【過去記事移行:2019年05月02日 00時00分00秒】

白一面の地面。
サクッと踏める感触。
あたりを踊る雪。

10年以上ぶりに、函館の地に降りる。
年に1回しか雪が降らない地域で過ごした私にとっては
この白い地に再び足を下ろすことは、
子どもの時のワクワクが蘇ってきて、実に不思議なものだった。
それは何年経っても変わらないらしい。

函館空港からバスに乗って、上司のいるホテルに向かう。
あたりは夜。
灯少ない街に、所々灯る光がなんだか綺麗だった。
ずっとバスの中から、流れる街並みを見ていた。

ある程度対策をしてきたはずなのだが、
やはり1月の函館は寒い。

小学生の頃、冬休みによく家族と北海道の道南を巡っていた。
そして久しぶりに、仕事として、この地に足を踏み入れることになったのだ。

先ほど、函館はやはり寒いと書いたが
思っているほど、実はそうでもなかった。
子どもの時に体感した北海道の寒さは足が凍りついて
全く動けなくなるほどの記憶だった。

子どもの時の記憶といえば、
北海道の旅でところどころ覚えていることがある。
五稜郭とレンガ倉庫街だ。
今思えば、あればおそらく函館だったんじゃないかと思う。

ただ、奇妙なことがある。
割と昔も今も方向感覚だけは持っている私なのだが、
五稜郭の方角が記憶と合わない。
私は子どもの頃、どこからこの五稜郭へ足を踏み入れたのだろう。

全く想像がつかない。
まるで、パズルのピースが不揃いな方向で散らばっているようだ。
それに気がつかされたのは、仕事での事前のリサーチの時。
函館が思っていたよりも大きくて、そして思っていたよりも小さいことに
気がつかされた。

ある種記憶の乖離とでもいうんだろうか。
それは、一歩大人になったことを指すのだろうか。

まだ残っている記憶がある。
大きなワゴンタクシーに乗って、北海道を回った記憶だ。
正式には、函館内をワゴンタクシーで回ったのだと思うが。
その車の中がとても暖かかったのを覚えている。
それは空気的にもそうだし、人の対応としてもそうだ。

記憶違いでなければ、その車で
夜は小さな居酒屋に入った。
坂が近くにあった記憶があるから、もしかすると八幡坂の近くでも
通ったのかもしれない。

二重扉。暖かい空気が立ち込める。
おばちゃんがいて、小さな遠くからの来訪者をとても歓迎してくれた。
そんな記憶。
すごく暖かく見えた。空気も人も。
そこで食べた暖かいものは本当に美味しかった。
何を食べたかというより、暖かさが記憶に染み渡る。

今回、函館の人を取材するにあたって、
複雑な暖かさを感じた。それは観光都市ならではのものなのかもしれない。
確かに優しいし、親切なのだ。
それは寒さのせいなのだろうか。人は難しい。

街の活気が変わりゆく街。
昔とは着実に違う形で賑わいゆく街。
変わる街のもがきを感じつつ、
はたまた自分の大人になる変化を受け入れつつ、
それでも変わらないラッキーピエロにホッとする。

そんな函館の日差しと記憶を追いかけたこの4ヶ月だった。

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