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煙草を蒸すために部屋の小さな窓を開けると
いつもは目の前の建物の出口から人が出てこないかちらちら見てみたりしていたけれど、
今日の空はやけに雲がもくもくしていたから見ていると、
僕の好きな人ももしかしたら同じ雲を見ているのかなとか思ってみたりするけれど、今日は見ていなそうな気がしたから写真に残しておいた

雲にはたまに見ると10分くらいだらだら見れてしまう雲がいて、今日の雲はまさにそうだった

雲を見て綺麗だねと言える素敵な感性を持っている人を好きになれてよかったと思った


✳︎


あの雲はいつかなくなってしまう
時間の経過とともに形を崩しながら流れていくように僕の目の前から離れていく
時々恐ろしい程早くね、雲のくせに、雲だから

だんだんと変わっていく雲に当時のあの綺麗だった雲を見出すことがだんだんできなくなってきて、ぼくの方も区切りがついたから渋々窓を閉める
あの雲は本当に8月の雲らしくて写真に残しておこうと思ったけどあの絶対的な雲の存在感は写真には映らなかったし、残ったのは雲の外観がけ、空っぽすぎる

ずっとあの雲には雲らしく夏の澄み切った青空に漂って欲しかったけれど、あの雲は雲だから雲の掟に従ってそうしているのであって、足のついた僕がそれを願うことはなんだか違うような気がした
目の前にいるのに絶対に届くことのできないこの絶対的な空白感が時間の経過をより遅くさせているのとは裏腹に、あの雲であった雲は素早くまた別の様態へと変わっている





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