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君へ

僕の隣でご機嫌そうに喋る君を見ていると
急に君の全てを肯定してやりたい気分になって、何か気の利いたうまい言葉を模索するのであるけれども、言えずじまいで進む君の話は君の言葉で出来ていてするする聞こえてくるから好きな時間で、

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君と初めて会う日の前の夜
いつも通り家の前の公園にある、目の前に大きな木のあるベンチに腰掛けて誰も見ていないのに何かを考えているような顔をして煙草を蒸す
唯一自分を肯定してくれる存在であった煙草は最後の一本でそれすら灰になって足元に落ちた
煙の匂いだけが服に残る

✳︎
君の手を握って確かな温もりを確かめることも、
やさしくキスをしてハグをすることも、
究極的には全ては模倣に過ぎなくてそれはきっと昔の彼氏らがそうしてきたような模倣であって、
単に心がすることの模倣であって、
単にセクシャル的で、代替可能の単なる名前のつかない一行為でしかなくて、
そこで満たされるものは結局のところ自分自身だけで完結する一時的なものと変わりはなくて、
そういう一時的なものはくだらなくて、
誰かを傷つける以上に自分自身を傷つけるし本当に意味がない
ひとりよがりはその場の寂しさしか満たしてくれない
だから君を求めるのであって



君は二人でいる時によく褒めてくれる
目の下のホクロとか茶色い目、笑うとできる皺
僕はそんな魅力的で神秘的な存在じゃないと知っているけれど、
その思い込みは僕に勇気をくれて、あたたかい気持ちになれる気がする


君が与えてくれたように、君がそうしてくれているように、
いいやそれ以上に君を肯定する存在になりたいと思いながら吸う煙草はあの日の夜よりも軽い感じがした








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