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しゃべるピアノ(410字)|#完成された物語

物語の欠片という企画に参加させていただきました。

その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。

彼の演奏はそれは素晴らしく、観客たちから毎回のように多くの投げ銭による収入を得ていた。

しかし、ある日のこと急に演奏が止まってしまった。

その男には好きな女性がいた。きちんとした仕事につかなくてはと思っていた。彼は、いつもピアノに宿る霊と話をしていた。

「俺、彼女のために会社員になろうと思うんだ」
「いいんじゃないかな。それで君が幸せになれるのなら」
「ごめん」

そんな会話があり、その日がラスト演奏の予定だった。音が出なかった。

「今日がラストなんだ。俺に力を貸してくれないか?」
「すまん、胸がいっぱいで反応できないんだ」
男も泣いていて、実は鍵盤をうまく叩けてなかった。

観衆の中から、少年が寄ってきた。
「僕が弾いてもいいかな?」
返事の前に演奏を始めた。ピアノはその演奏に心を躍らせた。
「明日も弾いていいかな?」
「ずっと弾いてくれないか?」
少年は笑顔で顔を縦に振った。

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