もう1度 ドラムを教える:音量について 1


前回は、ドラムを教えていた過去の話しと、今回の記事を書くきっかけとなった事や、初心者が勘違いしがちな「音量」「タイム」「音質」の優先順位の話をしました。


今回は音量についてです。まずは、「なぜ大切なのか」という話をしていきます。
ドラムセットは、ダイナミクスレンジが広く、大きな音から小さな音まで幅広く表現できる楽器です。初心者の方は「ドラム=音が大きい」という印象の方が多いと思いますが「大きな音も出せる楽器」という認識が正しいです。音量をコントロールしていく為の第一歩として、スムースに演奏できる音量を探すことが大切です。音楽を演奏する上では、「楽曲」「共演者」「空間」等、周りに合わせて自分が演奏する音量のバランスを取ります。バランスをコントロールするためには、まずは、この音量ならば正確に演奏できるというフレーズを見つけて、そのフレーズの表現(音量・速さ・イントネーション等)を広げていくという練習方法があります。


あるフレーズがスムースに演奏出来ない場合、それを習得するには「速度を落として練習する」というアプローチも大切です。しかし、音量を落として練習することで、自分の演奏が聞き取りやすくなり、自分が何をやっているのか、何をするべきなのか認識しやすくなります。一旦、スムースに演奏できる形を作ってから、徐々に音量を上げたり下げたりして行く練習方法です。


自分が演奏出来る音量を知る


自分が演奏できる音量を広げる練習は大切ですが、一旦は「スムースに演奏できる」という段階を踏まなくてはなりません。音量調整は、相手や場に合わせる為のチューニングのパラメーターとも言えます。相手の音が聞こえる環境を作るには、相手の音量調整はもちろん、自分自身が出す音量調整も肝心。お互いの場に合わせた音量に調整します。明瞭なタイムと音質を適切な音量で演奏する。前途の2つが明確であれば音量を大きくできますが、不明瞭なタイムを大音量で出されると聴く人は困惑します。
楽器選びや楽器の調整の目的も、聴く相手や一緒に演奏する人と、より良く音楽を表現する為にあります。「自分の演奏を聴いてもらう」のではなくて、音楽を奏でる時間を共有し音楽を受け取る人となんとか、美しい時間を創りたい。技術的な上手い下手では無く、音楽を表現し受け取る人間が持つ有限な時間の事を考えたら、自分が演奏出来る音量というプレイヤーにとって重要なパラメータを軽視できるはずがありません。


練習方法


例えば、ドラムセットに座って自分が自信を持って演奏できるリズムパターンを演奏します。
一番大きな音量と一番小さな音量で演奏しようとすると、リズムが不安定になったり、発音が不明瞭になったり、とてもむずかしい事がわかると思います。
まずは、演奏できる形から、音量を小さくしていく練習をしてみましょう。
理由の1つとして、「小さな音量で明確なフレーズを出す練習ができる場所」の方が多いからです。自宅でのパッドやドラムセットを使った練習では、大きな音量より、小さな音量で練習できる時間の方が長いと思います。
小さな音量で、そのフレーズを安定して演奏できるようにしてから、スタジオなどで大きな音量で練習する時間をとる。やみくもに大きな音量で練習するより、自分の音やフレーズに集中できます。


今回は、意外と気が付きにくい音量についての説明でした。次回は、タイムについてです。


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