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バイエルン史上最高の両ウィング 「ロベリー」

バイエルン史上最高のウィングといえば、左のリベリーと右のロッベン、合わせて通称「ロベリー」
分かっていても止められないとは、まさにこの両ウィングのことである。

2000年代中盤、国内外で結果を残せずにいたバイエルン。しかし、2007年にマルセイユからリベリー、2009年にレアルマドリードからロッベンが加入してから一変した。

ロベリーが完成した2009年から2019年までの10シーズンで、CL優勝1回と準優勝2回、ブンデスリーガ8回、DFBポカール5回などタイトル21個を獲得。
バイエルンが再び欧州のトップクラブへ返り咲いたことは、この二人なしでは成し遂げられなかっただろう。

時には殴り合いの喧嘩をしたことのある二人。それでも試合中に見せる圧巻のコンビネーションは、バイエルンファンだけでなく世界中のサッカーファンを魅了した。

彼らが最も武器としたのはドリブルとスピードであった。圧巻のテクニックで相手を抜き、爆発的なスプリントで置き去りにする。
加入当時、プレーテンポが決して速いとは言えなかったブンデスリーガをこの二人が破壊した。この二人を止めるにはスピードが必要だが、その能力を持つディフェンダーがブンデスリーガにはいなかった。ブンデスリーガの高速化はロベリーに対処することから始まった。

分かっていても止められない。それが世界トップの選手になるための必須条件だろう。
誰もが知るロッベンの「究極のワンパターン」右サイドから中央にカットインし、左足で左巻きのシュートをゴール隅へ。
ディフェンダーはもちろんのこと、試合を見ている人でさえロッベンの動きを予測できる。それなのに誰も止めることができなかった。ロッベンのゴール集を見れば、何回再放送するのかと思うほど、似たようなゴールが続く。

リベリーもまた、分かっていても止められない選手だった。ロッベンのような誰もが知るパターンがあるわけではない。
しかしピッチ内を縦横無尽に走り回り、試合を決めるようなキラーパスを通し、ファウルでも止められないドリブルテクニックでボールをゴール前に運び、自分で決めることもできれば、ラストパスを供給することもできる。そしてFKやCKも任されるほどのキックの正確性も併せ持つ。バイエルン史上最多アシスト(当時)を記録したのも十分に納得だ。

以下にリベリーとロッベンの年度別の成績を記した。これほどの成績を叩き出せるウィンガーは、二人の退団以後は出ていない。
後継者として期待された、コマンやニャブリ、ザネさえも足元にも及ばない。

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\begin{array}{|c|c|c|} \hline
&Franck  Ribéry&Arjen  Robben\\ \hline
07/08&46/19G20A&-\\ \hline
08/09&36/14G20A&-\\ \hline
09/10&30/7G12A&37/23G8A\\ \hline
10/11&32/11G22A&18/13G13A\\ \hline
11/12&50/17G27A&36/19G10A\\ \hline
12/13&43/11G23A&31/13G13A\\ \hline
13/14&39/16G15A&45/21G17A\\ \hline
14/15&23/9G10A&30/19G9A\\ \hline
15/16&22/2G6A&22/7G3A\\ \hline
16/17&32/5G17A&37/16G14A\\ \hline
17/18&34/6G6A&34/7G12A\\ \hline
18/19&38/7G4A&19/6G2A\\ \hline
&425/124G182A&309/144G101A\\ \hline
\end{array}
$$

ロベリーの唯一の欠点は、怪我の多さである。爆発的なスプリント力を持つからこそ、現役を通して筋肉系の怪我に悩まされた。そして彼らが欠場するときに、代わりの選手がいないために試合の質が落ちる。
もしロベリーが共に、メッシやC・ロナウドのような稼働率であったなら、バイエルンは3回はCLを取れていたと想像する。そのくらいリベリーのバイエルンに対する影響力は大きかった。

年齢が共に30代半ばに差し掛かり、遂に2018/19シーズンを最後に退団することが決まった。
2019年5月11日、本拠地アリアンツ・アレーナで行われたブンデスリーガ最終節フランクフルト戦。この試合で勝利すれば、2位ドルトムントの結果に関わらず、バイエルンのブンデスリーガ7連覇が決まる。
ただこの試合で、バイエルンファンが見たいのはそれだけではなかった。長年バイエルンの両翼として支えた「ロベリー」のラストゲームである。

前半に先制するも、後半開始直後に追いつかれたバイエルン。しかしそこからギアを上げて、2点を奪って3-1とし、勝利を大きく手繰り寄せたバイエルン。するとコヴァチ監督は、61分にリベリー、67分にロッベンを投入。スタジアムはレジェンド二人の投入で熱狂に包まれ、スタンディングオベーションが起きる。

しかし物語はここから始まった。
72分、左サイドから中に仕掛けたリベリーは相手DF二人の間を突破して、GKの上を抜けるループシュート。ゴラッソを決めて自らの花道を飾る。
さらに78分、レヴァンドフスキとのワンツーでゴール前に抜け出したアラバは、ゴール前でフリーになっているロッベンを確認すると、自らも決められる位置にいながらラストパスをロッベンに供給。これを冷静に左足でゴール隅に流し込み、ロッベンもリベリーと共に自らの花道を飾った。

5-1で勝利し優勝を決めた上に、退団するレジェンドが二人揃ってゴールを決める。バイエルンファンにとって、これ以上ない景色がそこには広がっていた。
試合後に、同じく退団を発表していたラフィーニャと共に、リベリーとロッベンとのお別れセレモニーが行われた。
「Mia  san  Mia」俺たちは俺たちだ!
というバイエルンのスローガンを口にしたリベリーは瞳には涙が浮かび、この場面を涙なしに見られたバイエルンファンはいないだろう。

それほどにバイエルンファンに愛されたロベリー。彼らがバイエルンで残した記録と記憶を、私たちは決して忘れることはないでしょう。
私たちの中では永遠に、バイエルンの7番はリベリー、バイエルンの10番はロッベンなのです。
いつか彼らを超えるウィンガーが出てくるまでは…

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