エンドコンテンツ

昨日の決意が功を奏し、アラームをかけていた7時半よりも早くに目覚めた。
旅行が始まる事に気がせき立てられているのかもしれない。

さすがに何の予定もないのに早起きしようと思えるほど勤勉ではないので、一昨日マツコの知らない世界で見た喫茶店に開店凸しようという魂胆だった。
マスターがあんこ挟んだトーストにこれでもかとバターをぬるやつが割と近所で、行こうとは思ったものの報道直後なんて混んでそうなので、開店凸、というわけである。

まだ雪ではない雨の中、傘を閉じて別にパクられても良いので傘袋は使わず傘立てに放って店内に入ると、既におひとりさまの女性客が2人いた。やはり放送なのかね。人のこと言えないけど。
濃いめのコーヒーとあんバター爆弾はかなり良い組み合わせで、大きめのクラシックのbgmとか店内のステンドグラスとかどこをとっても具合が良く、気持ちの良い時間を過ごせた。

自室に戻る帰りのエレベーターで、ここに越して初めて、縦にうつろう景色の中に人を見かけた。俺以外誰も住んでないかと思ってたな。

始業の時刻がきちゃう前から雑務片付けられるのも中々気分がよかったな。たまにやるからなんだろうけど。

ところで、今晩にはもう出かけるというのに、まだ済んでない準備がいっぱいあった。
まず手袋。昨日買い忘れて素手でいいか!と思ったけど喫茶店への往復で絶対に必要だと痛感した。
次に靴。普段なら何も考えずスニーカーで行くんだけど、今回は車で移動すべき道をかなり徒歩で移動する予定なのでランシューを履いていくつもりだった。
が、この雪予報。ちょっとした登山もあるのに流石に心もとないので、今後険しい道を旅程に含める時用にゴツい靴を買っとくか、と思っていた。
あとはスイッチのケース。今まではパソコン入れてたケースに周辺機器ごとぶち込んで運んでいたが、今回は当然荷物を減らしたいので本体だけ運べるのが欲しく、ドンキで見かけてはいたものの純正でないものを買うのに気が引けて買っていなかった。
あと、昨日の病院でもらった処方箋。睡眠剤なので寝られない場合は旅行の早寝にはもってこいと思い、持って行っておきたい。

なので、月曜朝の業務まであらかた片付けたあと、ダッシュで買いに行った。
手袋はスキー用品店の店頭セールに、薄くてスマホ反応する、昨日の欲望に添いきったこれしかないやつがあったので購入。

なによりも靴に時間がかかった。
登山用のローカットのやつなのかトレッキング用なのかトレイルランニングなのかランニングなのかゴツめのスニーカーでいいのか、何の知識もないし、話を聞いても店や店員によって言うことがまちまちで、かつ欲しいと思うような色やサイズを出してもらえることもなく、でけっこう困った。
まあそもそも、用途が限定的でなく、風雨来記4ででてくる場所に行きたくて、といった客のための靴なんて売ってないから起きてる事だろうけど。

買わなくてもいいか…?と思いつつ最後スポーツ用品店行ったらここの人が手際よく合うサイズ探してくれて、その上中敷の型までとってもらってしまった。
俺はいつか足の測定をした時にハイアーチ(扁平足の逆)だと言われたことがあり、電車で長く立つと足がめちゃくちゃ痛くなる事を、その人の話を聞いて思い出した。忘れられるくらいには慣れちゃってたので。
で、測定したら極度のハイアーチだった。まずサイズが30ある時点でかなり稀だと言われていたのに、高さでも稀だとはね。
びっくりするくらいすぐにフィットした中敷きが完成して、履いてみたらめちゃくちゃ気持ちよかったので買ってしまった。
この気持ちよさで歩く体験が1時間できますよ、みたいなセグウェイの売られ方でも買ってたと思う。これ永久の体感できるの良すぎる。

こういったごたごたに加えて、服準備して皿洗えないじゃん!と思う時間があって、カメラ忘れかけて、スイッチどうしよ…と思っていて、と過ごしてたら乗りたい新幹線まで1時間切ろうとしていた。

急いで通りまで出て、初めてgoでタクシー呼んだらクソでかいエルグランドのタクシー来て何事かと思った。2列目、個別の座席のやつだったし。ハイヤーと呼ぶやつだろこれ
…で、東京駅の目の前のヤマダ電機までワープして、HORIのちゃんとしたスイッチのケース買った。

これでやっと必要だと思っていたものは揃った。
傘さすのもかったるくて小走りで八重洲の地下に潜り込んで、急いで切符買って改札入った。

…と思ったら、全車指定なのに自由席買ってた事に気づいて、ダッシュでみどりの窓口に戻った。

絶望的な人数が並んでいて、1時間遅らせないとか…?と思ったが、恐らく手練れのベテラン社員さんたちが勢揃いの窓口で、あれよあれよと俺の前の列がはけて行った。

しかし自分のミス、結構時間かかるやつだったりするのでは…と思ったけど、担当の人は漫画みたいなスピードでパネルをペンで弾いていき、気づいたら差額払って切符が手元にあった。マジで百烈拳だったなあれ、本当にありがとうございました…

ご飯物色する暇すらできたので、ホームの端から端まで見たけど特に気にいるものがなく、惰性でいくらとネギトロのおにぎり、ビール(ヱビス)、ジャガビー、お茶買ってスイッチのケース入れてる袋に一緒に入れて乗り込んだ。

初めてのE7系だったけど、そんなにどこがどうって事もなかったな、洗面台は綺麗だったけど。
空いてる中で窓側じゃないと楽しみ切れないね

食事に、2、3週間ぶりのビールに、と一通り満喫したあと、スイッチのケース開封して、残りの時間は日記を先に書き進めていた。

夜なので車窓もクソもないけれど、高崎を通過する時の罪深さは初めて感じるものだったな。
縁のない土地の中ではダントツで好きだし訪れているから、そこを東海道新幹線乗っている時の掛川とかみたいにケロっとぶっ飛ばしていくカルマは凄まじかった。

で、長野で車内の確認(車両点検なのか対人トラブルかは分からなかった)で15分ほど遅れて、富山には10分ほどの遅れで着いた。

富山県に足を踏みいれたことはあったけど、富山市にまでは初めて来た。
金沢ならもっと豪勢なのかもだけど、新しくできている割には途中駅然としている印象の強い駅だった。
20時台なのに人気が少なくて駅前は暗かった。
綺麗ではあるんだけど、活気が…

富山ブラック食べたかったのでちょっと探したけど早めに閉めちゃってるところも多く、見つけたのは駅真正面向かいの店だった。
2階から交差点挟んで富山駅が見えるので、それが面白くてずっと見ながら食べていた。ライトレールのイメージだったけどけっこうそれ以上にバスの往来も多いんだな〜
富山ブラック自体は、雪国のわかりやすい味!という印象だった。一つ間違えればサービスエリアのラーメンなんだけど、それでいてちゃんと美味しくて良かった。スープ割りの文化あるの知らなかったな。

おにぎり食べてもいたからゆっくり食べ進めて、Mリーグの動向も追いつつ店を出た。

絶妙に銭湯の営業時間に間に合うか微妙だったので、今日二度目のタクシーで銭湯まで向かった。
以前名古屋で同じ事をした際、目的地の銭湯を告げたら「あんなとこ行かないでこっち行ったほうがいいよ!」とデカいスーパー銭湯に連れられた事がある。

俺はどちらかというと汚かろうが地元っぽい銭湯が好きだけど、タクシーの運ちゃんがいう通りにするのもそれはそれでいいなと思ったので、今回も試してみる事にしたという理由もある。

結果、「それ何町でしたっけ?」との事で、俺がGoogleマップ見ながら案内した。
案内したといっても通り沿いで、通り沿いなのに知られていない銭湯とは…?と思った。

想定の範囲内でかなり古い銭湯だった。
脱衣所から男女吹き抜けが共有な、ノーマルな銭湯。
背もたれからアームが突き出ただけのマッサージチェアやジャンプ、マガジンが無造作に置いてあって、そのどれもがその場に馴染んでいた。

下駄箱が小さく俺の靴はデカいので、1足ずつ入れて鍵2つ持ちながら、声の小さいおばあさんに入湯料渡して、入浴。お湯がバカに熱かったけど隣の人が平気そうだったので頑張って入った。

来る時暗がりに看板があったのだが、この銭湯には「世界初のカルストーンサウナ」というものがあるらしく、せっかくなので入った。

中に筆文字の看板で「乾気式につき体の水滴は必ず拭きとってご利用の事…」と書いてあり、めちゃくちゃ初見殺しをくらった。

いそいそとサウナを出て言われた通り拭きとって再度入った。

普段のサウナと違う点といえばやや体感温度が低いくらいだったけど、なんといってもこの看板がおもしろかった。

「驚異的不可思議な世界初カルストーン…」から始まり、「特に日本人の過剰塩分が減少となり健康に良いと多くの医師が言っておりますので自由に使用してください 店主」と書かれていた。

この絶妙に読みづらそうで読み切れる、パンチラインのような文が趣深くて、これは必ず原文ママで日記に書こうと思い、その発汗作用で汗をダラダラ流しながら繰り返し音読する事で記憶した。

壁にはトトロでサツキが使ってた電話みたいなハコがあって、そのスピーカーからずっと演歌が流れていた。

風呂上がって扇風機に当たりながら牛乳飲んで、さあ帰ろうという時、おばあさんが「タオルはこれ違うかな?」と忘れて物に声をかけてくれた。
助かったし初めておばあさんと会話っぽい会話ができたのでかなり嬉しく、重々お礼を言いつつ銭湯を出た。

ホテルは宴会場とか就業案内所とかが併設になっている、地方にしかないタイプの建物で、宴会場とゴールドジムに挟まれた4階だけが客室部分という変な場所だった。
さっき食べたラーメンのしょっぱさがまだ口に残っていて、解消すべく自販機コーナーまで向かったら、同じ宿泊客の女性2人組も製氷機に用があるらしくちょうど部屋を出てきたところで、3人パーティみたいになって廊下をツカツカ歩いて行った。
製氷機の荒ぶり方が凄まじく、どんなにおばさんが押さえてもコップの縁ではじけて氷が散らばるのでおばさんが落ちた氷と流しとを行ったり来たりしていた。
よくよく思い出すとめちゃくちゃすっぴんではだけていたし、かなり典型的なエロシチュエーションだったかも。

部屋に戻ってコーラ飲みつつ少しゆっくりしていたが、寝なきゃなので明日の準備して風呂に入った。
銭湯は気持ちいいけど石鹸の類はないところだったのもあり、部屋の風呂で洗うことにして髪とか濡らさずにいたので。

風呂上がってしばらくは日記かいていたけど、書ききったらもうホテル出る時刻になってそうな勢いだったので一旦閉じて寝た。

さて、信じられない事にここからが本題である。

今回の旅行について何となく数日前から「この旅が終わったら、その時が本当に風雨来記4というゲームの、体験の終わりだな…」という風に考えていた。

ゲームってエンドコンテンツとか、それがなくてもRTAとかでいつまでも楽しめるものではあるけど、記憶を消してもう一度、というように、その体験はどこかで終わるものだと思う。

俺はまだ未訪問の場所もシナリオもあるけれど、ヒロインとの旅、という点ではほぼ終えていて、この旅をしてしまったら、もう本当にこの体験が終わってしまうな…という寂しさがある。

実際に訪れてみた!という事より先の体験はもうきっとなくて、風雨来記4が、ついに終わってしまう、というか終わらせに行っている、けれど行かないとどうにも気持ちの落ち着かない、ノーマルエンドの気持ちと似たような…
そういうもの寂しさ、が今回の旅行にはずっとあると思います。
どんな気持ちになれるのか、楽しみだ。

これを書いてるのはもう翌日の7時。
そろそろ、種蔵の最寄りに着く……。

皮算用:済