感想文部(毎週ショートショートnote、410字)
人事異動を言い渡された。
感想文部。
「おはようございます。今日からコチラでお世話になる赤塚です。よろしくお願いします」
部屋に入りお辞儀をした。
「君の席はここだ。仕事の内容はわかっているね」
「はい」
机はお互い向き合うように二列に綺麗に並んでいた。
僕はパソコンモニターを見た。消費者からの我が社の商品に対する感想文を読んで返信すること、それをまとめて役員資料を作るのが僕の仕事だ。
営業だった僕は商品を熟知している。
相手のお褒めの言葉、苦言に対してそつなく返信を送る。
あらためて、我が社の製品を喜んでくれている感想が多いことに驚いた。しかも、製品の細かいところまで知り尽くしていると思われるコアなファンがすごく多い。
「どうだった?仕事は」
仕事が終わり、正面の席に座っていた先輩が声をかけて来た。
「はい、とてもやりがいがあります」
笑顔で応えた。
「お前はいいよ。読む方だから」
先輩はボソリと苦笑いしてつぶやいた。
「俺は書く方だから」
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