『劇場版はいからさんが通る前編』感想

一瞬の隙をついて見に行ってきたので感想をごく手短に。ネタばれはない、はず。

絵柄は現代風だが、よくもわるくも昭和の少女マンガテイスト。ラブコメ風味は健在。ああいうのがOKな人なら楽しめると思う。個人的には好物。テレビアニメは見ていなかったので比較はできないが、原作の昭和風絵柄が若干苦手だったのでむしろ大歓迎。紅緒はかわいく元気よく、少尉はこれでもかというくらいかっこいい。まさに王道。

今回は劇場版前後編で原作のラストまで描くとのことで、全般的にストーリーははしょり気味だが、むしろ現代のペースには合っているかも。原作を知っている人は原作通りのところとそうでないところを探したりして楽しめる。ネタばれにならない範囲で書いとくと、前編は原作でいえば3巻の途中あたりまで。後半への期待を盛り上げる終わり方。

見た時間帯のせいもあって観客は中年女性が大半だったが、現代の若い人たちがどう思うか、ちょっと興味がある。

今にして思えば原作は、大正時代の日本を描いたものであると同時に、それが刊行された1970年代の日本を描いたものでもあった。70年代の少女たちは、社会の中での女性の立場について、当時の日本をその60年前とある意味地続きに感じていただろう。70年代半ば、女性の初婚年齢は24、5歳、大学進学率は1割強で男性の1/3だった。約3割が見合い結婚、という時代。少女マンガのお約束設定部分を除いても、紅緒の生き方は、多くの少女たちに共感と憧れをもって受け止められたのではないか。

現代は刊行から40年、舞台となった大正時代からはおよそ100年の歳月を経ている。新しい法律もでき、社会も大きく変わった。かつての少女ファンたちが懐かしく見るのは自然だろうが、現代の少女たちはこの作品をどう見るだろうか。時代劇やある種の「異世界」の話として受け止めるか、それとも現代の状況をダブらせて見るか。それは2017年に作られたこの映画が、どの程度「現代」を描けているかによる。私の見立ては冒頭に書いた通り。

後編の公開は来年だそうなので、以上の感想はあくまで暫定版。原作ラストまでもっていくとすると、後編はさらに怒涛の(そうしないと終わらない)展開が予想される。楽しみに待ちたい。原作のファンも、そうでなかった人も、見ていろいろ考えてみるといいのではないか。

蛇足:花村少佐の声が石塚運昇さんなもので、つい「ここに三人の紅緒がおるじゃろ?」的なセリフを期待してしまったのだがいったいどうすれば。

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