内海博文

2019年より長崎県大村市でフリースクール:スクートを運営(NPO法人schoot代表…

内海博文

2019年より長崎県大村市でフリースクール:スクートを運営(NPO法人schoot代表)。実践とデータをもとに独自の視点で不登校や教育現象についてお伝えしていきます。教育学修士。小中高校教員免許あり。社会科。

記事一覧

不登校対策定番メニューを意味あるものにするには スクールカウンセラー編

前回は、スクールカウンセラーが不登校対策としてかなり不十分なもので、不登校の児童生徒数を減らすことにも、また再登校につなげることも、あまり役に立っていないという…

内海博文
3週間前
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不登校対策定番メニューには意味があるのか①スクールカウンセラー

子どもが不登校になると、学校から提案される「定番メニュー」のようなものがありますね。例えば、教育支援センター(適応指導教室)や、別室登校、SC(スクールカウンセラ…

内海博文
1か月前
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不登校とひとり親家庭と公費助成

「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、シングルマザーの平均年収は272万円だそうである。 先の大村市議会(6月)の入江議員の一般質問において、現在大…

内海博文
8か月前
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不登校対策についての基本姿勢です

・児童生徒の資質の問題に還元しないこと  もしあなたが、不登校問題を児童生徒の資質の問題に還元するとすれば、それは子どもの資質によって教育を受ける権利の保障をし…

内海博文
8か月前
7

「不登校」ではなく「教育疎外」と表現すべきもの

「不登校」という言葉は「子どもが登校していない状態」を意味している。 「なんだ、何をそんな当たり前のことを言っているのだ。」と思われるかもしれない。しかし、この…

内海博文
1年前
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不登校を「本人」「家庭」の問題とすることの愚かさ

改善すべき原因は学校にある 「内海さんは、不登校の原因は何だと思いますか?」とたまに聞かれます。質問者の意図を汲んで「学校が第一の原因です。」と答えます。 そう…

内海博文
1年前
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不登校の子が回復するために親がやるべきこと・避けるべきこと

NPO法人schootでは、活動を始めてこれまで約3年に渡って「親の会・勉強会」を開催してきました。 不登校の子どもの気持ちや、家庭での正しい支援ってどういうもの? そ…

内海博文
2年前
8

不登校だったH君が「学校、楽しい」となるまでに学校はどんな支援をしたのか

今回は経験者トークの第4弾。(本編ラジオは一番下に張り付けています) スクートを始める前から個人的に勉強をみていて、ぜひともゲストに出てもらいたかったHくんに話…

内海博文
2年前
6

不登校問題が家庭や個人の責任として切断されていく

ここ数年で「不登校」に関する情報はかなり増えたように思う。NOTEでも「不登校」というキーワードで検索すれば、多くの記事に出会うことができる。しかも、家庭での子ども…

内海博文
2年前
8

経験者トーク(スクートラジオまとめ)

過去に放送した「スクートラジオ」より、経験者/当事者にゲストに来てもらって、自分の不登校経験(当時の気持ち、先生や保護者に感じていたこと)などを語ってもらった回…

内海博文
2年前
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学校の先生は、高級なファミレスの調理スタッフである。(随筆なやつ)

大衆向けの比較的高級なレストランがある。僕が住む町にはないが、きっと都会にはあるだろう。調理スタッフになるには2年以上その経験があるとか、調理師免許が必須とか、…

内海博文
2年前
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「親の会」には経験知を共有知へと変換する役割もある

子どもが学校を休みがちになったとき、多くの保護者さんが苦痛に感じるものとして「毎朝の学校への欠席連絡」があります。 わが子が、行けるのか、行けないのか、朝になっ…

内海博文
2年前
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教育委員会が運営する子どもの居場所:小・中校生サポートルームconneの取り組み(大村市)

2021年9月におおむらケーブルテレビで放送された番組「いまなび~多様な学びの今~」第1回目の放送です。 前半は不登校について基本的な知識の紹介。 後半は、2021年度か…

内海博文
2年前
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学校ができる不登校予防策②中学校編

次に中学生の休み始めるきっかけを見ていきましょう。(小学校編はこちら) 割合として最も高いのは「身体の不調」(32.6%)ですが、それについては別の機会に述べること…

内海博文
2年前
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学校ができる不登校予防策①小学校編

「不登校に関する調査研究協力者会議」が2021年10月6日にオンラインで開催されました。文科省のHPから、その際に配布された資料がダウンロードできます。ここでは、その配…

内海博文
2年前
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学習機会剥奪児童生徒60万人!?

(今回は、少し数字を使ってアクロバティックな推論を行います。) 文部科学省定義による不登校児童生徒数最新の文部科学省の調査によると2018年度の不登校小中学生の総数…

内海博文
4年前
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不登校対策定番メニューを意味あるものにするには スクールカウンセラー編

不登校対策定番メニューを意味あるものにするには スクールカウンセラー編

前回は、スクールカウンセラーが不登校対策としてかなり不十分なもので、不登校の児童生徒数を減らすことにも、また再登校につなげることも、あまり役に立っていないという現実をお伝えしました。

https://note.com/hutsumi1977/n/nd57cbb2ad792

今回は、意味のあるSCにするためにどうすればいいのか、を考えます。

アメリカのスクールカウンセラー

そのための導入とし

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不登校対策定番メニューには意味があるのか①スクールカウンセラー

不登校対策定番メニューには意味があるのか①スクールカウンセラー

子どもが不登校になると、学校から提案される「定番メニュー」のようなものがありますね。例えば、教育支援センター(適応指導教室)や、別室登校、SC(スクールカウンセラー)やSSW(スクールソーシャルワーカー)など。

しかし、これらの対策は、長く続けられている割にはあまり効果がないように思えます。なにせこの数年は、日本全国で数万人単位で不登校児童生徒が増えているのですから。

その意味で、不登校支援や

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不登校とひとり親家庭と公費助成

不登校とひとり親家庭と公費助成

「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、シングルマザーの平均年収は272万円だそうである。

先の大村市議会(6月)の入江議員の一般質問において、現在大村市内小中学校のおける不登校児童生徒のうち、ひとり親家庭の割合は

小学校28%

中学校39%

であることが明らかになりました。また、現在、日本におけるひとり親家庭の貧困率は50%を超えています。https://gooddo.jp

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不登校対策についての基本姿勢です

不登校対策についての基本姿勢です

・児童生徒の資質の問題に還元しないこと

 もしあなたが、不登校問題を児童生徒の資質の問題に還元するとすれば、それは子どもの資質によって教育を受ける権利の保障をしなくてもいい、という主張をしているということになるが、あなたはそれでOKか?

・家庭の教育力の問題に還元しないこと

 上記と同型の問題を含んでいる。もしあなたが、不登校問題を家庭の教育力の問題に還元するとすれば、それは保護者の資質によ

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「不登校」ではなく「教育疎外」と表現すべきもの

「不登校」ではなく「教育疎外」と表現すべきもの

「不登校」という言葉は「子どもが登校していない状態」を意味している。

「なんだ、何をそんな当たり前のことを言っているのだ。」と思われるかもしれない。しかし、この表現こそが問題の本質をとても分かりづらいものにしてしまっていると思う。

もしかしたら、かつて、この国では、そうした子どもたちを「登校拒否」だとか「学校恐怖症」だとか強い言葉で表現してきた歴史があり、それゆえに、学校に行けない子どもたちの

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不登校を「本人」「家庭」の問題とすることの愚かさ

不登校を「本人」「家庭」の問題とすることの愚かさ

改善すべき原因は学校にある

「内海さんは、不登校の原因は何だと思いますか?」とたまに聞かれます。質問者の意図を汲んで「学校が第一の原因です。」と答えます。

そうすると「でも、不登校になる子とならない子がいますよね?それでも学校に原因がありますか?」という反論がきたりします。

もちろん、家庭の状況やその子のその時の内面のありよう、友人関係、あるいは、身体的な強さなどでも違ってくるので、その子に

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不登校の子が回復するために親がやるべきこと・避けるべきこと

不登校の子が回復するために親がやるべきこと・避けるべきこと



NPO法人schootでは、活動を始めてこれまで約3年に渡って「親の会・勉強会」を開催してきました。

不登校の子どもの気持ちや、家庭での正しい支援ってどういうもの?

そんなことを保護者もスタッフも一緒に学んでいく場になっています。

その親の会や勉強会で、経験者の方が語られることであったり、またこちらが紹介する書籍について、これまで何度も「もっと早くこうした情報を知りたかったです」という声

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不登校だったH君が「学校、楽しい」となるまでに学校はどんな支援をしたのか

不登校だったH君が「学校、楽しい」となるまでに学校はどんな支援をしたのか

今回は経験者トークの第4弾。(本編ラジオは一番下に張り付けています)

スクートを始める前から個人的に勉強をみていて、ぜひともゲストに出てもらいたかったHくんに話を聞きました。

ある日H君が「学校が楽しい」と言い始めた

Hくんは小学校高学年から学校に行きづらくなり、中学に入ってからも基本別室登校だったのですが、中3年になったある日のことです。いつものようにゲーム、もとい勉強の合間に、どういい話

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不登校問題が家庭や個人の責任として切断されていく

不登校問題が家庭や個人の責任として切断されていく

ここ数年で「不登校」に関する情報はかなり増えたように思う。NOTEでも「不登校」というキーワードで検索すれば、多くの記事に出会うことができる。しかも、家庭での子どもとのかかわり方や、経験者の自立までの体験談など、そうした記事のほとんどが、実際に不登校の子どもと保護者を支援する側として「なるほど!」と勉強になるものばかりだ。

ただ、一方で、社会的にどのような対策を行えば、より広く、子どもたちの学習

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経験者トーク(スクートラジオまとめ)

経験者トーク(スクートラジオまとめ)

過去に放送した「スクートラジオ」より、経験者/当事者にゲストに来てもらって、自分の不登校経験(当時の気持ち、先生や保護者に感じていたこと)などを語ってもらった回のまとめです。

学校に行っていない時、子どもたちはどんな気持ちなのか。その時、親や先生にどういうことを感じていたのか。どういう対応が嫌で、どういう対応がうれしかったのか。そうしたことを話してくれています。

経験者に聞くvol.1

ゲス

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学校の先生は、高級なファミレスの調理スタッフである。(随筆なやつ)

学校の先生は、高級なファミレスの調理スタッフである。(随筆なやつ)

大衆向けの比較的高級なレストランがある。僕が住む町にはないが、きっと都会にはあるだろう。調理スタッフになるには2年以上その経験があるとか、調理師免許が必須とか、そういうところがね。イタリアンとかね。

大量のメニューをある程度のクオリティをもって提供することができるのが強みだが、迅速に提供する必要があるので調理済みのものが用意され、温めるだけのものがあったり、規格化されたパート、簡素化されているパ

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「親の会」には経験知を共有知へと変換する役割もある

子どもが学校を休みがちになったとき、多くの保護者さんが苦痛に感じるものとして「毎朝の学校への欠席連絡」があります。

わが子が、行けるのか、行けないのか、朝になってみなくてはわからない、という見通しのなさ。やはりいけないか、という落胆。朝の忙しい時間帯という焦り。学校から自分が親としてどう思われているだろうか、という不安。子どもに何をしてあげればいいのかわからない、という無力感。つい子どもに不機嫌

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教育委員会が運営する子どもの居場所:小・中校生サポートルームconneの取り組み(大村市)

2021年9月におおむらケーブルテレビで放送された番組「いまなび~多様な学びの今~」第1回目の放送です。

前半は不登校について基本的な知識の紹介。
後半は、2021年度から本格運用を開始した大村市小・中学生サポートルームconne(コンネ)を取材し、必ずしも学校へ戻ることを前提とせず、子どもたちの社会的な自立を目指して運営されているconneの取り組みを紹介します。

 令和2年度の不登校児童生
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学校ができる不登校予防策②中学校編

学校ができる不登校予防策②中学校編

次に中学生の休み始めるきっかけを見ていきましょう。(小学校編はこちら)

割合として最も高いのは「身体の不調」(32.6%)ですが、それについては別の機会に述べることにします。今回、僕が注目したいのは「勉強がわからない(授業がおもしろくなかった、成績がよくなかった、テストの点がよくなかったなど)」という回答の割合(27.6%)の高さ(③部分)です。

これは小学校も低くはありませんでしたが、中学校

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学校ができる不登校予防策①小学校編

学校ができる不登校予防策①小学校編

「不登校に関する調査研究協力者会議」が2021年10月6日にオンラインで開催されました。文科省のHPから、その際に配布された資料がダウンロードできます。ここでは、その配布資料の一つ「令和2年度不登校児童生徒の実態調査(概要)」のデータを元に、学校ができる「不登校の予防策」と「復帰へ向けての環境づくり」について考えていきたいと思います。

*使用する画像はすべて上記の実態調査の資料からのものです。(

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学習機会剥奪児童生徒60万人!?

学習機会剥奪児童生徒60万人!?

(今回は、少し数字を使ってアクロバティックな推論を行います。)

文部科学省定義による不登校児童生徒数最新の文部科学省の調査によると2018年度の不登校小中学生の総数は

16万4528人

ー小学生:44,841人・中学生:119,687人ー

です。

文部科学省は不登校を「何らかの 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、 登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年

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