もう1度 ドラムを教える:音質について1


音量>タイム>音質という重要度の話がつづき、今回は音質の話です。


私が今まで会ってきた一流のプロドラマー達を見ていると、音量バランスとタイムこそがあの人達の「演奏」だと感じました。その音自体も楽器というよりは「タッチ」から生まれる音という印象が強く、楽器というのは演奏に音色を付けるエフェクトの様なもので幹の部分では無いと思うことも多いです。しかし、表現するための道具が楽器である以上、楽器を上手く使う事も大切な演奏技術となります。


その人の文化圏、ライフスタイル、ファッション、そして中心となる音楽ジャンルや演奏形態に適正な楽器選びがあります。「楽器で揺らがないタフな演奏」を身に着けた上での適正な楽器選びの能力も、音量バランスやタイムの練習をしながら身につけていくもので、時期により自分の演奏活動の中心が変化するように、中心となる楽器も変わります。


ライブハウスや練習スタジオ、ドラムレッスン等では自分のドラムセットを持っていくことが難しい代わりに様々な場所で様々なドラムセットのマッチングを体験出来ます。音楽や場所と楽器のマッチ・ミスマッチな体験ができる大切な経験で、ミスマッチでもタフな演奏の方が重要なのは冒頭の通りです。楽器が選べない状況でドラマーに必要なチューニングのスキルとはどの様な事でしょうか?


「ドラムをチューニングする」という行為は、その場所や音楽に楽器の状態を合わせる事だと思います。例えば、目標の音に近づけるという考え方の場合、まず、現時点の音がどのような音なのかを理解しなくてはなりません。音を捉える感覚を細分化して整理できている必要があります。音に対しての語彙力が増えるほど、聴こえる音も増えていきます。


録音された音は、様々な音楽家やエンジニアの先輩達が作りあげた結果で、目標にする為には最高の教材だと思います。練習スタジオのキックを踏んで「あの曲に近くなる素養がありそうだ」と感じたらチューニングで近づけてみてください。音楽をよく聴き、そのサウンドの記憶から今手元にあるサウンドと関連付けられるかも大切な力です。ライブ会場で先輩たちがどのように演奏しているか演奏現場に足を運んで聞くことも大切です。音楽体験を心に刻んで行きます。


もちろん録音では、楽器の音がマイクに入り様々なプロセスを経て手元に届きます。録音はチューニングの参考にならないと考えるもいます。確かに録音に対する知識が足りなすぎれば、あまり意味が無い目標を立ててしまう可能性もありますが、クリエイティブな時間になるのは間違いないですし、試行錯誤の過程は間違いなく役に立ちます。


手元にある録音作品を改めてよく聴いて、ドラムサウンドのバリエーションを実感する事からはじまり、手元にある楽器の素養から、どのような音を目標に出来るのかを判断。その音楽に必要と思える音の目標がいくつか思い浮かび、今日の状況ならこの音を選ぶのが適切だ。という判断と再現力が楽器を選ぶことが出来ない時に持っておきたいスキルということになります。経験値が重要で近道の無い分野です。


ということで、今回はドラムの音に対する基本的な考え方 まずは「タッチ」が重要で、そのタッチを活かすためにどのように楽器と付き合っていくか、そして、そもそも先輩ミュージシャンたちがどんなタッチでドラムを演奏してきたのか、どのような楽器のサウンドを作ってきたのかを学ぶことが大切だというお話でした。


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