『詩季折々』感想

ようやく時間ができて見てきた『詩季折々』、手短に感想。ネタバレはなし。

中国のハオライナーズと日本のコミックス・ウェーブ・フィルムの合作による3編(『陽だまりの朝食』『小さなファッションショー』『上海恋』)の短編オムニバス作品。監督も日本人と中国人。舞台は90年代の北京、広州、上海で当時の「衣食住行」を描いたもの、と。。タイトルの『詩』は「四」からくるものかと思うが中国でのタイトルは『肆式青春』で「肆」は「四」の意味があるから、そこらへんもひっかけてるのだろう。

実際には中国人の監督以外、大部分の制作スタッフは当時の中国を知っているわけではなかったらしい。その意味ではノスタルジーで美化された中国ということになる。日本でもそういう作品はよくあるが、中国もそういう作品が無理なく作れる状況になったということだろうか(それよりちょっと前だと下手に映像化できないあれやこれやがあろうし、そもそも現代中国の若い人たちが人民服と自転車みたいなのにノスタルジーを感じられるとも思えんし)。

絵柄はふつうに日本風。コミックス・ウェーブっぽい。作風も抒情的で違和感なく見られる。やや説明がくどい感じがするのでセリフはもう少し少なくてもよかったと思う。

「衣食住行」というわけで、3つの作品はそれぞれ食、衣、住がテーマ。最後に全作品の登場人物たちが空港から飛び立つのが「行」だろうか。中国社会の雰囲気がなんとなく伝わってくるのが新鮮。朝食が外食なところとか、だっさいジャージの学生服とか。90年代はまだカセットテープがふつうに使われてたのかあ、とか。大学受験と家庭との関わりなんかも興味深い。

劇場公開もしてるが、Netflixを通して世界配信してるのが注目ポイントの1つ。中国アニメは今後、日本を含むいろいろな国で一定程度受容されていくだろう。日本を追い越す可能性はかねてから指摘されているが、今すぐは別として、この先じゅうぶん可能性はあるように思う。何せマーケットでかいし。

日本語版で見たが、他のレビューを見たら中国語+日本語字幕で見るのがよいとあった。確かに中国語も場所によってことばがちがうし、中国語で見た方が雰囲気がよく伝わるかもしれない。もう一度機会があれば。

見たあとに何か暖かいものが残るのがよい。お勧め。

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