見出し画像

空がつなぐ平和の願いと線路がつなぐ過去・未来。加西市の旅

紫電改の実物大模型が鶉野飛行場

兵庫県南部の山あいに位置する加西市には知る人ぞ知る太平洋戦争の歴史が残されています。近年は「気球の飛ぶまち」として知名度が上昇している加西市ですが、そのフライトのベース地になっているのが鶉野飛行場跡の滑走路です。現在は第二次世界大戦中に鶉野町の組立工場で製造されていた戦闘機「紫電改」の実物大模型が跡地にできた備蓄倉庫で公開されています。

太平洋戦争末期に旧日本海軍の切り札として登場した紫電改はこの地で46機が組み立てられたと伝わっています。現在は、毎月第1・3日曜日の10時から15時まで公開されるレプリカを見に平和学習から飛行機マニアまで幅広い方々が鶉野飛行場跡を訪れています。

戦争の歴史を今に伝える
飛行場周辺の遺跡を巡る

飛行場跡の周辺には平和を祈願する「鶉野平和祈念の碑苑」や自力発電所として使われていたとされる「巨大防空壕跡」、敵機の攻撃を迎え撃つための「対空機銃座跡」などが残り、最寄りの駅となる北条鉄道の法華口駅を起点に戦争遺跡をめぐるガイドマップやレンタサイクルなどが整備されています。

画像1

鶉野飛行場跡の歴史をじっくり学びたい観光者におすすめしたいのが、ボランティアガイドとアプリの存在。加西市歴史街道ボランティアガイドの申込みは2週間前まで。公式アプリ「REKINAVI」はスマートフォンにダンロードして事前学習も可能です。

<加西市歴史街道ボランティアガイド>
https://kanko-kasai.com/volunteer/

<REKINAVI>
https://www.city.kasai.hyogo.jp/05toku/12reki/intro/index.html

空でつながる4市連携で進む平和ツーリズム

兵庫県の加西市と姫路市、大分県の宇佐市、鹿児島県の鹿屋市。旧海軍飛行場ゆかりの4市の連携で設立されたのが「空がつなぐまち・ひとづくり協議会」。太平洋戦争末期に加西市にあった姫路海軍航空隊と宇佐市にあった宇佐海軍航空隊で編成された特別攻撃隊が集結し沖縄方面に出撃したのが鹿屋基地であったことから、未来に向けて平和ツーリズムの普及を目指すプロジェクトを推進することになりました。

画像2

4市で進める平和ツーリズムは、歴史を学ぶことで平和の大切さを学ぶ「ピースツーリズム」に農業や漁業体験を通じて都市では味わえない時間を過ごす「グリーン・ツーリズム」「ブルーツーリズム」を組み合わせた多様性のある観光を目指しており、将来的には全国各地との連携を視野に入れています。
加西市の旅をきっかに他の3市を訪問したくなる人が増えることで、平和の輪が着実に大きくなっていくでしょう。

<空がつなぐまち・ひとづくり協議会>
https://sora-tsuna.jp

画像3


北条鉄道がつなぐ過去と未来

鶉野飛行場跡を訪れるなら是非、乗車していただきたいのが「北条鉄道」です。南部に位置する兵庫県小野市の粟生駅から加西市の北条町駅までを結ぶローカル鉄道は全線単線の8駅で、昭和60年の国鉄民営化時に独立鉄道会社が設立されました。

田園風景の中を走る列車の姿は四季それぞれにフォトジェニック。1日フリーきっぷ(840円)を購入して、途中下車して少し離れた場所からその姿を撮影するのはいかがでしょう?その他にも鉄道と折り畳み自転車を組み合わせた「レンタサイクル付フリーきっぷ」や オリジナルプランを計画できる「貸切列車」などのユニークなプランもあり、ローカル鉄道ならではの楽しみ方が可能です。

その他にも地元の方々がボランティア駅長を務めるステーションマスター制度など、どこか懐かしいローカル鉄道が新しい取り組みの数々に挑戦されています。廃線の危機を乗り越えた北条鉄道が走っているのは車窓に旅の魅力を散りばめた過去から未来へと延びる一本道なのかもしれません。

<北条鉄道>
http://www.hojorailway.jp

観光ニューノーマルのヒントが見えるまち

人口4万3000人強の加西市は中山間地域に位置する小さなまちで観光地としての知名度は低いかもしれませんが、独自の歴史と美しい自然に触れることで観光素材の多様性と奥深さが見えてきます。

画像4

時の流れの中で語り継ぐ人がいなくなる戦争の歴史や田園地帯を走るローカル鉄道は誰かが守り続けなければ消え去っていく可能性がありますが、観光産業にはそれらを食い止めるチカラが内在しています。

コロナ禍を機に不要不急の旅が敬遠される今だからこそ、忘れかけていた何かを取り戻す機会としての観光活動が必要です。加西市は一度訪れると別の季節を味わいたくなり、大切な誰かに声をかけて再訪したくなるまち。そこに「もうひとつのふるさと」を見出す旅人が増えることが関係人口の拡大の本質のような気がします。

記者:江藤誠晃

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?