾くだろうな、とは思ってた。この曲だけは何回でも動画で見返せるの嬉しい。一番持って帰りたいお土産だから。

大きく両手を振ってバイバイしてくれて、行っちゃった。
マジェスティックにバッハを弾いてた人とは思えない。でも、実はバッハもこれくらいお茶目な人だったのかもしれない。シームレスにバッハの時代からかてぃんさんまでつながっているんだったら、きっとそうに違いない。

私は、今日、500年ほどの旅をしました!楽しかった!


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