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連続note小説「MIA」

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連載小説:MIA(Memories in Australia) 【*平日の正午ごろに連載を更新します】  22歳の青年・斉藤晶馬は、現実から逃避するように単身オーストラリアへ渡っ…
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#長編小説

連続小説MIA | Memories in Australia.

 物語の舞台は2007年のオーストラリア。22歳の晶馬は、どこへ行き、なにを感じたのか?常に不安定な若者だった僕。今となっては、おぼろげな記憶。改めて掘り起こす記憶の断片。異国での十分な資金もない生活、日銭を稼ぎ続けることで糊口を凌いだ日々。それぞれのエピソードが繋がったとき、どんな物語になるのだろう。ぜひご一緒に。(※この物語は実話に基づいたフィクションです) Where did Shoma go and what did he feel when I was 22 ye

【完】連続小説MIA (95) | Chapter Ⅴ

フレデリックのことを話すミン爺さんを見ながら、僕は僕の父親のことを思い出した。父は僕が外国に行くことをすごく喜んだ。日本を発つ前、まるで自分が旅へ行くかのようにうれしそうにしていた。父親になるということはどういうことか、僕は知らない。ひとり息子を想う親の気持ちを、この耳で直接聞いたことはない。放任主義なのだと信じ込んでいたが、本当は息子との距離感に困っていたのかもしれない。家に帰ると、僕の父親は、いつも何かしらの本を読んでいた。父のシングルソファの後ろには、たくさんの本が平積